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【平直行「東方武術見聞録」】その27(最終回) 武術と武道と格闘技に関する私的思い。(前半)

2014/12/16 18:15 投稿

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その27(最終回) 武術と武道と格闘技に関する私的思い。(前半)

武術と武道は実際には大きく異なるものだ。同じ源流を持ちながらも全く正反対の性質を持っていると言っても差し支えない。そして格闘技もまた違った本質を持つように思う。全く違った3つを同じだと勘違いして取り組むことは更なる大きな勘違いを生み出す可能性が高いのだ。


格闘技のプロをやって空手と武道をやり、武術もやっている。僕の人生に大きな影響を与えたグレイシー柔術もその中に入れると……僕は色々なことを思うのだ。世の中には何となく同じように見えるものがあり、実は全く別の内面を持っている。世の中の多くはそうなっている。


例えば、醤油とソースが同じ物と思っている人は日本にはおそらくほぼいないだろう。だが、醤油とソースのどちらも味わったことが無い人からすると、醤油もソースも同じように見えたりする。とんかつソースじゃなくてウスターソースなんていうものもある。外国のウスターソースは醤油と見た目がほとんど変わらないものもある。東南アジアにはナンプラーなんていう大豆ではなく、魚から作った醤油もある。見た目は醤油と同じでも味は全然違う。


そういえば、まだ若くてファイトマネーだけで生活できなかった頃にやっていたバイトでこんな悪戯したなぁ。バイトは飲食店だからこんな悪戯をしたりする。コーラ飲まない? そんなふうに言うとみんな喜ぶ。バイトで動き回ると喉が渇くのだ。それでこんな悪戯をする。


飲食店には炭酸水がある。そこに醤油を入れると見た目は完全にコーラなのだ(笑)。飲食店なのでレモンのスライスとか浮かべると、とてつもなく美味しそうなグラスに入ったコーラがあっという間にできあがる。見た目は完全にコーラと同じなのだ。喉の乾いた被害者は一気に醤油味の炭酸水を飲む。ハハハ、醤油の喉越しはとてつもなく不味いのだ。逆にコーラ味の和食もとてつもなく不味い。見た目が同じだからといって同じだと勘違すると、実は困ったことになったりする。


武術と武道と格闘技の違いを知らなくとも、それほど困らないかもしれない。だけど、もっとも知ることで今よりも大きく向上する可能性は高い気がする。武術とは基本的に試合はない。あるのは死合い。これは試合と似ていると勘違いしやすい。試合と同じように決まった時間に決まった場所で行うことではない。ここを勘違いすると武術の本質が見えてこないのだ。


武術の相手とはアスリートでも格闘家でもない。最も警戒すべき強力な相手は暗殺者なのだ。死合いとはどちらかが死ぬということなのだから、普通にやるはずがないのだ。相手に存在どころか気配さえも感じさせずに殺す。ただ一方的に殺すのが、ある意味武術の極意である。だから試合などないのだ。


刀で切り合うのではない。ただ刀で相手に気付かれずに切るのが武術の極意。もちろん暗闇で後ろから切り捨てることだけではない。相手と正面から向き合ったとしても、後ろから仲間が物を投げつけて相手を怯ませ、その隙に切れば良いのだ。同じように隠し武器を巧みに使って相手の意識を他に向けた時にできる隙、その一瞬の間を突いて切り捨てる。間には魔物が潜むというのが古流の口伝なのだ。


ホンの一瞬だけ相手の意識をどこかに向ける。人を切るのには一瞬の間があれば充分。武術とは武器も使うのだ。鍛えぬいた武術家の手は刀と同じ威力を持つ。最もこれも現代の想像する鍛え方ではない。硬い物に手を叩きつけて刀のようにするほど暇ではないのが、本当に武術を使った時代の真実なのだ。


 

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