石原莞爾は満州の関東軍に転属になって以来、満州国の自主独立を目指して、あるいは始まってしまった日中戦争を早期に終わらせようと、あれこれ働きかけていた。

しかしそれを東條英機がことごとく阻止した。東條の立場(意見)は石原と正反対だった。満州は日本が支配しなければならないし、中国との戦争は継続(拡大)しなければならない。それは、陸軍の大半の意見と同じでもあった。

おかげで石原の立場はどんどんと失われていった。しかし石原は基本的には気にしていなかった。東條との仲は傍目にもひどいものとなっていったが、表立って反発しているのはむしろ石原のように見えた。なにしろ聞こえがよしに、東條のことを「東條上等兵」などと言ったりしていたからだ。

陸軍はエリート主義なので、必ずしも年功序列というわけではない。まず重要なのは陸大の卒業時の席次で、その点は石原の方が東條よりも上だった。だから、東條も石原から反発されても