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"雨傘の女神"の90日戦争――10代オタク女子が戦った香港大規模デモ/「学民思潮」元スポークスマン・周庭さんインタビュー ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.348 ☆

2015/06/19 07:00 投稿

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"雨傘の女神"の90日戦争
――10代オタク女子が
戦った香港大規模デモ
「学民思潮」元スポークスマン
・周庭さんインタビュー
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2015.6.19 vol.348

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2014年9月28日から、約3カ月間にわたって世界を揺らし続けた、香港の普通選挙を求める大規模デモ「雨傘運動」。6月18日に、親北京派が推進していた選挙改革法案が立法会(香港の議会)で否決されたのも、雨傘運動の大きな成果の一つと言えるでしょう。
当時、その中心部にいたのが17歳の学生運動家・周庭(アグネス・チャウ)さんです。「学民の女神」と呼ばれ、学生によるデモ活動の中で大きな役割を担った中心メンバーの一人ですが、その素顔は日本のサブカルチャーを愛好する、ごく普通の女の子です。
雨傘運動の終結から約半年、来日した周庭さんをPLANETS編集部に招いて、葉錦龍さん、張彧暋さんの通訳で、学生運動を始めた経緯から、香港の社会運動の実情についてまで語ってもらいました。

 
◎聞き手:宇野常寛
◎構成:葉錦龍、張彧暋
◎写真:小野啓
 
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▲周庭さん
 
 
■ 女子中学生が社会運動家になるまで
 
――まずは自己紹介からお願いします。日本語でも広東語でも大丈夫ですよ(笑)。

周庭 日本語だと自信がないので広東語でいいですか?(笑)。私の名前は周庭(アグネス・チャウ)。1996年生まれの18歳です。香港の中学生が中心となって2011年に結成された学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として、雨傘運動に参加しました。担当した役職はスポークスマンですが、雨傘運動が始まってまもなく、強烈なプレシャーに晒されて、10月10日に辞退しました。その後も学民思潮の中心メンバーとしての活動は続けていて、オキュパイエリアの占拠にも参加しました。

――そもそも周庭さんが雨傘運動に参加したきっかけは何だったんですか?

周庭 もともと学民思潮のメンバーだったので、雨傘運動以前から社会運動には参加していました。最初に参加した社会運動は、2012年に行われた学生組織による普通選挙を求める運動です。

――その運動では、どのような活動を行ったのでしょうか?

周庭 大学生と専門学校生による社会運動組織「香港学生連盟」(HKFS)が中心となって、授業への出席を拒否する大規模なボイコットが行われました。そのときに私を含む学民思潮のメンバーの一部が、最終日のみボイコットに合流したんです。ボイコットが終結した27日夜、学民思潮と学生連盟は、3年前の国民教育反対運動で中心地となった政府官舎前広場に回帰する臨時決議を採択し、政府が設置したバリケードを突破して広場に突入しました。このとき警官隊と衝突となり、黃之鋒(ジョシュア・ ウォン)を始めとする運動のリーダーの多くが逮捕されました。この事件が、後の雨傘運動へと繋がっていくことになります。
 
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――その頃、周庭さんは中学生ですよね。国民教育反対運動に参加した動機は何だったんですか?

周庭 元々は政治に無関心な普通の中学生でしたが、Facebookで学民思潮の存在を知りました。当時、学民思潮では国民教育反対の機運が高まっていて、自分と同じ中学生が学生運動を引き起こせるのは凄い、自分もそういう人間になりたいと感じました。その後、香港政府のホームページを調べて初めて、国民教育とは何かについて真剣に考え始めました。国歌斉唱を強制されたり、「国旗を見るときに涙を流さなければならない」といった態度の押し付けがあったりして、これは教育ではなく洗脳ではないか。そういう思いから学民思潮への参加を決意しました。

――なるほど。香港には周庭さんのような10代の学生が社会運動に参加する風潮は、以前からあったんですか?

周庭 学生運動は昔からありましたが、基本的に参加するのは大学生に限られていました。1989年の天安門事件も当時の大学生が中心ですし、90年代、00年代と続く学生運動の中で、中学生が運動に参加した例もあるにはありますが、規模は小さかった。中学生によって大規模な社会運動が引き起された最初の例は、やはり国民教育反対運動ですね。中学生は知識や経験では大学生にかないませんが、公民の一員として運動に参加する権利と責任がある、というの学民思潮の中心的な思想です。

――その運動の中で、周庭さんが学民思潮のスポークスマンという重要な役割を担うようになったのは、どういうきっかけからですか?

周庭 私がスポークスマンに就いたのは、国民教育反対運動が終わってからのことです。運動が一段落した後に、問題の本質は社会制度にあることに気付いた私たちは、今度は社会制度の民主化を求める主張を始めました。その中で、クレーン車から巨大な横断幕を吊り下げる運動があったのですが、リーダーの黃之鋒ともう一人が、クレーンに上がらなければなかったんですね。そのとき、ほかのメンバーから「周さん、やってみたら?」と推されて上がったことで注目されて。その直後のメディアの囲み取材が、スポークスマンとしての最初の仕事になりました。当時はあまりに突然の出来事で、自分がどういう状況にあるのか理解できず、初仕事の内容は散々でした。ただ、周囲からは「成長の見込みがある」ということで、スポークスマンを続けるように薦められたので、自分としても挑戦してみようと思いました。
 
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■ 路上占拠中の息抜きは日本のアニメ
 
――雨傘運動では3カ月近くも香港都市部の路上を占拠していたわけですが、その間、どういう生活を送っていたんですか?

周庭 私はアドミラルティの占拠には最初期から参加していて、週に一度は着替えを取りに帰宅して家族と食事をしますが、それ以外は基本的にアドミラルティで過ごしていました。毎日3回のミーティングがあり、そこで今後の計画などを話し合って、後は自分のテントの近くで携帯電話をいじったり、ぶらぶらとリラックスしてました。日本のアニメやバラエティもそこで観てました。
 

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