めるまがアゴラちゃんねる、第112号をお届けします。
配信が遅れまして大変申し訳ございません。
コンテンツ
・今週の池田信夫
アゴラ研究所所長、池田信夫のエントリーでアクセスが多かった記事、アゴラ・チャンネルの動画を紹介します。
・ゲーム産業の興亡(123)
Oculus Riftの新型「Crescent Bay」は何を変えるか
新清士(ゲームジャーナリスト)
アゴラは一般からも広く投稿を募集しています。多くの一般投稿者が、毎日のように原稿を送ってきています。掲載される原稿も多くなってきました。当サイト掲載後なら、ご自身のブログなどとの二重投稿もかまいません。投稿希望の方は、テキストファイルを添付し、システム管理者まで電子メールでお送りください。ユニークで鋭い視点の原稿をお待ちしています http://bit.ly/za3N4I
アカシックライブラリー(旧アゴラブックス)は、あなたの原稿を電子書籍にして販売します。同時にペーパーバックとしてAmazon.comサイト上で紙の本も販売可能。自分の原稿がアマゾンでISBN付きの本になる! http://bit.ly/yaR5PK 自分の原稿を本にしてみませんか?
今週の池田信夫
河野談話の「官憲等が直接これに加担」とは何のことか
http://agora-web.jp/archives/1615720.html
超こまかい話だが、先日の朝まで生テレビでもスタッフが理解していなかったので、歴史の継承のためにメモしておこう。河野談話でもっとも重要なのは、次の強調部分だ。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧によ...
私はなぜ保守主義者ではないのか
http://agora-web.jp/archives/1615802.html
駒崎弘樹氏が「『強くて優しい』新しいリベラル」について語っている。リベラルを自認する人々も、集団的自衛権や原発をめぐる朝日新聞などのサヨク的な論調にはついていけないようだ。大事なのはイデオロギーではなく、現場の問題を解決することだ、という論旨には同感だが...
塩野七生氏の無知と池田恵理子氏のデマ
http://agora-web.jp/archives/1615486.html
女たちの戦争と平和資料館なる団体が、『文藝春秋』10月号の塩野七生氏のエッセー「朝日新聞の“告白”を越えて──『慰安婦大誤報』日本の危機を回避するための提言」に対する質問状を出している。
金がないと命も救えない
http://agora-web.jp/archives/1615345.html
先月27日のアゴラシンポジウムでは、政府事故調の委員長だった畑村洋太郎さんをまねいて、地震国日本のリスク管理を考えた。東日本大震災の教訓として学ぶべきことは多いのに、原発ばかりに関心が集中しているのは困ったものだ。
NHKは昭和天皇に「強姦罪」を宣告した - 『NHKと政治権力』
http://agora-web.jp/archives/1614905.html
このごろ在特会や右翼の脅迫ばかり話題になるので、バランスを取るためにNHKの「言論テロ」を紹介しておこう。本書は、版元によれば「政権党有力政治家が2001年にNHK最高幹部に『圧力』をかけることで、慰安婦問題を扱った『ETV2001』は著しく改変された。
【アゴラVlog】日本軍と朝日新聞の官僚的出世主義
https://www.youtube.com/watch?v=PjO7jpyYfIU
池田信夫氏のVlog(アゴラ読書塾「昭和史を考える 第2部」講義より)
太平洋戦争当時の日本軍の戦い方と、32年間にわたる朝日新聞の慰安婦報道のあり方の類似性を分析します。
特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)
ゲーム産業の興亡(123)
Oculus Riftの新型「Crescent Bay」は何を変えるか
10月4日に、ゲーム未来学研究会「Oculusを最前列で遊ぶ冴えたやり方」というセミナーを開催した。私自身が発起人となった勉強会で、Facebook傘下の米Oculus VRのヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift」を中心としたバーチャルリアリティデバイスを中心としたテーマとした内容だ。
話題の中心となったのは、9月19日〜20日に、米ロスアンゼルスで開催されたOculus VR主催のカンファレンスOculus Connectだ。現地に参加した3人の方に、報告の講演と、パネルディスカッションを通じて、内容を報告してもらうことに100名あまりの来場者の大きく注目が集まった。
■高い評価を集めた新型のCrescent Bay
Oculus Connectでは、今後のOculusについて、様々な発表が行われたのだが、最大の発表は、「Crescent Bay(クレセントベイ)」と呼ばれる、来年以降に発売が予定されている、一般販売向けのハード(CS版)の発売の前段階となるハードの発表と展示だった。このハードを最終的な製品として仕上げたものが、販売される予定だ。
Oculus Riftは、現在7月下旬に「DK2」という開発者向けキットの販売が始まったばかりだ。出荷は生産が遅れ気味のため、現在は世界で2万台程度しか、まだ存在していない。予約は7月時点で5万台以上の注文が集まっているため、生産がまったく追いついていない状態だ。本格的な出荷は今月からとなる予定だ。
DK2は、使われている有機ELがハイビジョン画質で、赤外線センサーを使ったヘッドトラッキング機能を使っていることで、昨年リリースされた「DK1」よりも劇的に性能が向上している。
ところが、Crescent Bayは、さらに性能が向上しているようで、体験の質が、DK2とまったく違う、DK1を付けたときと同じような衝撃を受けたというのが、現地で体験してきた参加者の感想だった。「バーチャルリアリティの世界に完全に自分が存在しているとしか思えない」というほどの強烈な没入感を感じられるものだったようだ。
これは、海外のニュースサイトやブログ等の報告でも、同様の高い評価を得たことを筆者も確認している。誰もが会場のデモで体験できたCrescent Bayの性能向上の劇的な変化に驚いたようだ。撮影が禁止されたために、どのようなデモが行われたのかという詳細は、体験した人がテキストでまとめているものでしか把握することができないが、連続して10のデモが次々に表示されるという内容だったようだ。
Crescent Bayのはっきりとしたハードウェアのスペックとして、現時点で明らかにされているのは次の通りだ。赤外線LEDをOculus Riftの後頭部にも組み入れることで、360度のヘッドトラッキングを実現したことで、どの方向を向いても映像が付いてくるようになった。また、3Dヘッドフォンを搭載したことで、映像として見えていないところからの音声も聞こえてくるため、迫力も格段に上昇してしたようだ。
■画質等の向上が更なる没入感を増す
ハードウェアスペックについては、完全には公開されていないものの、利用しているモニターの液晶ELはスーパーハイビジョンサイズになり、リフレッシュレートが90hzへと向上しているようだ。DK2では、現在、画像の編み目が見えるという限界を抱えている。画面を凝視すると、映像的な粗が見えてしまうのだ。しかし、Crescent Bayの体験者は、一応にそうした粗が見えなかったと述べていた。
これは筆者の想像だが、Crescent Bayは、5.7インチ・2560 x 1440のGalaxy Note 4と同じ有機ELモニターを搭載しているのではないかと考えている。518PPIのピクセル密度をもっている。
比較をすると、Retina Display HDという名称で、PPIの密度の高さをアピールしている、iPhone 6の4.7インチ解像度は1334 x 750、ピクセル密度は326PPIとなっている。
iPhone 6は液晶に写真が張り付いているような印象を与えるといった評価を集めているが、これはPPIが上昇しているためだ。Galaxy Note 4のPPIの高さは、iPhone 6よりも大きく高いために、人間の視覚では区別が付かないほどの画素密度になったことで、DK2で感じられているような粗がなくなってしまったのだろうと思う。
また、映像のリフレッシュレートが90hzになっていることも影響が大きい。DK1では一般のテレビモニターと同様に60hzだった。これは1秒間にモニターの映像を描き変える映像の回数を示し、この回数が多ければ多いほど、映像は滑らかに動く。そのため、高ければ高いほど、VRを見る上で映像はスムーズに感じられるようになる。DK2では75hzに引き上げられ、これがCrescent Bayは90hzにまで、さらに引き上げられたことで映像への没入感がさらに増したのだ。
それに、360度のヘッドトラッキングが完璧に追従することができたことで、体験者の没入感は、VRの世界に自分が実際に存在しているという強烈な体験にまでなったと考えられる。現在のDK2でもかなりのインパクトを持った体験を経験することができるが、Crescent Bayが登場すると、それをさらに凌駕する体験が感じられると考えられる。
■求められるハードウェア性能の向上がネックに
ただ、パネルディスカッションでも出ていたのだが、Crescent Bayが要求するコンピュータスペックは相当高いのではないかと考えられる。DK2でも、ゲーミングPCと呼ばれる16万円以上するようなハイスペックなPCを使わなければ十分に楽しむことができない。
会場で使われていたPCがどの程度のスペックであったのかは明らかにされていないが、ハイエンドのビデオカード2枚刺しといった形で、右眼と左眼に別々に映像を作成しているような20万円を越えるようなかなりハイエンドなPCを使っていたのではないかと推定される。これは、CS版が発売されても、手軽に一般のユーザーの手に届くほどのリーズナブルな性能として登場することが難しいのではないかということを示唆しているようにも感じられる。
今後、どの程度のペースで、VRが普及していくのかには議論があるが、CS版の販売価格帯は500ドル前後になるとは思われる。また、それを動かすためのPC環境が高価になることを考えると、2〜3年はどうしても普及には時間がかかるのかもしれない。
ただ、Crescent Bayの体験者にとっては、強烈な体験だったようで、価格が高いからといって、その体験の価値が下がるというものではないようだ。より熱狂的なユーザーを生みだしている面があり、現在のOculusコミュニティを引っ張っているゲーム開発者を中心に、口コミですごさが広がっていくということが起きるのだろうと考えられる。
どちらにしても10年スケールで起きる大きな変化の入り口に立っているのだろうという実感を、私自身も議論を通じて感じることができていた。
□ご意見、ご質問をお送り下さい。すべてのご質問に答えることはできないかもしれませんが、できる範囲でメルマガの中でお答えしていきたいと思っています。連絡先は、sakugetu@gmail.com です。「新清士オフィシャルブログ」http://blog.livedoor.jp/kiyoshi_shin/ も、ご参照いただければ幸いです。
新 清士(しん きよし)
ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
Twitter ID: kiyoshi_shin
コメント
コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。