[本号の目次]
1.科学研究助成金基盤研究(B)に採択される
2.小型HDビデオカメラ撮影システムの開発
3.2006年10月、小笠原深海ビデオカメラ調査
4.2006年12月、二度目の調査
科学研究助成金基盤研究(B)に採択される
2005年にNHKの依頼で後藤アクアティックスの五島さんが心血を注いで開発した深海HDビデオカメラ撮影システムは、素晴らしい映像を撮ることが出来るものの、総重量200㎏を超えて特殊なウインチ等を装備する調査船が不可欠となった。そのため浦環教授の研究航海であるJAMSTECの調査船「なつしま」を利用させてもらったが、これでは調査時期や海域など制約があり、独自の機動性が大きく削がれることになった。
2005年に科学研究助成金の基盤研究(B)に「中深層性大型頭足類の分類ならびに生態、潜在生物量に関する基礎的研究」のタイトルで申請していた3年計画のプロジェクトが採択され、申請額全額とはいかないが2006年から研究助成金を受け取ることが決まった。この研究費を基に、2005年にソニーから市販された「いっきに手のひらサイズ」の小型HDビデオカメラ(HDR-HC3)を組み込んだ深海撮影システムを製作することを考えた。撮影システムを小型化すれば、磯部さんの第八興勇丸で自分なりの調査が出来る。
ソニーから市販されたHD小型ビデオカメラ(カタログより抜粋)
小型HDビデオカメラ撮影システムの開発
ソニーから市販されたHD小型ビデオカメラ(カタログより抜粋)
小型HDビデオカメラ撮影システムの開発
NHKの小山ディレクターも同じことを画策しており相談の上、この小型HDビデオカメラ撮影システムの開発も後藤アクアティックスにお願いすることになった。私の方から2台、NHKから2台、計4台の撮影システムの製作が発注された。
このシステムは2005年のNHK大型モデルと同様の仕組みで、円筒形のアルミ材をくりぬいた躯体にビデオカメラとタイマー・制御基板を組み入れた本体と照明機器を組み合わせたものからなり、水深1200mまでの耐圧構造である。カメラには広角レンズを付け、筒の前は特注のガラスドームを嵌めた。躯体の後ろ蓋にライトの電源コネクターとタイマー作動スイッチが配されている。照明は大きな電力を必要とするハロゲンライトは使用せず、そのころ開発が飛躍的に進んだLEDライトを使うことにした。ただし、当時のLEDライトは一つでは光量が乏しく、五島さんはLEDを100個ほどアクリルに埋め込んだ丸型の照明装置を開発してくれた。それにより消費電力を抑えることが可能となり、システム全体の重量が飛躍的に削減された。この丸型のLEDライトを2灯、ステーを介してビデオカメラを組み込んだ円筒の左右に付けた。躯体は長さ約39㎝、最大径23㎝ほどで空中重量がLED照明具を合わせて約20㎏、水中で18㎏となった。一人でもなんとか持ち運べる重量である。後藤アクアティックスの後藤道夫社長、五島正晳主任、五島三徳技師が総力を挙げて取り組み、半年余という短期間で2006年10月に待望の撮影システムが完成した。
後藤アクアティックスで開発された小型HDビデオカメラ撮影システム・斜面
後藤アクアティックスで開発された小型HDビデオカメラ撮影システム・上面
2006年10月、小笠原深海ビデオカメラ調査
五島さんから操作方法の詳しいレクチャーを受けた後、2台の新しい撮影システムと古い動画撮影システム2台を携えて、ただちに小笠原父島に赴いた。磯部さんも待ちかねていたようで、新人の乗子の岩本さんに指示をあたえながら撮影システムを吊るすロープやシステムを繋ぐハーネス、カメラの下に付ける仕掛けなどを用意してくれた。そして10月19日から21日の三日間、旗流し縦延縄の漁法で水深800mと1000mに新型撮影システム、600mに2台の旧型システムを入れて、撮影を行った。
初めてのトライアルということで、タイマーの設定やカメラの操作などに手違いが多く、また仕掛けの吊り方や長さ、誘引物質の選び方など試行錯誤も多く、とても研究に耐えうるような映像は得られなかったが、アカイカが画面を横切る遊泳行動や餌のスルメイカを抱えて引っ張る様子などが不鮮明ながらも捉えられた。まずはLEDライトの光量の不足が問題となったが、このシステムで繰り返し撮影を行っていけば、ダイオウイカを始めとする中深層性大型イカ類の姿が捉えられるという確かな感触を得ることが出来た。
仕掛けに抱き付くアカイカ
カメラに襲いかかるヒロビレイカの腕
2006年12月、二度目の調査
後藤アクアティックスで開発された小型HDビデオカメラ撮影システム・上面
2006年10月、小笠原深海ビデオカメラ調査
五島さんから操作方法の詳しいレクチャーを受けた後、2台の新しい撮影システムと古い動画撮影システム2台を携えて、ただちに小笠原父島に赴いた。磯部さんも待ちかねていたようで、新人の乗子の岩本さんに指示をあたえながら撮影システムを吊るすロープやシステムを繋ぐハーネス、カメラの下に付ける仕掛けなどを用意してくれた。そして10月19日から21日の三日間、旗流し縦延縄の漁法で水深800mと1000mに新型撮影システム、600mに2台の旧型システムを入れて、撮影を行った。
初めてのトライアルということで、タイマーの設定やカメラの操作などに手違いが多く、また仕掛けの吊り方や長さ、誘引物質の選び方など試行錯誤も多く、とても研究に耐えうるような映像は得られなかったが、アカイカが画面を横切る遊泳行動や餌のスルメイカを抱えて引っ張る様子などが不鮮明ながらも捉えられた。まずはLEDライトの光量の不足が問題となったが、このシステムで繰り返し撮影を行っていけば、ダイオウイカを始めとする中深層性大型イカ類の姿が捉えられるという確かな感触を得ることが出来た。
仕掛けに抱き付くアカイカ
カメラに襲いかかるヒロビレイカの腕
2006年12月、二度目の調査
10月調査を終えて研究室に戻ったが、もう少し続ければなにか新しい映像が撮影できるかもしれないと居ても立っても居られず、科学研究助成金が少し残っていることいいことに、再度12月に小笠原に赴き科博の二台の新型システムに加えて、NHKの二台を借用して、計4台の新小型深海HDカメラによる調査を敢行した。磯部さんと相談して、仕掛けを付ける場所を変えて、吊り下げるテグスの長さを少し短くすることにした。
朝、調査海域に向かう第八興勇丸と磯部船頭
積み込んだ4台の新小型深海HDビデオカメラ
積み込んだ4台の新小型深海HDビデオカメラ
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