マンガのはじまり:その27(1,660字)
近藤日出造は、知れば知るほど複雑な人物である。「多面性」というより、多面的な「二面性」があって、なかなかとらえきれない。頑固に見えて柔軟である。頭が良いことは確かだが、ふとしたところで抜けている。逞しいようで存外にもろい。
近藤と横山、それに杉浦を中心とした新漫画派集団は、結成後に「ナンセンス漫画」というジャンルを確立した。そうして、それまでの北澤楽天一派や岡本一平らの漫画を駆逐し、大きな人気を獲得していった。
それは、ちょうど大正から昭和への「時代の移り変わり」でもあった。大正時代は経済的に豊かで、人々は社会性や物語性のある娯楽色の強い漫画を求めた。ところが、昭和に入って世の中が混沌とすると、娯楽性よりもっと刺激の強い「ナンセンス」を求めるようになったのだ。
ナンセンスは、第二次大戦直後にも流行する。このときは、ほとんどの人がひもじい思いをするというどん底の経済状況を背景にしてのことだっ
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