孫崎享のつぶやき

随想⑭ ショパン、「音楽とは何か」

2020/09/14 05:59 投稿

コメント:18

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「音楽とは何か」。ショパンはこれに答えている。「ショパンが死亡する前の1949年

5月、結核の末期に入っていたショパンは、すでに作曲もできなくなり、階段も一人では降りなくなるほど衰弱していました(中略)。彼はピアノとは、そして音楽とは何なのかということを、はっきり言葉にしておきたいと考えたのです」「“音楽とはなにか”という本質についてまとめようとしています。

音によって表現される芸術は、音楽と呼ばれる。音によって思想を表現する芸術。音を操作する術。音によって表現された思想。音による我々の知覚の表現。音による思想の表現。音による我々の感情の表出。人間の定かならぬ(模糊たる)言葉、それが音である。定かならぬ言葉、(つまり)音楽。言葉は音から生じたー言葉以前の音。言葉、(つまり)ある種の音の変容。話すのに言葉を用いるように、音楽を奏でるには音を用いるのである」

以上は、崔善愛著『ショパン』に引用

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コメント

>>5
なるほど、確かにそうですね。

No.17 49ヶ月前

音楽を祈りとしてとらえたコメントがないので一言。

祭事の祈りが、キリスト経典・イスラム経典・仏教経典の言葉を何度も何度も繰り返し唱えているうちに、だんだん歌のようになって聞こえてくる。

キリスト教の場合、ローマ・カトリック教会に期限を求められる。具体的に、バッハの「主に向かって新しき歌を歌え」とかモーツァルトの「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」などの宗教音楽がある。
仏教経典を多くの僧が唱える光景は、荘厳でなんとも言えない気持ちになる。
イスラム経典の読誦風景も心洗われ、すがすがしい気持ちになる。

音楽は、人間が生きていくときなくてはならないものではないか。ショパンのピアノ曲によって、くじけそうな時励まされ気持ちを新たにして生きてこられたのでしょう。

No.18 49ヶ月前

今回の孫崎さんの文章からは、崔善愛という人は、「自分の音楽と自分の政治活動をどう説明するか」というテーマを一生懸命考えて、優等生的な結論を得たという感じを受ける。どこかで聞いた、誰かに影響を受けてる、ありふれてる結論だけど、まあ無難だよね、という感想だ。

崔善愛の音楽観を広く「自分の個性や思想の発揮」と考えれば、そういう音楽観が根付いてくるのは、西欧でもルネサンスのころから前史がはじまり、ようやくベートーベンとかショパンのころから確立するわけで、つまりは近代というものと結びついている。孫崎さんがあげているのも、ほぼ現代の音楽家たちである。

つまり、崔善愛の音楽観は近代と結びついている。そしてその同じ近代が主権国家で成り立ち、国籍の区別を厳密におこなうことで安定していて、そのなかで音楽活動をして収益もあげているわけである。まあ、崔善愛という人がそこまでは考えが至らなくてもしかたないとはおもう。

以上が今回言いたいことのメインだが、付け加えると、

近代以前は、民衆の祭りなどで素朴なものはあっただろうが、洗練されたものは神仏への賛美や祈りだとか王侯貴族の行事や慰安と結びついていた。そこでは典型的には音楽家は職人であり、「自分の個性や思想の発揮」などは考えなかっただろう。

ここで重要なのは、「自分の個性や思想の発揮」という音楽観があるから音楽も立派だ、とはならないことだ。音楽家個人やそのファンがそう感じるのはもちろん自由だが、客観的に見て、近代以降の「自分の個性や思想の発揮」の結果、ダメな音楽や、音楽に限らずダメな芸術一般の死屍累々はやまほどあるのじゃないかとおもう。

近代以前の音楽職人の世界では、そもそもある程度の才能があるとおもわれるものが選抜され、お手本にしたがって修行をし、まれに天才が出るが、多くは平凡で、平凡なりにまあまあの成果をあげる。少なくとも死屍累々にはならない。平凡がまあまあの成果をあげうるのは、お手本があったり型が決まったりしているからで、「自分の個性や思想の発揮」とは逆のベクトルだ。

現代でも、たとえばモランボン楽団というのがあって、DVDしかみたことはないが、あれはあれで質が高く、ある種の感動もあり、もっと知りたいという印象を個人的には受ける。しかし、もちろん想像だが、モランボン楽団のひとたちは、崔善愛のような、つまり「自分の個性や思想の発揮」という方向の音楽観は持っていないはずだ。

No.19 49ヶ月前
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