石原莞爾と東條英機:その56(1,737字)
東條英機は久留米で電報を受け取った。そこに永田鉄山の訃報が載っていた。ただちに東京へのキップを取り、鉄道で一昼夜をかけて上京した。そうして永田邸を訪れ、その亡骸と対面した。
東條英機にとって永田鉄山とは何だったのか?
それは「全て」といっていい。永田鉄山こそ東條英機の生きる理由のようなものだった。師匠であり兄貴であり友人であった。私淑するメンターで、憧れのアイドルのような存在でもあった。実父の英教亡き後、心の父のような存在でもあった。
その永田鉄山が殺されたのだ。ここで東條英機も死んだといっていいだろう。東條英機はここで死んだのだ。彼は、永田夫人から殺されていたときに着ていた血染めの軍服を受け取った。そうして自宅に持ち帰ると、深夜家族が寝静まった後にそれに着替え、一人涙に暮れていたという。血染めで何カ所も指された穴があるその軍服を着て、亡き永田を思いながら、その胸に復讐と、それ以上の何かを
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