<ジャパンC:追い切り>

 凱旋門賞5着馬が、世界の底力を見せつける。ジャパンC(G1、芝2400メートル、29日=東京)に出走するイラプト(牡3、仏)は25日、東京競馬場の芝コースを疾走。これまでの欧州馬と違い、日本の硬い馬場を求めての参戦だけに、陣営の感触もいい。

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イラプトは力強いフットワークで追い切られた(撮影・酒井清司)

 凱旋門賞組はいらない。そんなレッテルが貼られて久しいが、その重い扉を3歳馬イラプトが開く。

 過去10年、直行馬の成績は【0 0 0 7】(日本馬を除く)。勝利は02年のファルブラヴまでさかのぼる。馬場の違いに戸惑い、高速決着に沈んだ欧州王者は数知れない。だが、今年は違う。日本のハードな馬場を求めて参戦してきた。

 水曜朝から東京競馬場に姿を見せたF・グラファール師は「ヨーロッパの馬に日本の馬場は硬いと言われるので、それを確認するために来た」と、自ら芝コースを歩いた。芝の長さをチェック。直接手で触れるなどしてコンディションを探り「フランスとは草が違うが、この馬は硬い馬場が合うので、良かった」と好感触を得た。

 その言葉通り、芝で追い切られたイラプトは、適性を示す走りで7ハロン99秒7、上がり39秒7-13秒4(馬なり)をマーク。最後まで低い姿勢で、雨にぬれた芝を勢いよくはね上げた。「気分よく動いていたし、いい走りをしてくれて満足している。どんな馬場でもうまく加速できるのがいいところ。どちらかといえば左回りが得意かな」。仕上がりは順調だ。

 凱旋門賞5着後は米ブリーダーズCという選択肢もあったが「間隔を空けた方が調整しやすい、という判断でJCに決めた」とレーシングマネジャーのA・クーパー氏。もちろん、パリ大賞勝ちによる褒賞金(1着なら8000万円)も頭にある。「今年の日本馬は弱いと聞くが、そんなことはない。強いのは知っている」と外交辞令で取材を締めたグラファール師。新進気鋭の38歳が、上昇気流に乗った3歳馬であっと言わせる。【水島晴之】