■オープニング・トーク宇野 刻は午後11時30分を回りました。皆さんこんばんは、宇野常寛です。はぁ……みなさん、ここで一つ悲しい報告があります。私、宇野常寛は、本日11月17日をもちまして36歳になってしまいました。いやー、誕生日だからといって特に変わったことはしませんでしたね。単に、また一つ、言い訳の出来ない年に近づいていったっていう感じですね。30代後半はもう青年とは呼ばれないわけですよ。現に、僕は今日もずっと仕事していましたからね。誕生日にいつも行っているレストランがあるんですけど、今日は月曜日で、そのお店も休みだったんですよ。なので、唯一考えていた誕生日らしいこともせずに、黙々と夜まで仕事をしていました。
で、先週と同じように、今日も僕は高田馬場から六本木まで1時間半くらいかけて歩いてきたんですけど、J-WAVEのスタジオに入ったら、スタッフの机にでかいものが置いてあるんですよ。「うわっ! これもしかしてもしかする!?」みたいな感じで、2個置いてあって……はい、1個はスタッフからのプレゼントです! 本当にありがとうございます! 僕が常に黒いジャージを着ているから、新しいジャージを買ってあげよう的な運動がスタッフに起こったらしくて、僕がたまに履いている靴の色と合わせることを意識してくれたと思うんですけど、灰色に蛍光グリーンのラインが入った、アディダスのジャージをもらいました。本当にありがとうございます! 鈴木D、日浦P、トニーさん、本当にありがとう! ということで、スタッフからプレゼントもらいましたよ。あと、もう1個でっかいのがあるなと思って開けてみたら、なんとリスナーさんからお花を頂きました! メッセージを読みますね。これは、ラジオネーム、宇野ZERO改め宇野HANG補完委員会さんです。
「こんばんは。そしてお誕生日おめでとうございます! また、宇野さんのトークが聞ける時が来るなんて嬉しすぎます。これからも宇野さんらしいラジオを期待していります」
これ、僕が前にやっていたラジオの熱心なリスナーさんのグループが送ってくれたみたいです、すごく立派な花ですね。本当にありがとうございます! こんなに誕生日祝ってもらったことって、久しく無いですね。たしか、2011年の震災の前くらいに、ニコニコ生放送の大きい番組の出演が誕生日とかぶっていて、その番組終了後にサプライズで祝ってもらったとき以来ですね。震災後初って感じですよ。正確に言うと、その間に一回、編集仲間みたいな人たちがサプライズで、僕の誕生日を高田馬場のコットンクラブというカフェで祝うっていう企画が動いていたらしいんですけど、そのときは、僕が普通に風邪をひいて「ごめん、今日風邪ひいて飲み会行けない」ってLINEを一言入れて終わらせてしまったというね、本当に駄目なエピソードがあるんですけどね(笑)。はい、本当に、久しぶりに嬉しいです! 今日はひたすら地味なフリー文筆業者として36歳最初の一日を過ごした僕ですが、ここ六本木ヒルズ33階のJ-WAVEから、残り30分の誕生日を、自主的に誕生日っぽく盛り上げていきたいと思います。それではJ-WAVE「THE HANGOUT」今夜もスタートです。
J-WAVE深夜のたまり場「THE HANGOUT」月曜担当ナビゲーター、宇野常寛です。36歳はもう中年ですからね。言葉の定義上……僕がドラマとか小説の評論を書いていて、36歳の登場人物が出てきたとしても、そいつを「青年」とは表現しませんからね。36歳って、あのシャア・アズナブルが逆襲した年よりも2歳も上なんですよ。あいつ、34歳で反乱を起こして、アクシズを落とそうとして失敗して死んでいるんでね(『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』)。もうその年よりも2歳上になっちゃったわけですからね。
はい、それでは僕は公共の電波を使って、36歳の抱負を発表したいと思います。まずひとつ! 体重を50キロ台に戻します。昨日、落合陽一くんっていう僕が最近プッシュしている若手アーティストと日本橋でトークイベントをやったんです。イベント終わりで友人の結婚式にも行って、その日は、すごく写真を撮られた一日だったんですよ。それで、今朝Facebookを見ると、昨日の写真がバーっと公開されているんです。それを見た時に、「誰だこいつは……?」って思うわけですよ。「顔、丸っ! お前アンパンマンかよ!」みたいな。「僕の顔、おたべかよ……あんこ詰まってんのかよ……」みたいな感じなんですよ。これはね、ヤバいなと思って。僕、一時期は58キロだったんですよ。身長が181cmくらいなので、結構やせ形だったんですよ。それが2012年くらいのことだから、3年くらいで7、8キロ太っちゃっているんです。
みなさん、7、8キロの肉を想像してみて下さい。あなたがスーパーのお肉コーナーに行く。そして、ショーケースの中に8キロの肉を発見する。さぁ、その体積はどれくらいでしょう。ゾッとするでしょ? 僕はそれをどう削ぎ落とそうかと思って、僕は最近本当に、1日7kmくらい歩こうと思っています。今の僕にできことは二つですね。目の前にあるものを食べないこと。そして、1日7km歩くことですね。僕は高田馬場に住んでいるので、山手線の内側の用事なら、ほぼ対角線上にある東京駅までで7、8kmなんですよ。だから、山手線の中を歩くってルールにしようかなって思っていますね。
はい、宇野常寛36歳の抱負、二つめは、一分一秒を無駄にしない。36歳になると、自分の人生の残り時間とかを考えちゃいますね。自分が絶対やりたいことを成し遂げるためにも、時間を無駄にしちゃいけないなと思って。なので、夜寝る前に、意味もなくWikipediaで「マリー・アントワネット」とか「クリミア戦争」とかについて調べて、だらだら3時間とかつぶすのはやめようと思いました。あと、「あんかけ焼きそば」ってどこで発祥したんだろう? とか、時々気になって調べるんですよね。「レッサーパンダ」って具体的には何の仲間なのか? とか。ちょっと寝付けないときにWikipediaと見ると、気がついたら2、3時間経っているんですよ。あの時間をもっとクリエイティブにしようと思っています。
はい、これで最後、三つめの抱負は、楽しむことです。やはり、人間楽しそうにしないと能力を発揮できないんですよね。ほら、『ダークナイト』のジョーカーがなぜ強いかというと、あいつが楽しんでいるからじゃないですか。真面目に正義を実行しようと思っているバットマンとかトゥーフェイスとかよりもジョーカーの方が強いんですよね。あいつは悪さをすること自体が楽しくて、手段と目的がイコールだからあんなに能力を発揮できるんですよ。僕らだって、ゲームにはまっている時とかそうじゃないですか。人間、手段と目的がイコールの時に、いちばん能力が発揮されるので、僕は楽しいことをどんどん仕事にしていこうと思うし、自分が楽しいと思えないことはなるべく断ろうって思いました。なので、僕は人生、仕事を楽しむ。これが一番大事な気がしますね。以上、これが僕の、36歳の抱負です。
はい! とか言いつつ、毎週YouTube Liveの中継でだんだん僕が膨らんでいったら、僕は物書き、言論人としての信頼を失っていくんでしょうね。まぁ、そんなことも思いつつ(笑)、この番組は夜更かし族のみなさんのたまり場です! ツッコミや質問も大歓迎。皆さんの積極的な番組参加をお待ちしております。ハッシュタグは#hang813です。メールの方はこの番組のHPのメッセージボタンから送って下さい。YouTube Liveではスタジオの様子を同時生配信中です。そして、毎週月曜日は番組終了後、ニコニコ生放送のPLANETSチャンネルで延長戦をやります。番組内で語りきれなかったことなど、さらにディープに語ります。
と、いうことで、宇野常寛が今夜もナビゲートJ-WAVE「THE HANGOUT」
今夜の1曲目は、初心に戻るという意味を込めて、僕の原点とも言えるこの1曲をお聴きください。石原慎一で「仮面ライダーAGITO」。
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宇野 「目覚めろ、その魂」はい、お届けしましたのは、石原慎一で「仮面ライダーAGITO」でした。
はい、あらためましてこんばんは。月曜担当の宇野常寛です。このあと11時55分頃からは、南沢奈央ちゃんのNIPPON SEKIJUJISHA "GAKUKEN" The Reason Whyのお時間です。そしてJ-WAVE「THE HANGOUT」各曜日のナビゲーターが毎週共通のテーマを語る、シェア・ザ・ミッションのコーナー。今週は睡眠について語ります。そして、アナーキー・ミュージックシェアのコーナーでは、J-WAVEの他の番組では絶対かからないであろうアニメソング、特撮ソング、アイドルソング、映画やドラマの主題歌や劇伴などなど、アナーキーな1曲をリスナーの皆さんのセレクトでお届けしちゃいましょうというコーナーです。メールの方、まだまだ受け付けていります。J-WAVE「ワコーズ」のメンバーが様々なベンチャー企業をリポートする「ワーカーズ・ディライト」のコーナーもお楽しみに。宇野常寛が深夜1時まで生放送でお届けします、深夜のたまり場「THE HANGOUT」ここで一旦お知らせです。
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■フリートーク
宇野 J-WAVE深夜のたまり場「THE HANGOUT」六本木ヒルズ33階、J-WAVE、Bスタジオから生放送。月曜日は宇野常寛がお送りします。メールたくさん頂いております。誕生日メッセージです、本当にありがとうございます。ラジオネーム、やーのさんです。
「宇野さんこんばんは。そしてお誕生日おめでとうございます。いつも人生の先輩として、ラジオのトークを聞かせて頂いております。誕生日と言えば、僕は今年で30歳になったのですが」この人30歳で、36歳の人を人生の先輩ってちょっと大げさですよね。でもね、悪い気はしないです(笑)。
「10代の頃に思っていた30歳に比べて、大人になれていないような。でも、体は老けていないような。良くも悪くも若い気がしています。宇野さんは若い時の自分から見て、どんな感じでしょうか」
うーん、そうだなぁ……時間が経つのが思ったよりも早いですね。これは死んでもやらなきゃいけないなとか、やりたいとか、この球は絶対に打ち返さなきゃいけないってやっているうちに、2年も3年も経って、そのことが心地良い緊張感にもなっているし、プレッシャーにもなっているって感じですね。ただ、やーのさんが言っている「自分が思ったほど大人になっていないな」って感覚は、誰でも思っているものだと思いますよ。というのも、大人になるとか成熟するっていうのは、僕は幻想だと思っていて、自分は年をとったらこんな境地にたどり着けるんじゃないかってぼんやりと浮かべているだけだと思うんですよね。そして、いつの時代も自分は大人になりきれていないというか、昔はちゃんとした大人がいたけど今はいないんだって幻想を追いかけながら、人は世代を重ねていくってことなんじゃないかと思うんです。
みんな、40代や50代になると、最近の若者は未成熟だって話をするんですよねでも、そいつらが20代や30代のときは、自分たちは大人になれていないんじゃないかって話をするんですよ。ここから導きだされる結論は一つで、大人っていう概念自体が、幻想なんじゃないかということですね。僕はそう思っています。どちらかというと、年をとるとか大人になるってことは、36歳の僕の考えですが、何かを失っていく過程で見た方がいいですね。何か積み上げて立派になるんじゃなくて、だんだん人生の残り時間が少なくなっていって、これからできることよりも、できなかったことや、自分がやらなかったことの方が重くなってくることを、どう受け入れていくかという過程として捉えた方がいいんじゃないかなと思います。次のメールいきます、ラジオネーム惰弱野郎さん。
「宇野さんは先日、朝ドラへの出演を人生の目標の一つに加えたっておっしゃっていましたが……」これあれですね、『花子とアン』に茂木健一郎さんが出た時に、俺も出たいなってことをツイッターに書いたんですけど、そのことですよね。みんなよく覚えてるなあ(笑)。
「仮に大河ドラマに出演するとしたら、どんな役がいいでしょうか。『平清盛』でいうと、藤原信西の弟子で、後に清盛と決裂し、怒濤の清盛キックでボッコボコにされながらも罵声を浴びせ続け、最後は極刑に処された西行法師みたいな役をもし宇野さんが演じたら、いい意味でヤバいことになるんじゃないかなって思っております」
これ嬉しいですね。なぜかというと僕は、西行演じた加藤虎ノ介さんの大ファンだからです。朝ドラの『ちりとてちん』にイケメン落語四兄弟が出てくるんですけど、加藤さんはそのなかで徒然亭四草っていう、ちょっとニヒルな感じの、何かあるたんびに「きつねうどんかけますか?」って口癖の、九官鳥だけを自分の友にしている孤独なイケメンの、すごく味のあるキャラクターをやっていて、僕は大好きだったんです。『ちりとてちん』が完結して2、3年経ってから、「PLANETS」っていう自分の雑誌で「ちりとてちん再放送記念特集」って超強引な特集を組んで、彼を取材してグラビアまで載っけていますからね。本当に嬉しいです。36歳の宇野は、加藤虎ノ介力を身につけて、西行法師を演じられるだけのオーラを手に入れますよ。本当に、『平清盛』で西行を演じる加藤虎ノ介さんが、松ケンにボッコボコに蹴られていていたんですけど、その時にカツラが外れないように、自分の頭を剃っていたんですよ。このプロフェッショナルの意識、すばらしいですね。僕はこうありたいです。本当に誕生日にラジオやっていてよかったなあ。これは本当に嬉しいです、あと1枚くらい読みましょう、ラジオネームおしゃべりオムライスさんです。
「今日初めてメール投稿させて頂きます。私はいま大学生で、卒論に追われているのですが、宇野さんの『リトル・ピープルの時代』を読ませていただいてから、父性をテーマにした作品に興味を持ちました。とりわけアメリカ映画作品の父性の編成に興味を持ち調べている最中です」これ、普通に僕も興味ありますね。調べたら教えてほしいです。
「前置きが長くなってしまいましたが、父性が喪失した、もしくはしているというテーマがあたり前に描かれていますが、2014年の今、これからハリウッド作品や日本のポップカルチャーで描かれるべき父性はどのような形だとお考えでしょうか?」
これ、超大きいテーマで、これを語りはじめると10分くらいになってしまうので、超さくっと言いますね。それは、父親になること、父親であること、家長であることを、自分の存在意義に結びつけない。そういう父性ですね。お父さんになることとかお母さんになることを、あまり特別に感じないっていうことが、僕の考えです。人間は、自分は家長なのだから、父親なのだから、責任ある振る舞いをしなければと思うことによって、むしろ子供や奥さんを自分のプライドを保つための所有物にしてしまう。自分の人生を絶対に否定しないための、自分の人生に意味を与えるための、道具のように扱っちゃうことが僕はすごく多いと思うんですよね。なので、家族を愛するとか守るっていうことと、自分が存在する意味っていうのを、ある程度切り離した方がいいと思う。少なくともそこに100パーセント預けてしまうのは、僕はよくないなとずっと考えていて、なので、子供を産んで再生産していくんだけど、その一方で自分の存在意義はあまり家庭に置いていないっていう、そういった父性を考えることは出来ないかなって僕はずっと思っています。
はい、この番組はあなたの参加をお待ちしております。
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