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大好評「ゼロワンを作った男」
中村祥之インタビュー第4弾。今回はゼロワン崩壊――橋本真也と冬木弘道・元夫人の不倫劇、中村氏らゼロワン勢との決別、そして突然の死、その裏側で起きた混乱について。イラストレーター・アカツキ@buchosenさんによる昭和プロレスあるある4コマ漫画「味のプロレス」出張版付き!




中村祥之インタビュー
①負けたら即引退試合SP、過激な舞台裏
http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar940189

②橋本真也、新日本プロレス決別の理由
http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar974841

③ファイティングオペラ「ハッスル」とはなんだったのか?
http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1034482






――7月の「巌流島」にミャンマーラウェイ最強の男トゥントゥンミンが参戦しますが、これは中村さんのミャンマー人脈から実現したでそうね。

中村 トゥントゥンミンはミャンマーでは国民的ヒーローで、日本でいえばアントニオ猪木みたいな存在なんですよ。強すぎちゃって向こうでは相手がいなくて、公式記録では1敗しかしてないし、それも判定での負け。田舎の野試合を含めると120戦して2敗。
 
――国民的ヒーローの出場交渉に中村さんが駆りだされたんですね。

中村 日本に来ること自体が彼の選択肢の中にはなかったんです。ファイトマネーを積めば出てくるという人間じゃないし……なんか「巌流島」にうまく使われましたね。

――中村さんにとっては、あまりお金にならない仕事ということですか?

中村 プラスどころか交渉に行くミャンマーまでの旅費すら自腹ですよ(笑)。

――えええええ!? さすが「巌流島」(笑)。

中村 「こういうことなんだよなあ、巌流島に関わることは……」って冷静になれました(笑)。仕方ないので自分の仕事を無理くり作り出すしかなかったです。

――せめて旅費くらいは請求すればいいんじゃないですかね。

中村 「お金がない!」って言い張ってますからね。

――お金がないなら中村さんに依頼すべきではないような……(笑)。

中村 しかも、選手のギャラもミャンマー国内の金額より低いんですよ。

――「ミャンマーラウェイ最強の男」を呼ぶというのに!(笑)。

中村 巌流島は「これしか出せない」というから、まいったなあと。ボクのミャンマーのパートナーが「ナカムラに恥をかかすわけにはいかない」ということで、その差額を出してくれることになったんですけど。

――ミャンマーで恥をさらす「巌流島」(笑)。

中村 まあ、流れで関わってしまったので、仕方ないかなあと。疑うときりがないじゃないですか。

――谷川(貞治)さんや山口(日昇)さんがやってるイベントですもんね。

中村 彼らはあくまでクリエーターですから、主催・運営に関してはズンドコに決まってるわけですよね。昔のPRIDEやK−1も「まあ、いいんじゃない」ってこんな感じで物事を進めていたわけですし。


――あのときはまだ金が唸っていたからなんとかなったんでしょうけど……ファイトマネーはちゃんと払ってほしいですね。

中村 そこはオンキャッシュだって言ってます。初回取り引きですからね。「巌流島」があとから「振り込みで……」って言ってきたから、それは絶対にダメだと。

――あとから言ってきた!(笑)。

中村 当日キャッシュで払ってくれないなら無理だと。ファイターからすればモチベーションが落ちますよ。しかも何千万というギャラならまだしも、こっちだって恥をしのんだ金額ですよ。その差額を埋めるという人を探してまで来日するんですから。

――後日払いだと「振り込んだんですけど、入金されてないですか?」とか言い出しかねないですよねぇ。その場でもらったほうが安全というか。

中村 疑わしいかぎりです(笑)。正直いまの格闘技業界は信頼に値しない。大きいことをやるほうはとくにね。だって赤字になる確率が高いじゃないですか。博打ですよ、あれ。小さいところは赤字も黒字も小さいからなんとかなるんでしょうけど。いまの格闘技界で大きいことをやって回るわけがない。

――じゃあ試合が終わるまで気は抜けないわけですね。

中村 大不安ですよ(笑)。

――会場は有明コロシアムですよね。大丈夫なのかな(笑)。

中村 谷川さん、会場の2階3階は使わないでやりますって宣言してましたけどね。こないだのTDCホールだって4000人くらいの発表をしてましたけど、TDCってそこまで入らないですよ。なんでいまどき、そういう盛った発表をしてるんだろう?って(笑)。

――スポンサー向けなんじゃないですか?

中村 いや、スポンサーの立場からすれば「この人たちはホラ吹きなんじゃないの?」って疑いますよ。だって入らない人数を発表してるんですから。

――あー、たしかに。

中村 TDCは1800席しかないし、ステージをどかしてもMAXで2400席しか敷けない。それなのにそういう発表をしちゃう感覚が格闘技業界の人たちにはまだ残ってるんだなって。それだと、いまのスポンサーさんにはアプローチできないですよね。

――いまの時代は可視化されやすくなってますから、観客動員の発表の仕方が難しいですよね。

中村 「満員」を発表したいならそれだけでいいし。後楽園ホールも盛りすぎてプロレス界が怒られたんですよ。消防法で規定されてる人数以上の発表はやめてください、と。

――だから近年の後楽園大会の観客動員は、以前より抑え気味になってるんですね。

中村 立ち見も333人しか入れちゃいけないって書いてあるから、固定席プラス333人しか書いちゃいけないんですよ。

――昔のマット界はどれだけ盛るかが勝負みたいなところがありましたよね。いまは「超満員!」「完売!」アピールが激しい時代ではありますけど(笑)。

中村 全日本と新日本が敵対していた時代は、その地区で人数をいくつ入れたとか勝負してたというか、まあネタですよね。会場の入り口でカウンターを持たされて800人しか入ってないけど、1200人だと上に報告したら、1400人で発表されて(笑)。

――ハハハハハハハハハハ! 上乗せの上乗せ(笑)。


◉マスコミから「橋本さんと冬木さんの奥さんが手を繋いでる姿を載せていいですか?」って連絡があったんです……


――今回はゼロワン解散についてお聞きしたいんですが、前々回の話で言えば、税金問題をきっかけに橋本さんと中村さんの関係が壊れていくんですね。

中村 「こういうふうになったのは中村祥之のせいだ」と橋本さんの側近の方が囁いていたんでしょうね。

――橋本さんは当時、冬木(弘道)さんの奥さんだった中村薫さんとお付き合いをされていましたね。橋本さんには奥さんがいらしましたから不倫になりますけど。

中村 冬木さんの奥さんと一番最初に会ったゼロワンの人間はボクなんですよ。病気で療養中の冬木さんと2人でゼロワンの事務所に来ていただいて「余命がわずかだから最後に橋本真也と戦いたい」と。スポーツ新聞の記者を通じてそんな話があったんです。ボクは「橋本さんにお伝えします」と言いました。

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作/アカツキ


――橋本さんは冬木さんと試合をする約束をされますが、冬木さんはお亡くなりになり、橋本さんは川崎球場で金村(キンタロー)さんと電流爆破有刺鉄線デスマッチを行います。試合開始直後、橋本さんは冬木さんの奥さんから冬木さんのお骨を受け取り、そのままロープに飛び込んで爆破する(https://www.youtube.com/watch?v=BzSl9RXwqvI )……というシーンも見せて。中村さんは、おふたりが男女の仲ではあることはご存知だったんですか?

中村 ご存知ではないですよね。ご存知ではないけど、橋本さんはわかりやすい方なので。たとえば新しい趣味ができると、行動がハチャメチャになってくるんです。

――生活スタイルが変わってしまうんですね。

中村 変わる変わる。巡業のときに岡山で試合をして、翌日は九州で試合なのに、最終の新幹線の名古屋に向かって、そこでレンタカーを借りて東京に帰るんです。で、九州には翌日飛行機でやってきて、大会開始ギリギリに会場に到着する。

――そこまでして東京に戻りたかった、と。

中村 関西エリアの試合のときは、橋本さんの試合がメインイベントなのに新幹線で東京に帰りたいから、試合の順番を変える。橋本さんが第2試合に出てきちゃったり(笑)。

――ちょっとそれは興行が締まらないですねぇ。

中村 「橋本さん、それだけはやめてください」と押し問答になるわけですよ。選手たちは「橋本さんの言うことだから……」って自分たちが頑張ろうとするんですけど。

――そこに女性の影は感じていたんですか?

中村 東京に帰りたい何かがあったんでしょうし、みんな大人だからわかってないふりはしてましたけど。たとえば橋本さんが東京にいるとき運転手はボクや沖田がやっていたけど、いつのまにかアパッチの黒田(哲広)くんがやるようになったり。

――黒田選手は冬木さんが作ったプロレス団体WEWに所属してましたし、奥さんとは近い存在でしたね。

中村 わかるでしょ。簡単ですよ。こっちも大人だから言わないですけど。

――冬木さんの奥さんは中村さんから見てどんな方なんですか?

中村 数回しかお会いしてないですけど、ボクの感性だと近寄りがたい。魔性っぽかった。冷静に見たらビジュアルもいいし、家庭的だし、橋本さんのお熱になるのはよくわかる。マスコミにも好きになる方はいたんですよ。

――マスコミで?

中村 何人も冬木さんの奥さんに熱を上げちゃって。

――そ、そうなんですか。

中村 3人くらいが冬木さんの奥さんのことで揉めてるんです。最終的には橋本さんがそうなっちゃったから、その3人からすれば橋本さんは敵になっちゃって。

――修羅場になってたんですねぇ。

中村 あのときの橋本さんは団体経営で追い詰められていたけど、冬木さんの奥さんはきっと優しくしてくれたんでしょうね。ボクたちは仕事だから厳しいことを言うんですよね。でも、向こうでは「それは橋本さんは悪くない」ってかばってくれる。

――だから巡業中でも一緒にいたかったんですね……。税金問題以降、中村さんの社内的な立場はどうなっていったんですか?

中村 周囲の方が橋本さんにいろいろと吹き込んでいたんでしょうね。ボクは役員でもなんでもなく、有限会社ゼロワンのイチ社員であって。とりあえず別の社員を経理として雇ったんですよ。ちゃんと仕事ができる方だったんですけど、ボクと橋本さんの意見が合わなくなったときにやめちゃって。

――何があったんですか?

中村 橋本さんが有限会社ゼロワンを閉じて、新しい会社を作ると。そこに経理の子も一緒に移るという話だったんです。有限会社ゼロワンはもう立ちゆかくなってたんですよね。見る人が見たら「これはもう無理だ」という経営状態で。だったら「倒産させて新しい会社を作ろう」と。

――新会社でゼロワンをやっていこう、と。

中村 うーん、それがゼロワンだったのか、新団体なのかはわからない。アパッチ軍とゼロワンから移ってくる選手による団体ですよね。結局、冬木さんの奥さんも苦しかったと思うんですよ。アパッチはそこまで大きな団体ではありませんでしたし、まだゼロワンが羨ましかったんじゃないかな。それで橋本真也という存在をアパッチに移しての新団体設立構想ですよね。

――そういった流れの中で、中村さんと薫さんが話をする機会があったんですか?

中村 絶対にボクとは会わないのはわかっていましたよ。寝首をかいたようなもんでしょ。 

――橋本さんはゼロワンの選手たちに新団体の話はしてるんですよね。

中村 したした。ボク抜きで。

――あ、中村さん抜き。

中村 全選手を集めて「俺は肩のケガでしばらく休むが、俺についてくれば、新日本にも上がれるぞ」と。橋本さんは蝶野(正洋、当時・新日本プロレス)さんと仲が良かったから。

――そういえば、橋本さんが突然新日本の両国に乱入したことありましたね。あの登場は新団体設立の伏線だったんですね。

中村 橋本真也は新日本育ちですから、新日本に戻ることは違和感なかった。大谷(晋二郎)さんも過去に所属していたから「なるほどな」とは思ったはずですよ。だけど、選手は誰一人、橋本さんについていこうとはしなかった。ボクはひとりだけ取り残されると思っていたんですよ。選手はみんな橋本さんのところに行くと思ってましたから。

――どうして選手たちは橋本さんの新団体に行かなかったんですかね。

中村 それはわからない。

――中村さんから選手たちに今後について何か話はされていたんですか?

中村 してない。あの時点でボクは新しい団体をやるとは言ってなかったし、自分の身をどうするかで精一杯。新日本にはもう戻れないし、武藤さんに頭を下げて全日本に入るか、ハッスルで面倒を見てもらうくらいしかないですよね(笑)。

――では、選手が自分たちで下した決断なんですね。

中村 各々の判断だったと思います。あとはやっぱりケガで身体が動かない橋本さんにこれ以上、負担をかけちゃいけないと思っただろうし。みんな橋本さんについて行きたかったとと思うんですよ。だけど、最後の数ヵ月の行動を知ってるわけじゃないですか。そこには一抹の不安はある。

――何かあったら投げ出しかねない状況ではありますね。

中村 だからってボクのほうを見てたって「こいつはいい加減、金を使い果たしてるしな」って思っただろうし(笑)。右も地獄、左も地獄……。パッと、くじ引きを引いたら、こっちだったということじゃないですか。

――橋本さんは選手が誰も来なかったことにどう思ったんですかね。

中村 ボクが裏で糸を引いてると思ったはずなんですよ。

――ああ、きっとそう考えるでしょうねぇ。

中村 選手が誰も来なかったことに最初は焦ったと思うんですけど、あとから考えたら楽になったんじゃないかなあ。橋本さんにはスポンサーやタニマチもおられたと思うんですけど、橋本真也を使って動ける人間はいなかったし。 

――新団体と言っても現実的に動きづらかったという。中村さんは、残った選手たちとZERO1MAXを旗揚げすることになるんですね。

中村 大谷さんから「選手たちは一丸となってやっていきます」と言われたんですけど、ボクは全員残るとは思ったなかったから、そこまでの準備はしていなかったんですけど。

――そうして橋本さんはゼロワン解散を記者会見で発表するわけですね。

中村 その会見にはボクと大谷さんも出たのかな。その日、たまたま後楽園ホールで興行があって、そこで大谷さんが「俺は橋本さんに捨てられんたんじゃない。旅立ったんだ!」と言ってね。そこから紆余曲折を経て、翌年の1月にZERO1MAXを旗揚げして。

――中村さんたちが橋本さんを追放したという見方もありましたよね。

中村 追放されたのはどちらかというとボクですよね。クーデターでもなんでもなく、橋本さんの呼びかけで選手たちが集められて、新団体の話を聞いてるわけですし。

――解散に関して橋本さんとの話し合いの席はなかったんですか?

中村 解散発表会見の10日前くらいかな。橋本さんが社員・選手を全員集めた会議をやる、と。ボクはその場に橋本さんが弁護士を連れてくるんじゃないかなって思ったんです。橋本さんにはその知恵はないけど、周囲の人間はそういうやり方をしてくるだろうな、と。それでこっちも弁護士を用意した。それは選手を守るためでもありますよね。橋本さんが雇用主で、選手たちは労働者側。雇用主側に弁護士がつくなら、労働者側にも弁護士をつけなきゃと。ギャラの未払いもあったから、そこは選手たちを守らないといけないと思いましたし。

――中村さんが弁護士を連れてきたことに橋本さんはどんな反応だったんですか?

中村 橋本さんはこっちが弁護士を用意してきた時点で「やられた」と思ったんでしょうね。今後の交渉事は弁護士を通じてやることになった。そちらが弁護士を通すのであれば、こちらの弁護士を通してくださいと。

――その場で橋本さんは何か発言されてたんですか?

中村 しない。喋ろうとすると弁護士に制されていた。「そういうことを言うからダメなんだ」って。

――よけいなことを言いかねない(笑)。

中村 橋本さんはイライラしてましたしね。周囲に炊きつけられていたわけじゃないですか。「こうなった原因は中村にある」と。

――選手に操ってるに違いない、と。

中村 ボクは何一つやってないんですけどね。

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