小林よしのりライジング

貴族になりたい

2014/05/19 23:30 投稿

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日本ではフレンチレストランでも6時に予約するが、
巴里では7時か7時半からしか予約を受け付けない。

ディナーが始まる時間が遅いのだが、
そもそも巴里の7時半はまだ日が沈んでなくて、
日本の午後4時くらいの明るさだ。

8時過ぎに夕陽が射し込んでまぶしくなるくらいだから、
いまいちディナーの雰囲気が出ない。

 

英語は妻が担当、フランス語はわしが担当で
手分けすれば、2人とも幼児並みの拙い意思表示だが、
なんとか楽しく食事できる。

そもそもわしが年取って貫禄がついたため、
巴里では敬意を払われる。

老人になるほどに敬意を払われるのがヨーロッパの良い文化で、
日本はガキがのさばって、老人がシケた雰囲気になり、
若者から馬鹿にされる。

これも日本のダメな文化だ。

だから巴里がわしにとって心地いい面が大いにあるのだ。

 

秘書みなぼんの役割はワインを飲むことだ。

これが貴重な役割で、みなぼんがいなければ
フルボトルで頼むことが出来ない。

10年前はわしとみなぼんで赤白2本を五分五分の勝負で
飲んでいた。

つまり1人一本空けることができたのだが、
今はもう2人で一本しか飲めない。

それも四分六分でわしの方が少量になってしまった。

ワインはフルボトルで飲んだ方が圧倒的に美味い。

自分で選んだ方がカンが働くようになるだろうから、
リストを見て考えるし、飲んで美味かったら最高に嬉しい。

あとで値段を聞いて怒るのはいつも妻の役目で、
みなぼんはケラケラ笑っている。

酔っ払ってるから、わしはケ・セラ・セラと笑っている。

 

ディナーが終わるのは10時半になるが、
外に出てもまだ暗くなっていない。

空が藍色で夜の雰囲気が出ない。

朝も早く開けるから夜の時間が短いようだ。

貴族になって毎日こうして暮らせたらいいなと夢想しながら、
タクシーでホテルに帰るのである。

ディナー

 

 

 

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