第4回 復讐はタバコの香り
「社長の座を奪う」
俺の野望の炎は鎮火されつつあった。いつもそうだ。初っ端だけは勢いがあるが、出ばなをくじかれてフェードアウト。それがこれまでの俺の人生だった。
「今回も同じなのか…。このまま転職もかなわず、窓際のデスクでニコニコ動画を視聴しながら定年退職を待つ日々を送るのか…」
絶望の海に片足を突っ込んでいた俺を神は見捨ててなかった。総務経由で、ある厄介の指令が下った。
《指令①会長宅へのタバコ配達》
社長の上にいる会長。まさか大ボスに近づくチャンスがくるとは…俺は喜びを隠せない。会長宅へのブツの輸送は精神的にきつく、総務課の若い連中が根をあげているという噂は聞いたことがあるが、まさかその役が俺に回ってくるとは。俺は自分に優しい神だけは信じる。指定された日時は日曜の正午。休日だ。もちろん手当は出ない。
指定されたブツはマイルドセブン4カートン。お安い御用だ。俺は愛車のブリジストンを日曜の商店街へと走らせた。
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