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第22回 1週間が過ぎて。

サンフランシスコに来て1週間が過ぎた。1日に2回練習をする。午前中はカーリーと僕とデイブの3人。そこに、時間が空いている人がいればわざわざ僕のために来てくれた。

午前中は僕のためにカーリーがつきっきりで、テクニックを教えてくれる。それを受けるためにデイブは毎日仕事を休んで来てくれた。そして仕事を休める人も来てくれた。あの時間は一体何だったんだろう? それまで会ったことのない日本人もやって来た。カーリーがつきっきりで教えてくれた空間。その時間の色は日常には無い不思議な色だったな、って思い出したりする。

僕は日常と違った景色だけじゃなく、全ての色に違う時間と空間があることを知っている。もっともみんなは「カーリーがこんなふうに教えることは初めてだから、それを傍で見てるだけでも物凄い勉強になる。だから来られる日には絶対に来るんだ。僕たちも凄く良い勉強になるからね」ということで集まってくれていたようだ。スパーリングとかを一緒にすれば、すぐに仲良くなれる。だから僕は最初の一週間で友達がいっぱい出来た。

当時のUFCは素手の何でも有りで、メジャーとなった現在のUFCに比べれば認知度は低い。でも衝撃度や注目度で言えば、当時は今よりもある部分大きかったりもした。見慣れない総合格闘技、まだ黎明期だった総合格闘技は人々の関心を集め、しかも素手の何でも有りなのだから一般には届かないだけで、格闘技をやっている人間には物凄く興味のある新しい何かだったのだ。

いきなり日本から来て柔術を学ぶ僕は、試合で勝つためにサンフランシスコまで来たのだ。そんな無鉄砲な僕は、カーリーの道場でもみんなの注目を集めた。さらにみんなの前でカーリーがこう言った。「ここにいるタイラは日本からやって来た。バーリ・トゥードで勝つためにグレイシー柔術を学びにここへ来た」と。そりゃ、注目を集めるに決まってる。お陰で僕はスパーリングでたいそうな歓迎を受けた。