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民主党政権が建設を凍結していた設楽ダム(愛知県設楽町)について、国土交通省中部地方整備局は17日、同県豊橋市で開かれた流域6市町の首長らとの会合で、費用面や実現可能性から建設継続が最も有効との再検証結果の素案を示した。素案は、ダム建設のほか、河道掘削や堤防整備などの代替案を比較。ダム建設のコストが最も低く、治水、利水の両面からもダムが最も有利とした。会合では、横山光明設楽町長が「流域の安全のためにも建設を進めてほしい」と述べるなど、建設を評価する声が相次いだ。整備局は有識者や地元住民、大村秀章知事の意見を聞いた上で、再検証結果を国交省に報告する。設楽ダムは、豊川流域の洪水被害の軽減や農業用水確保などを目的に、国が1978年に建設事業に着手したが、ダム本体の工事は未着工。総貯水量は9800万トンで、事業費は約2070億円。2/17 17:16
この記事は「共同通信」の配信記事です。
設楽ダムは、豊川流域の洪水被害の軽減や農業用水確保などを目的に、国が1978年に建設事業に着手したが、ダム本体の工事は未着工。総貯水量は9800万トンで、事業費は約2070億円。
という最後の一節は「産経新聞」電子版では省かれていますが、この一文にこそ「多目的ダム」の欺瞞が象徴的に記されています。
「治水」だけでは地域住民の「納得」を得られない、というか既に治水や発電が目的のダムは1970年代前半迄に殆ど造り尽くしてしまったので、「多目的」と称して上水道用水や農業用水、工業用水といった「利水」の“後付け”理論を掲げて登場してきたのが「多目的ダム」です。
でも、その論理の「破綻」は既に、川辺川ダムの中止決定で「確定」しているのですよ。現在よりも高い値段で農業用水を買う事となるダム建設はノーサンキュー、既に水は十分に足りている、と川辺川流域の農業者から中止を求められちゃったのが、川辺川ダム建設反対運動だったのですから。
ウィキペディア君も「多目的ダム」に関しては、ダム派の工作員が積極的に執筆を担当しているらしく、「地頭」を持ち合わせていないと思想洗脳被曝しちゃいますので、留意された方が宜しいでしょう。
文中に登場する大分県日田市=旧中津江村と熊本県小国町に跨がる筑後川水系津江川の下筌(しもうけ)ダムを巡る「蜂の巣城闘争」も、
反対闘争の室原知幸氏を主人公に「砦に拠る」を上梓した松下竜一氏の項を併せて通読しないと“美しき誤解”をするでしょう。
ダム建設が地元の合意がない限り着工されない傾向がより顕著となったため、寺内ダムのように極めて短期間で妥結される例は稀となり河川総合開発事業の長期化が顕在化した。八ッ場ダムや川辺川ダムのように本体着工が計画発表から50年経ってもなされていない例もある。地球温暖化による異常気象で毎年のように豪雨災害・渇水が頻発している現状で、事業進捗の迅速性と水源地域住民への合意形成をどのように折り合い付けるか、今後更に問われている。
一見、尤もらしい説明ですが、じゃあ、治水の為にダムが必要だ、と唱えながらもダム本体建設の着手すら儘ならなかった50年もの期間、治水はどうしていたのですか、って話でしょ(苦笑)。
洪水の危険性が高い流域だからダム建設が、というのは、早い話、動脈瘤が破裂寸前で緊急に大外科手術が不可避、ってな話でしょ。
ところが「医療崩壊」で執刀する医師がICU集中治療室へ到着しない。
じゃあ、その間、何をするかと言えば、(無論、動脈瘤の場合は具体的な対応は、以下とは異なるでしょうが)一般論として述べれば、心肺蘇生であったり点滴注射であったり、それは治水の場合で置き換えれば、護岸補強や遊水池、導水路、河床整理と呼ばれる土砂浚渫、流域の森林整備です。
浚渫は機械を用いれば1平米1万円で可能な公共事業。青息吐息な地域の土木建設業にとっての慈雨となります。
ところが、国土交通省の中で最も意識改革が遅れている河川局は、こうした河床掘削費用を単独計上せず、維持管理費の中に含めています。
維持管理費の中には現地の建設事務所の人件費等が含まれていますので、早い話が維持管理費の大半は公務員の人件費。結果、安価な費用で効果を発揮する浚渫は、一向に実施されずにいるのです。
2000年10月の知事就任直後、松本市内を流れる薄川(すすきがわ)の上流の美ヶ原の麓に大仏(おおぼとけ)ダムを造らないと松本駅周辺が水浸しになってしまう、と旧建設省から出向してきていた土木部長に“脅迫”されましたw。
だから、田中知事が中高校生の時分から大仏ダム計画を推進してきたのです、と彼は僕を説得しようとします。
ありゃま、小学4年から高校3年まで松本で暮らしたけど、そんな話は一度も耳にした事が無かったよ。
僕がB層だったのかw、県の広報が不十分だったのか、どっちかなぁ。(2005年の郵政解散前ですからB層の定義も誕生していない時分ですが)
じゃあ、百聞は一見に如かず。薄川の現状を確かめるべく市内の中心部の栄橋を訪れると、おりゃりゃ、橋脚の周囲に土砂が随分と堆積しています。
ねえねえ、浚渫は何時したの?と尋ねると、河床整理・河床掘削ですね、と業界用語を知らない僕にプレッシャーを掛けながら、でも、答えられないのです。
記録がないとは、う~む、長野五輪招致帳簿を「焼却」したと嘯き続ける山国だからかな、と行政歴・政治歴が皆無だった就任直後の僕が訝ると、実は何年間にも亘って浚渫を実施していなかったのです。
僕が知事時代、台風一過の初秋に県管理河川の土砂堆積状況を総チェックさせ、必要な浚渫箇所をリストアップさせ、10月の県議会に補正予算として提出していたのは、この経験に基づきます。
このように“特出し”で治水の為の浚渫を予算計上すると、目に見える形で、地元の業者のボーナスとなります。納税者の誰も文句を言わない補正予算です。土木建設業者からは喜ばれました。
だって、国営ダムも都道府県営ダムも、総事業費の7割、正確には72.5%を政府が負担するものの、総事業費の8割は中央のゼネコン=ゼネラルコントラクター=general contractorに支払われるのです。
ダムに限らず、巨大公共事業の実態です。
即ち、地元は3割負担。でも、孫請け、ひ孫請けを始めとする地元に落ちるのは2割。結局は中央に吸い取られてしまう“バキューム現象”だったのです。
話を戻すと、ダム建設が西洋医学の外科手術なら、浚渫や森林整備は東洋医学です。が、今回の設楽ダムの場合も、「小さく産んで大きく育てる」公共事業神話から解脱出来ない「政官業学報」の既得権者ペンタゴンが推進してきた訳です。
でもね、不思議に思いませんか?
「洪水被害の軽減」を目的に1978年=昭和53年に「建設事業に着手」しているんですよ。正確には同年に調査費が計上されて、建設に向けての調査が始まった訳ですが、それにしたって今年は2013年。35年前ですよ。
まさに治水や利水の為にダムが必要なのではなく、ダムという巨額のお金が動く「装置」が必要だという事。
先程の下筌ダムの解説に記された「ダム建設が地元の合意がない限り着工されない傾向がより顕著となったため、」「八ッ場ダムや川辺川ダムのように本体着工が計画発表から50年経ってもなされていない例も」。
「地球温暖化による異常気象で毎年のように豪雨災害・渇水が頻発している現状で、事業進捗の迅速性と水源地域住民への合意形成をどのように折り合い付けるか、今後更に問われている」。
という文章はまさに、ダム建設という「科学を信じて・技術を疑わず」な心智の書き手が、「地域住民が合意しないから、数十年も掛かってしまうんだ」と述べる一方で、その間に実は、浚渫を始めとする、直ぐに実施可能で地元経済を潤す有効な治水を怠っていたのです。
「学問=治水に王道なし」、「隗より始めよ」が浚渫にも拘らず。
しかも、共同通信の配信記事は、
豊川流域の洪水被害の軽減や農業用水確保などを目的に」と「正直に」報じています。
そうなのです。二百歩譲ってダム本体が竣工しても、「洪水被害の軽減」に留まるのです。だったら、発想を変え・選択を変えるべきでしょ。
それが「『脱ダム』宣言」
の哲学です。
「設楽ダムの建設中止を求める会」HPには
「水あまりの下での新規水資源開発」
「洪水対策として意味がないダム計画」の、
B層でも判る不可解さを説明していますので御一読を。
ガラス張り知事室でも、県最南端の根羽村でもお目に掛かった、建設中止を求める方々は、「流域の安全の為にも建設を進めて欲しい」と高言する設楽町長に、改めて呆れているでしょうねぇ。
更に、
「素案は、ダム建設の他、河道掘削や堤防整備等の代替案を比較。ダム建設のコストが最も低く、治水、利水の両面からもダムが最も有利とした」
って箇所もね、片腹痛い限りです。
ダム建設マンセーな河川局が、OBが天下ったコンサル=コンサルティング会社に試算させているのですから、「ダムが最も有利」となるに決まってます。
「原発建設の他、太陽光やオーランチオキトリウム等の新エネルギーを比較。原発建設のコストが最も低い」
ってのと一緒ね。
建設コストは低くても、「フクイチ」が立証するように、「破滅コスト」は無限大ですからね。
の冒頭で、
「数百億円を投じて建設されるコンクリートのダムは、看過(かんか)し得ぬ負荷を地球環境へと与えてしまう。更には何れ(いずれ)造り替えねばならず、その間に夥(おびただ)しい分量の堆砂(たいさ)を、此又(これまた)数十億円を用いて処理する事態も生じる」と看破した所以です。
ところで、地元の「東日新聞」に興味深い記事を見付けました。
地域の総意設楽ダム建設に異例応対太田国交相前向き発言2013/01/23
東三河5市でつくる豊川水系総合開発促進期成同盟会(会長=佐原光一豊橋市長)と設楽町は22日、国土交通省の太田昭宏大臣らを訪れ、設楽ダム建設の促進などを要望した。新城生まれ、豊橋育ちの大臣誕生の効果からか異例とも言える応対で、前向きな発言を...
実は田中康夫と相貌が似ている、と自身の支持者からも幾度となく言われた経験を有する、と僕に語ってくれた太田昭宏氏は、京都大学土木工学科の卒業。
以前に僕と語った際、そうなんだよなぁ、脱ダムの時代なんだよなぁ、と述懐されていたのを改めて想起。
僕の「師匠」に当たる京都大学名誉教授の今本博健氏も、嘗ては河川工学者としてダム建設を推進してきた碩学です。太田氏も在学中に今本教授に薫陶を受けた1人。
が、今や今本氏は
「ダムが国を滅ぼす」
の名著で知られます。
「なぜ私がダムに反対するのか」
を御覧下さい。
「脱ダム」を特集した
にも、
北海道の二風谷ダムを始めとする全国各地の「ダム現場」「ダム計画地」に出掛けた記事や映像を御覧頂けます。
願わくば、太田昭宏氏も「初志貫徹」頂きたいものですね。
う~む、又しても大層な分量になってしまいました。
「PM2.5」に関してツイートした昨日、知事時代に手掛けた県有施設全面禁煙の話は、明日のアップで、お許しを、ペコペコ。
時間的余裕の有る方は、以下のサイトも予習でどうぞ。
で、明日20日(水)16時からの無料生放送「あとは自分で考えなさい。」は
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