めるまがアゴラちゃんねる

2014年8月第2週号

2014/08/11 14:17 投稿

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めるまがアゴラちゃんねる、第104号をお届けします。
配信が遅れまして大変申し訳ございません。


コンテンツ

・ゲーム産業の興亡(115)
100億円以上の調達に成功し勢いに乗るベンチャーゲーム会社gumi
新清士(ゲームジャーナリスト)


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特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)

ゲーム産業の興亡(115)
100億円以上の調達に成功し勢いに乗るベンチャーゲーム会社gumi

8月6日、LINEが、gumiに出資すると発表を行った。数十億円の規模で、出資比率は10%程度という。7月4日にも、ベンチャー投資会社のWiLの増資や、セガネットワークスとの資本業務提携で新規に50億円の投資を受けて、投資額は約100億円に達しており、さらに増えたことになる。


■北米ではじめて通用した日本製ゲーム「ブレイブフロンティア」

gumiへの急激な期待が高まっているのは、子会社のエイリムが展開するスマホゲーム「ブレイブフロンティア」が日本国内のみならず、北米市場や東南アジアのトップ売上ランキングで上位に食い込む状態が続くヒット状態にあることが大きい。

日本製のタイトルは、特に北米市場でヒットさせることが極めて難しいとされてきた。実際に、スマホ市場を先行して作ろうと試みた、DeNAやグリーは成功したとはいいにくい。DeNAの海外事業は黒字転換できない状態が続いている。

グリーは、自社で開発した日本製タイトルは成功していないが、12年5月に2億1000万ドルで買収したFunzioのゲームがヒットはしているものの、純然たる日本製タイトルの成功は出てきていなかった。

特に、日本と同じ市場規模を持つアメリカ市場での成功は、世界での成功を押し進めるための必須条件であると考えられてきたが、日本のゲームテイストは人気が出にくいと考えられてきており、実際に、アニメ風のテイストや日本では一般的なカードバトルゲームのガチャシステムは浸透してこなかった。

昨年9月の東京ゲームショウ頃に、セガの関係者にすでに成功していたロールプレインゲーム「チェインクロニクル」の北米展開について聞いたが、日本のようにテレビCMといったマスに簡単にアピールする方法がないため、お金がかかる割には、成功させることが難しいという話を聞いていた。

ガンホー・オンラインエンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」でさえ、トップ売上ランキングで、着実に利益を出せる順位につけているが10位から70位ぐらいと人気には振れ幅がある。

ところが、「ブレイブフロンティア」では、昨年12月にリリースを開始して、今年3月頃には、アメリカのトップ売上ランキングで、20位以内に入る常連になり始め、この6〜7月は10位位内を伺うまでの人気になってきている。


■成功の要因は、リリースのタイミングと現地法人の権限の広さ

gumiが成功できた要因はいくつかある。1つには、スマホゲームの成功にはほとんどついて回っているリリース時期のタイミングの良さだ。「ブレイブフロンティア」は昨年の7月に日本でリリースされているが、8月以降は安定して、10位以内に入る人気タイトルになっている。

昨年7月には、セガの「チェインクロニクル」といった1億円以上の開発費をかけたRPGがヒットすることが証明されはじめていた時期で、また、日本市場も市場規模の拡大が続いていた時期だったといえる。スマホのハードを活かした、ネイティブアプリに特化した優れたゲームが、まだまだ登場していなかった。

開発を行ったエイリムのスタッフは、他のソーシャルゲーム会社で経験を積んでいたスタッフが多かったようだ。

開発には1年あまりかかっているため、実際にプロジェクトが動き始めたのは2012年夏頃と想定される。まだ、その頃には、パズドラのヒットが始まった時期ではあったが、本格的なネイティブアプリがヒットするかどうかは未知数の時期でもあり、「ブレイブフロンティア」がリリースされた時期は絶妙のタイミングだったということができる。

gumiの関係者によると、グリーのウェブブラウザ向けに展開していたgumiのゲームの売上は落ち始めており、この切り替えのタイミングは、かなりきわどかったという。もし、「ブレイブフロンティア」のヒットがなければ、今のような勢いになることはまずなかっただろう。

第二に、gumiの成功は、アメリカを初めとした欧米圏への展開は、シンガポールに置いている現地法人を使い、権限を大きくまかせたことも成功要因であるようだ。gumiは、運用も含め、ゲームのデータをすべて渡し、欧米圏の人にフィットしやすいように、ゲームのローカライズを行うカルチャライズを行った。

そして、「ブレイブフロンティア」のグラフィックスが、90年代の「プレイステーション」時代のスクウェア・エニックスがリリースしていたような、2Dのロールプレイングゲーム(RPG)風のグラフィックスであったことも、アメリカで受け入れられた要因であるようだ。現在の3D映像のリアル志向が進んだ家庭用ゲーム機では、日本のRPGは、JRPGと呼ばれて欧米圏ではヒットすることが難しいと考えられている。

しかし、「ブレイブフロンティア」は運良く、2D映像が主体だった時代を連想させ、当時の日本のゲームが好きだったユーザーにもアピールしたことが大きかったようだ。

セガが、gumiと提携するのは、日本的なブランドの「ブレイブフロンティア」の成功に乗る形で、どのような展開にするのかを決め切れていなかった「チェインクロニクル」とブランドイメージを合わせる形で展開を押し進めようという考えだろう。

LINEとの提携は、成功に結びつくのかは、不透明な印象がする。LINEは100億円規模の日本のゲームを開発するファンドを設立することも合わせて発表したが、LINEというプラットフォームでは、LINEに直接関係するゲーム会社以外の企業で成功したという事例が出てきていない。

gumiが実際にLINEの「LINE POP」のようなカジュアルゲームを開発する能力があるのかは明確ではないが、資本を入れて組んでおくことで、他のゲーム会社への対外的なアピールを増そうという気持ちもあるのだろうと思われる。

gumiに、多くの企業が出資する背景には、企業としての勢いがあると同時に、上場前のタイミングで組んでおくメリットが大きいと考えていると思われる。ただ、gumiが本当に強い立場を作れるかどうかは、「ブレイブフロンティア」依存が強い状態から脱することができるかどうかにすべてかかっているように思われる。



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新 清士(しん きよし)
ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
Twitter ID: kiyoshi_shin

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