話題のノンフィクション本『沢村忠に真空を飛ばせた男: 昭和のプロモーター・野口修 評伝』の著者・細田昌志氏と、格闘技ライターの高崎計三氏がキックボクシングの光と影の歴史を振り返る対談!(聞き手・ジャン斉藤)
「キックぼんやり層」必読!! 那須川天心vsロッタンはここがヤバかった
――高崎さんとのキックボクシングの歴史を振り返る対談、面白かったです!(対談はこのあと掲載)
細田 ……いや、今日は騙されましたよ!余計なことをたくさんしゃべらされて。本の宣伝にやってきたのに。
――いや、充分に本のプロモーションになったと思いますけど(笑)。それにこの本はメチャクチャ面白かったです。ここ20年近くのプロレス格闘技ノンフィクション本の中ではナンバーワンじゃないですかね。
細田 ありがとうございます!でも……まだ浸透してないですね。プロモーションが足りない。行き届いてない。だって、この本を知らない人もけっこう多いんです。増田(俊也)さんの『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』の爆発的な成功が記憶に新しいだけに、その差を痛感しています。「木村本」は、内容の素晴らしさはもちろん、「力道山」というパワーワード、それに『ゴング格闘技』で連載していたことも大きかったと思うんです。 あの頃(編集長の)松山さんと、著者の増田さんと呑んだことがあって、「ああ、こういう参謀がいるのは大きいなあ」って思っていましたもん。それに当時はまだギリギリ、紙に力がありましたしね。でも、いまはいまでSNSがありますから。だからとにかく、プロモーションをやり続けるしかない。
――『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』はタイトルもショッキングですよね。
細田 なんといっても「殺さなかったのか」ですもんね。
――力道山vs木村政彦のシュートマッチもプロレスファンにとって巨大なミステリーですし。
細田 プロレスって完全なる活字メディアでしょう。都心の大きな書店に行くとプロレス本がずらーっと並んでいるのに、格闘技の本ってほとんどない。朝倉未来と古川(誠一)会長の本ぐらい(笑)。
細田 そうなんですよ。キックボクシング自体は、一応はプロスポーツとしてあるにはあるんだけど。
――たとえば力道山vs木村政彦なんて、プロレスで何か事件があると例として挙げられる。沢村の場合は表向きキックの歴史が見えづらいですけど……この『沢村忠に真空を飛ばせた男: 昭和のプロモーター・野口修 評伝』を読むともの凄くキックボクシングというジャンルに興味を持てますよね。 先ほどの高崎さんとの対談とも繋がってきて。
細田 ホントかなあ。 騙されてるような気がする。というより、こういう取材は珍しいから舞い上がっている気がしないでもない(笑)。
――ボクが思ったのは思想のノイズがない本ですよね。
細田 思想のノイズ?
―― どうしても筆者のプロレス格闘技に対する思想の打ち出しが強すぎて「……そこまで求めてないんだよなぁ」と思うときがあるんですよ。
細田 ああ……そういうのは、自分が読んでて辟易としていたので、意識的に抑えました。それに、どちらかというと、五木ひろしについてこの機会にじっくり書きたかったりして(笑)。
――ガハハハハハハ!
細田 五木さんは後半しか出てこないんですけど、彼の半生にも非常に興味を持ったんですよ。
―― じゃあ、おもいきって五木ひろしをタイトルにすれば……(笑)。
細田 じつはそこは少し考えました。考えたんだけど、 格闘技の話が6割なのに五木さんをタイトルに持って来るのは、あまりに節操がないだろうと(笑)。思いついたのは「なぜ五木ひろしはガッツポーズをするのか」。
――面白いです(笑)。
細田 沢村忠をタイトルにすることに批判してる人もいるんですけどね。「300ページまで沢村が出てこないじゃねーか!?」って。
――そこはもう追いついてないんでしょうね。情報量が圧倒過ぎますから。
細田 そこは野口修という人が影響力を失ってから亡くなったから。だから書けたと思うし、既存の格闘技マスコミがキックの歴史を書こうとすると、「ムエタイをマネて創られた」となる。決して間違ってはないけど、「端折りすぎだろう」と思うんです。だから創始者の野口修の名前は葬られることになった。キックボクシングの歴史を知るには、まずボクシングの歴史から知っておかなきゃいけない。それは動かし難い事実です。例えば、明治維新を語るとなれば、黒船来航を語らないわけにいかないでしょう。それと同じこと。
――ボクシングどころか右翼の歴史まで遡ってますもんね(笑)。というわけで、ここから細田さんが騙されたとおっしゃる高崎さんとの対談になります。
細田 専門誌で取材をしてくれたのがこれで2件目です。1件目はバウトレビューさんで、宮田(充)さんに紹介していただいたんですよ。
細田 まあ人気は壊滅的ですよね。ただ、80年代後半は竹山晴友vs鈴木秀男の竜虎対決で盛り上がって、竹山はその後、元ラジャダムナン王者ラクチャート(・ソーパサドホン)を倒すんですが、それはラクチャートの片八百長だったとかで。そんなマネをされた竹山は悔しくてキックをやめちゃうんですよ。
――竹山さんの師匠は大沢昇さんで、激辛カレーで有名だった大沢食堂の主人ですね。
細田 大沢昇さんからすれば、竹山晴友は極真の後輩でもあって、個人的に面倒を見てたんですね。自分の食堂の上をジムというか練習場にして。竹山はキックでも大活躍したんですが、ラクチャート戦で「バカバカしい」と泣いてやめちゃう。当時はけっこう大事件だったんです。
細田 だから、「沢村忠の試合はフェイクだった」と批判するなら、他も批判しなきゃいけないんじゃないかと思う。沢村忠はもう業界の人間じゃないから批判できる。それってどうなんでしょう。
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コメント
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ガルーダテツ映画「アンチェイン」を、竹村さんでスネイルランプの曲思い出した。
K-1MAX 以前のキック界隈の話と非k-1と非RISEのキック関係の話はもっと読みたい。情報が整理された内容だと嬉しいです。
(ID:11652522)
竹村さん、シングルでORICONウィークリーランキング1位取った辺りの時期、スカパンクシーンやインディーズシーンでKEMURIとPOTSHOTのあれこれや、ハイスタやAIRJAMが巨大化していくのを当事者でアレコレ見て感じてきたのが大きかったりするんじゃないかと推測
(ID:117049654)
竹村さんには選手のときにお世話になりました