2015/11/11
3:42 pm
矢崎広・植野堀誠くんの「バイオハザード」を観た。
舞台を観始めてしばらくしてつらくなった。
演劇の感想は自分なりの客観的な規準でする姿勢で書いてきたつもりだが、
この舞台は感覚がついていかなかった。客観規準を考えることより感覚の拒否が先に来た。
人が人を殺すために殺す、人がむやみにやたらに殺される、
設定はゾンビだのから人なんか殺してないという言い訳があるかもしれない、
でもそれは2次元のゲームの世界での話で目の前の現実ではない。
舞台はゾンビといえど役者が演ずる限り生身の人間に見える。
しかもついさっきまでは友達だったり、
恋人や用務員だったりしたキャラクターがゾンビ化したというだけで殺される、
しかもこの舞台そのことだけがテーマのように次々と人間がゾンビ化し次々と殺される、
繰り返し繰り返しだ。つらいと同時に何かドラマ見せろよ、とつい叫びたくなる。
面白くない舞台は眠くなるものだけど、この舞台は観ていて、
プロデューサーマインドかもしれないが、眠気より怒りに近い感覚で眠れなかった。
客観的に言えば、ストーリーが良く分からない、何が言いたいのかも分からない、
テーマみたいなものは最初から何も考えていないのだろう、
ゲームの設定に従って世界観が構築され、その世界の中で物事が起こり事件化し、
討伐隊が出動し、お宝みたいなものの追いかけがあり、いろいろな人々がゾンビ化し、殺され、
黒幕が現れ、父親がマッドサイエンティスト化し、父親も黒幕も最後に死を迎える。
何なんだろう、これで何かしら感動が生まれるのだろうか。
演出家や脚本家はドラマを作ろうとしたのだろうか、
人の心の成長とか、友情や愛情が深まる様を作るつもりはなかったのだろうか。
ドラマがなったとしたらせめてクライマックスのカタルシスぐらいきちんと作ってほしい。
千葉真一さんのようなキャリアたっぷりの技のある役者さんをキャスティングしておきながら、
一つの派手なアクションシーンも入れず、
なんでもっとかっこいい千葉さんを見せようとしなかったのだろうか。
千葉さん演ずるキャラクターが最後に死んでゆくのだろう場面、
かっこいい死にざまは見せず、なんか中途半端な消え方でカタルシスには程遠い。
沢山出てくるアクションシーン格闘シーンも何か激しくもなくぬるかった。
そうなるだろうと思う、
銃をほとんどのキャラが持っている世界観で銃を捨てて格闘する必然が見えない。
演出家は役者のモチベーションを考えたのだろうか、
何で格闘しているのか、役者にその必然性をきちんと納得させたのだろうか。
この演出家慣れていないのだろうと思う、簡単な出ハケの下手階段への偏りと煩雑さ、
アクティングエリアの狭さ、美術プラン立てるときに演出家に空間のイメージが出来ていなかったことが分かる。
映像と役者の組み合わせでも、演出家の感覚が舞台向けとは思えない。
役者が映像に合わせるために演技の流れで落ち着いた位置から、
その場所にしか投影できないのだろう、
舞台上の定められたポイントににじり寄る様はお笑いのシーンかと思った。
ゾンビ化する場面を映像で語りたかったのだろうが
役者の位置修正の時間のほんの何秒かで客席はしらける。
そんなのアナログで煙りを出して役者が後ろ振り返ってお面をつけ
表に向きなおればそれでゾンビ化したことは伝わる。
映像にこだわって舞台のライブ感を殺している。
この舞台作った人たちはただたくさんの時間と資金をつぎ込んでバーチャルな映像をふんだんに使用し
ゲームの中の世界を3次元の舞台空間に再現しようとしただけなのだろう。
ゲームの舞台化ではそういう作り方もあると思う。
でもそれはファンが喜んでくれて初めて成立する。
この舞台、ゲームのファンは喜んだのだろうか。
客席で見る限りあまりそのようには見えなかった。
演劇を観に来るわけではないゲームファンは面白いとは思えない舞台でも
2次元で見慣れた設定が舞台空間という3次元の空間に再現されているのを確認しただけで、
納得する人たちがいるのは理解できる。
そのファンの納得感は客席にも漂う物なのだけど、この舞台にはそうした空気もないように見えた。
そもそも客席がガラガラだったのだからファンがいたかどうかさえ定かでない。
たとえファンがいたとしてもカーテンコールの様子を見ると
その人たちの間から熱烈な拍手が起こったとは言いがたい。
楽屋を訪ね矢崎広くんと植野堀誠くんとパチリ。
矢崎くんには舞台の感想は言えず、ただ彼の真面目さがよく出ていたと思うのだけど、
これだけ客席が薄くても彼の熱量は大きく、
主役の熱演が舞台に視線を走らせる唯一の原動力になっていたこと、伝えた。
矢崎くんのそうした姿勢は大切ですね、
主役の肩には舞台全部がのっかてるから緩められないし緩めなかった矢崎くんは偉いと思う。
ボリはいい芝居してた。
運動神経の抜群さをうかがわせるいつもの身のこなしの切れ味があり、
セリフもスパッと歯切れよくスマートな秘書役が嵌ってた。
セカンドの木村敦くん、仕事したことないのに挨拶に来てくれた、こういうのうれしい。
いつもは出演者を食事に誘うのだけどこういう舞台では辞めておいたほうがよいと思い、
たまたま見に来ていた高崎翔太くんを誘って焼き鳥食べて舞台忘れて六本木を後にした。
岸祐二くんも出演してて、高崎翔太くんと「千本桜」チームでパチリもあり。