めるまがアゴラちゃんねる

2014年10月第3週号

2014/10/14 14:01 投稿

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めるまがアゴラちゃんねる、第113号をお届けします。
配信が遅れまして大変申し訳ございません。


コンテンツ

・今週の池田信夫
 アゴラ研究所所長、池田信夫のエントリーでアクセスが多かった記事、アゴラ・チャンネルの動画を紹介します。

・ゲーム産業の興亡(124)
ゲームエンジンのディファクトスタンダードUnityの身売りの驚き
新清士(ゲームジャーナリスト)


アゴラは一般からも広く投稿を募集しています。多くの一般投稿者が、毎日のように原稿を送ってきています。掲載される原稿も多くなってきました。当サイト掲載後なら、ご自身のブログなどとの二重投稿もかまいません。投稿希望の方は、テキストファイルを添付し、システム管理者まで電子メールでお送りください。ユニークで鋭い視点の原稿をお待ちしています http://bit.ly/za3N4I

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今週の池田信夫

北朝鮮が「地上の楽園」だった時代
http://agora-web.jp/archives/1616402.html
ハンキョレ新聞が、朴槿恵大統領のやり方は父親と似てきたと論じている。そのころを体験した人は少ないと思うので、メモしておこう。

リベラルなメディアが「空気」を醸成する - 『言論抑圧』
http://agora-web.jp/archives/1616524.html
朝日新聞は最近、慰安婦問題については報道を「自粛」しているが、彼らのOBの勤務する大学に右翼から脅迫状が来た事件については何度も報じ、「言論弾圧の被害者」を演じている。

意志のない天皇と目的のない戦争
http://agora-web.jp/archives/1616280.html
「ゆきゆきて神軍」は、日本のドキュメンタリーの最高傑作である。奥崎謙三は天皇の戦争責任を問い続け、かつての上官が部下を射殺した責任を問うために自宅に乱入して傷害事件を起こすのだが、彼の問いにはだれも答えない。彼の苛立ちの中から、あの戦争の本質が浮かび上が...

金がないと命も救えない
http://agora-web.jp/archives/1615345.html
先月27日のアゴラシンポジウムでは、政府事故調の委員長だった畑村洋太郎さんをまねいて、地震国日本のリスク管理を考えた。東日本大震災の教訓として学ぶべきことは多いのに、原発ばかりに関心が集中しているのは困ったものだ。

織田信長は「全国統一」をめざしたのか
http://agora-web.jp/archives/1616105.html
大河ドラマなどで最も愛好される時代は戦国時代であり、織田信長はそれを平定して「天下統一」しようとしたが、明智光秀に暗殺されて挫折したとされる。ここでは信長がモダンな絶対君主で、それを失ったことで日本は統一国家になるのが300年遅れたと想定されている。

【アゴラVlog】目的のない戦争 〜「野火」から「ゆきゆきて神軍」まで〜
http://youtu.be/lIC-uhf7QrA大岡昇平の小説『野火』、傑作ドキュメンタリー『ゆきゆきて、神軍』に共通する「人が人を喰う」といった異常な事態。なぜ我々日本人はこのような目的のない戦争をしてしまったのか?



※これ以降は「週刊アゴラ」有料版をご覧ください。
http://www.mag2.com/m/0001559193.html


特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)

ゲーム産業の興亡(124)
ゲームエンジンのディファクトスタンダードUnityの身売りの驚き

10月10日、米CNET誌が、ゲームの統合的な開発環境のゲームエンジンの分野で、世界シェアトップと考えられるユニティテクノロジーズが身売りの準備を進めている可能性があると報じた。

Googleなどの買い手候補にプレゼンテーション資料を提示したという。「数ヶ月の間に、少なくとも買い手候補1社と本格的な協議を行った」としている。Unityが積極的な身売りを試みているのは不明。9月10日の米VentureBeat誌が提示金額を最大20億ドルとしていると伝えているといったことを報じている。

これまで、身売りの可能性を否定してきたので、それなりに驚きを伴ったニュースだ。


■安価な開発環境として人気を集めたUnity

ゲームエンジンのUnityは、無料版の利用者も含めると、世界で100万人以上のゲーム開発者が利用している。普及が大きく進んだのは、偶然の要因がある。元々は、Mac向けのゲーム開発環境として作られており、05年にApple’s Worldwide Developers Conferenceで発表になった。

しかし、当時はWindows用の開発環境がすべてで、Mac向けのゲーム開発環境のニーズはなく、同社の経営は苦しい状態が続いた。Wiiに対応したりと、あまり複雑でないデータを扱うゲームエンジンとして、無料版も提供し、フルセットで販売しても1500ドルという格安な価格設定をしたが、それでも、ユーザーが伸びなかった。

ところが、08年のiPhone 3GSの登場により状況が一変した。当時、Macで開発できるゲーム環境はなかったために、Unityが注目を集めることになったのだ。

また、プレイステーション3やXbox360といった高度なグラフィックスを扱うゲーム環境に向けてゲームエンジンは開発されており、Epic GamesのUnreal Engineが大手ゲーム会社を中心に普及していた。しかし、利用には数千万円のライセンス費用が求められるため、利用は大手ゲーム会社の一部に留まっていた。そのため、はるかに低価格のUnityが爆発的な支持を集めるようになったのだ。

世界的なスマホの普及と、スマホゲーム市場の拡大は、Unityの普及を後押しすることになった。その頃に、ベンチャーキャピタルの大手米セコイヤ・キャピタルの投資を受けている。

日本でもスマホゲーム用の開発環境としては、最も普及している。コロプラの「クイズRPG黒猫のウィズ」や、セガのRPG「チェインクロニクル」など、スマホゲームで3Dグラフィックスを利用しているゲームの大半は、Unityを利用していると考えてよい。

Unityの圧倒的な強みは、様々なハードに対応している点で、iPhone用に開発したゲームを、アンドロイド端末や、PS Vita等のゲーム機への移植も容易である点だ。移植展開をするためのコストを、多くの企業が内部の開発チームでもたないようにするために、Unityを積極的に採用することを進めている。


■ゲーム開発のディファクトスタンダードに

Unityの日本での成功は日本法人のユニティテクノロジーズジャパン代表の大前弘樹氏抜きには語ることができない。

大前氏は、アクションゲームの「アーマードコア」シリーズで知られるフロムソフトウェアでプログラマーとしてキャリアを積んでいる。プログラムはほとんど独学で学び、同社に入社、PS3とXbox360時代に求められたマルチプラットフォーム戦略に必要な自社内のゲームエンジン環境を整えることを行った。Windows版を開発すれば、PS3や、Xbox360へも移植を容易にするという環境だ。

その後、独立し、自身でスマホゲーム開発を進めたが、うまく行かなかった。そのときに出会ったのがUnityだった。Unityには、自分がゲームエンジンの環境として自分が求める理想的な環境が整っていることを、大前氏は感じ、日本のゲーム開発者カンファレンスのCEDECのために来日していたUnity幹部と意気投合して、日本法人を立ち上げることとなった。

自らが求めている開発環境のすべてがUnityに揃っていたことと、社内の独自環境の時代を終えて、ディファクトを登場させることで、業界全体で情報を共有できる環境を整えることを目的としていた。

Unity普及以前は、日本では、ゲームエンジンは既存の家庭用ゲーム会社では、それぞれの企業が独自に開発をするというのが当たり前だった。外部企業のゲームエンジンを導入することには、高い抵抗があった。自社の技術を失ってしまうことや、あてがわれているプログラマーの仕事がなくなること、一度他社に切り替えれば二度と回復させることができないといったリスクが障害となっていたためだ。

しかし、ウェブのブラウザをベースにゲームを作っていた企業には、3Dのゲームエンジンのノウハウがなかったために、11年頃から採用例が一気に増え始めた。

流れが決定的に変わったのが、大前氏がまとめることに成功した任天堂との12年9月に行ったグローバルライセンスの契約だ。「Wii U」向けのゲーム開発契約をおこなったゲーム会社は、Unityの有料版を無料で利用できるという契約だった。

このライセンスの成功後、ソニー・コンピュータエンタテインメントとも、マイクロソフトとも同様の契約を行い、家庭用ゲーム機会社では、Unityは事実上のディファクトスタンダードとすることに成功した。

ユニティテクノロジーズの売上は、アメリカに続き、日本が大きく、日本法人の発言力は非常に大きいと、大前氏から聞いている。


■売却を狙う意図

ゲームの開発環境というミドルウェアは、ビジネスとして成長することに限界があると考えられている。ゲーム開発者向けに展開しているために、一定の売上以上は見込むことができず、スマホゲームのように大ヒットタイトルが登場するといったことが起こりにくいためだ。

現状では、Unityの利用者はほとんどゲーム開発者に限られると考えられ、その人数では自ずと限界がある。100万人ユーザーを抱えているとはいえ、その伸びは、いずれは緩やかになると考えられる。

CADなど3Dのモデリング環境のディファクトスタンダードを取った「3D Studio Max」の開発会社として、上場にまで成功したのはAutodeskがあるが、上場を目指すよりも、短期的にベンチャーキャピタルにしてみると収益化を目指すのであれば、売却というゴールの方が容易であろうと考えられる。

企業価格の20億ドルというのは、Facebookが、Oculus VRを買収した金額と同様であるため、すでに十分に利益が出ているUnityには安すぎる値段のような気もする。

同社はこれまで、売却をすることに対しては否定的な立場を外部に発信してきた。4月に来日したデイビット・ヘルガソンCEOと会ったときには、彼は否定的だった。東京ゲームショウ前に、大前氏に聞いたところでは、同様に買収されることには否定的に述べていた。

Unityはどこか特定の企業を優先にしないという中立性を保っていることが、多くの企業が支持してきている要因でもあるのだが、Googleに買収されるとなると、その影響力に警戒を抱くことになるだろう。

どちらにしても、スマホ市場の成長によって、成功した企業が、売却なり、上場なりの企業としてのゴールを得る最終段階のステップへと進み始めている状況になっているとは言えるだろう。


□ご意見、ご質問をお送り下さい。すべてのご質問に答えることはできないかもしれませんが、できる範囲でメルマガの中でお答えしていきたいと思っています。連絡先は、sakugetu@gmail.com です。「新清士オフィシャルブログ」http://blog.livedoor.jp/kiyoshi_shin/ も、ご参照いただければ幸いです。

新 清士(しん きよし)
ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
Twitter ID: kiyoshi_shin

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