東京アニメアワード受賞時のコメント
「蟲師」のこと
関心空間のこの僕のページは、「蟲師」空間から出発しています。
ここのところ自分では何も「蟲師」に触っていないので申し訳ないのですが、話題の一つにでもと思い、
「蟲師」が2006年の東京国際アニメフェアで
東京アニメアワード優秀作品賞に選ばれた時のことを書き留めたメモをここにアップします。
僕の個人的に参加しているコミュニティにアップした文章ですが、もう4年もたっているので、
文章の中身は間違いがあっても時効ということで見逃してください。
この賞は東京国際アニメフェアに付随した賞です。
ノミネート部門での受賞でしたが、これは業界内の約200人ほどの審査員が投票して選ぶ賞で、
ある種の人気投票のような賞という性格があります。
個人賞もあり、「蟲師」では美術監督の脇さんも受賞していました。
表彰式は2006年3月25日にあり、僕がスタッフを代表してトロフィーをいただいてきました。
表彰式では事前に事務局からスピーチは30秒以内にというお達しがあり、
冨野監督を始め皆さん短い型どおりのスピーチでした。
僕はあまり無い機会だと思ったので、言うことは言ってやろうと思い、
珍しく前日に時間を図って2分以内にまとめて置いた原稿を読みました。
ここにそのまま転載します。
「表彰ありがとうございます。
マーベラスエンターテイメントの片岡です。
この受賞はテレビアニメ「蟲師」にかかわったすべてのかたがたの
あらゆる努力に対して頂戴したものだと思っております。
作品に合う土曜の深夜27:40分と言う枠を新たに作り、かつ作品内容に深い理解を頂き、
スタッフの真意を汲み取る形で放送してくださったフジテレビの皆様、
特に納品でご迷惑をおかけした放送センターの皆様、
対応してくださりありがとうございました。
原作と番組をご提供くださった講談社さん
製作委員会メンバーのスカイパーフェクTV、エイベックス、
こうしたビジネス面でのスクラムもこの作品を支えました。皆様に感謝いたします。
さらに石黒社長の陣頭指揮のもと会社ぐるみで必死に制作したアートランドと、
長濱監督、キャラデ・作監の馬越さんを始めとする大勢の現場スタッフの皆さん、
みなさんのもの造りへのこだわりと、それを実現するまでのがんばり、
そこが評価されたのだろうと思います。
手書きアニメで味わい深い画面を作ると
CGを使わないと決めて作ったこと、
止まっているキャラの動きに枚数をかける、
日本の風景の色を出し、
カットのつなぎ・音楽・音で流れる時間をコントロールし、
手間をかけて丁寧に映像を作る、
こうした結果が
印刷メディアでのすばらしい漫画原作を、
時間をさかのぼることの無い不可逆的表現のアニメーションに作り変えました。
表現手法の違いがこんなにまで異なる美しさ、
異なる感覚を生み出すとは思っても居ませんでした。
アニメーション表現の結晶がここに詰まっています。
アニメーションのお祭りでアニメーション作品として評価されたこと、
大勢の現場スタッフの皆さんと一緒にこの受賞を喜びたいと思います。
とてもうれしいです。
ありがとうございました。
でもみなさんビデオ買ってください。困るんです、もっと売れないと。」
この挨拶を終えたところで石原知事が登壇し、長々と約8分間ほどのスピーチで、
最近の日本のアニメは面白くない、みんな似たようなものばかりで区別が付かない、
作っているほうも面白くねえんじゃねーか、とぶちかましていきました。
かなりいいことを言っていて、プロットが大事なんだよ、ちゃんとプロット作れよ、
タイムサスペンスをかけて、モノが破壊される過程じゃあなく、
ギリギリ善意が達成されるようなそういうプロットが書けねーのか、
って挑発していました。
その後のレセプションで、石原さんに「蟲師」見せてやれよ、あいつ観てねーよ、
って声を聞きました。
小生のスピーチも評価が分かれたみたいで、
スタジオぴえろの布川社長からは、友人なのですが、長い!と一言あり、
バンダイの上野社長は、スピーチ良かったです、いいこと言ってくれました、とほめてくれました2006
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