めるまがアゴラちゃんねる

2014年8月第3週号

2014/08/19 12:43 投稿

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めるまがアゴラちゃんねる、第105号をお届けします。
配信が遅れまして大変申し訳ございません。


コンテンツ

・ゲーム産業の興亡(116)
期待のヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift DK2」提供開始
新清士(ゲームジャーナリスト)


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特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)

ゲーム産業の興亡(116)
期待のヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift DK2」提供開始


米Oculus VRが、7月末より、裸眼立体視を可能にするヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift DK2」の予約注文者への提供を開始した。今年3月の米サンフランシスコでのGame Developers Conferenceで発表が行われ、予約販売が開始されたが、製品リリース時までには、15000台もの注文がすでに集まっていたと発表されている。

DK2は、13年3月にリリースされたDK1の後継機種で、開発者向け(Development Kit)として提供されている。一般ユーザーを対象としていないという位置づけだが、販売価格は350ドルでOculus VRのサイトを通じて誰でも注文することができる(日本へは、75ドルの送料が別途かかる)。


■3D酔いなどハードとしての課題が多いOculus Rift

4月に注文した筆者も、8月11日に入手することができ、早速、様々なソフトウェアを動作させて試しはじめている。

筆者はOculus DK1は正直に言って苦手だった。使用していると、3D酔いをして車酔いに似たような現象に直面し、すぐに気持ち悪くなってしまうためだ。

個人差が大きいようだが、映像として見ているものと、身体の動きに映像がシンクロしていないために、引き起こされているようだ。首を左右に振ったとしても、DK1の場合は、首の動きのデータを取ることができても、加速度センサーで追いかけるために、極めて荒い動きしか調べることができなかった。

この3D酔いの問題は、Oculus Riftのようなハードウェアが一般家庭に普及していく上では、大きな壁になると考えられている。ただ、DK2では、DK1で得られた知見を積み重ねて大きな変更点が入っている。赤外線センサーを利用した、より正確なヘッドトラッキングシステムだ。

DK1の場合は、ハード単体で利用するが、DK2ではハードに赤外線LEDが組み込まれており、外部カメラでその動きを検出するようになっている。それにより、頭の動きをより迅速に把握し、画面に反映する仕組みが組み込まれている。

実際に、デモを使って見たところ、そのヘッドトラッキング性能の高性能さに驚いた。デモでは、自分が仮想の机に座っており、机の上にはノートや鉛筆、ランプ、トランプが置かれている。後ろを向けば自分が座っている赤い椅子の姿が見える。後は何もなく、ブルーの空間が遠くまで開けているばかりだ。

いつも仕事用に使っている椅子に座って試しているためだろうが、その没入間は強烈で、現実の感覚が狂わされる。自分がいる場所は変化していないとわかっているにもかかわらず、どこか遠い場所に移動したかのような気分がしてしまうのだ。


■DK2の最大の特徴はヘッドトラッキングシステム

DK1用に開発されていたゲームで、DK2に移植されたものも早速試している。

ただ、まだ開発者向けハードということもあり、主にユーザーにより公開されているゲームは動作が安定的に動くとは言いがたい。DK2の対応をうたいながらも、筆者の環境では動作しないゲームも少なくない。筆者のハードウェアの性能の低さが要因なのか、ソフトウェア側の問題なのかわからないこともしばしばだ。

その中でも、DK2の強力さを感じられたのが3Dブロック崩しの「Proton Pulse」だ。このゲームは消すべきブロックは画面の奥にあり、プレイヤーは首を動かすことによって、画面前方にあるパッドを動かして、飛んでくるボールを反射させ、ブロックを消していく。

奥行き感は、3D立体視を利用しなければ、把握することが難しく、頭の動きでパッドを動かすということも、これまでなかった入力デバイスの働きだ。

Oculusでの3D酔いは、頭を急激に動かすといった動作が伴う場合に起きることが、すでにわかっている。このゲームはほぼ前方だけを向いて、方向を劇的に変える必要もないこともあり、3D酔いを経験することはなかった。サイバースペースのようSF的な映像で、画面が派手で迫力がある。DK2が切り開くと思われる新しいゲームの魅力を現時点でうまく説明できていると感じている。


■Facebook買収後、急激にトップクラスの人材が集まる

Oculus VRは、3月にFacebookが20億ドルで買収したことで、高い注目を浴びた。会社設立から1年半のベンチャー企業に、それだけの価格が付いたことが驚きを持って受け止められた。ゲームエンジンを開発し、リアルタイムグラフィックスの基礎を作ったカリスマ的プログラマーのジョン・カーマックがCTO(最高技術責任者)を勤めていることが会社の魅力を大きく感じさせる理由だったと考えられている。

その後、その資金を利用してか、Oculus VRには、次々と様々なスターとも言えるエンジニアが集まっている。米Valveで、Oculus Riftに近いデバイスの開発を行っていた、はやりリアルタイム3D技術開発を引っ張ってきたマイケル・アブラッシュが移籍したことも大きな驚きとして伝わった。

さらに、Google Glassでリードシステムエンジニアだったエイドリアン・ワン、また、ソニー・コンピュータエンタテインメント傘下で「アンチャーテッド」シリーズなど世界最高水準のゲーム開発力を持つNaughty Dogを共同設立者だった、ジェイソン・ルビンなど、次々に発表される優秀な人材の参画に驚くばかりだった。

また、テクノロジーだけでなく、コンテンツ流通プラットフォームの構築の経験者など、ビジネス面での可能性を開発する人材も雇用をはじめている。

これらのメンバーをOculus VR自身も「ドリームチーム」とプレスリリースで銘打っているほどだ。 

Oculus VRは、9月19〜20日に「Oculus Connect」というカンファレンスを9月19-20日に米ハリウッドで行うと発表している。Oculus Riftには、ハリウッド映画の関係者も高い関心を示しているといわれており、新しい発表や動きが明らかになると思われる。

Oculus VRは、DK2の次のハードは、ユーザー向けに販売する製品にすることを明らかにしている。まだ、実際の製品が発売されるのは来年以降になると思われるが、急激な動きを見せることは間違いない。



□ご意見、ご質問をお送り下さい。すべてのご質問に答えることはできないかもしれませんが、できる範囲でメルマガの中でお答えしていきたいと思っています。連絡先は、sakugetu@gmail.com です。「新清士オフィシャルブログ」http://blog.livedoor.jp/kiyoshi_shin/ も、ご参照いただければ幸いです。

新 清士(しん きよし)
ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
Twitter ID: kiyoshi_shin

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