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國分功一郎「帰ってきた『哲学の先生と人生の話をしよう』」 第4回テーマ:「恋人関係について」 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.125 ☆

2014/07/31 07:00 投稿

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國分功一郎「帰ってきた『哲学の先生と人生の話をしよう』」
第4回テーマ:「恋人関係について」
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2014.7.31 vol.125

國分功一郎の人生相談「哲学の先生と人生の話をしよう」最新記事が読めるのはPLANETSのメルマガ「ほぼ日刊惑星開発委員会」だけ! 過去記事はこちらのリンクから。

一昨年よりこのメルマガで連載され大人気コンテンツとなり、書籍化もされた哲学者・國分功一郎による人生相談シリーズ『哲学の先生と人生の話をしよう』。連載再開第4回となる今回のテーマは「恋人関係について」です。
『哲学の先生と人生の話をしよう』第一期でも反響の大きかったこのテーマ。「ルールを決める」「フリをする」、「アニメキャラに恋している自分と向き合う」ーー國分先生ならではの切り口で、恋人関係に関するみなさんの悩みに答えていきます。

【1】mさん 45歳 男性 埼玉 会社員
 
恋人とはどういう関係なのでしょう。
僕は一般的な恋人関係なつきあいかたも有りましたが
彼女にもまた違うパートナーが居ることもしばしばで
彼氏とも良好な関係でいてほしいと思っていました。
恋人で無くなっても友人関係で時々デートする人もいます。

仲の良い友達と、恋人の違いがよくわかりません。
セックスの有無というのもザックリしすぎてイマイチしっくり来ません。

何をもって友人と親友と恋人を分けるのか、どのくらいの関係の密さで分かつのでしょう。
よろしくおねがいします。
 
 
【2】ぽてりんさん 29歳 男性 東京都 会社員
 
國分先生

 いつも楽しく拝見させていただいております。
私は来年30になる男ですが、今まで女性と付き合ったことがありません。

今まで一目惚れした経験はあるのですが、いざ行動に移る前に以下のように考えてしまいます。

「人間は遺伝子に抗うことのできる唯一の生物だ。彼女への気持ちも、きっと私の中の遺伝子が子孫を残したいがために、生じさせているに違いない。この気持が遺伝子由来か、私自身から発しているものか精査しなければいけない。」

などと考えているうちに、時間だけが過ぎ、現在に至ります。

「恋愛関係について」とは少し議題が異なるかもしれませんが、恋愛状態において行動に至る契機、遺伝子ではなく、自分の意志で行動を起こしているという根拠、その行動が自分の意志から由来するものだと確実に分かる方法なないでしょうか。

話が抽象的で申し訳ありません。ご意見をいただけると幸いです。
 
 
【3】シュンさん 22歳 男性 北海道 大学生
 
國分先生、初めまして。シュンと申します。
僕は現在22歳、大学4年生で、付き合って9ヶ月になる3つ年下の彼女がいます。今日相談したいのは、彼女との関係、および僕の不可解な精神構造のことについてです。

まず、僕が何を問題視しているかと言いますと、僕は心の底から他人を求めている一方で、心の底から他人を拒否していることです。僕はもともと寂しがりやで、常に他人が近くにいて欲しいと思っています。その一方、一定以上仲良くなろうとすると、なぜか拒否してしまうらしいのです。友達からは「なんか壁がある」と何度も言われたことがあります。

前は友達との関係だったので、それほど悩んでもいなかったのですが、彼女と付き合い始めてから、深い関係になろうとしてもなれないことに愕然としました。彼女が本当にいて欲しいところ、心の深い部分にいないのです。精神的にもっと近くにいて欲しいのになぜかそれが叶わないのです。

彼女の方に問題があるではないかと思われるかもしれませんが、彼女は僕を受け入れようとしてくれていますし、彼女には一切問題が見当たりません。そのことを彼女にも相談しましたが、「どうしたらいいのか分からないけど、できることがあるなら協力する」とのことでした。

ちなみに原因を(國分先生オススメの)二村ヒトシさんの「心の穴」理論で考えてみたのですが、他人を拒否するほどの傷は思い当たりませんでした。単純に傷つくのが怖いとかそういうことなんでしょうか・・・。

友達はまだしも、彼女と深いつながりを感じられないのは非常にツライです。何かアドバイスがあれば教えてください。よろしくお願いします。
 
 
■【4】イタイさん 20歳 女性 神奈川 学生
 
はじめまして。私はアニメが好きなオタク女子です。

突然ですが、私はとあるアニメのキャラクターと結婚したいと考えています。そのアニメは去年の夏、放送を終えましたが、その気持ちは収まっていません。

彼の誕生日には愛妻弁当(という設定のもの)をつくったり、自分の誕生日に購入したデジタル一眼には彼の名前をつけました。彼との結婚生活を妄想するのも日課になり、その内容をTwitterのbotで垂れ流しています。
そんななか、今年の夏にそのアニメの二期が始まることになりました。これは二期の放送前に書いていますが、二期に対して不安でしかありません。恐らくそれは、この一年の間に私が愛した彼と、二期のアニメに登場する彼は違う存在のような気がしてならないからだと思われます。

彼に出会ってからは、彼氏がいないことになんの不安も抱えなくなっていました。私にとって彼は擬似彼氏的存在になっており、心の支えなのです。しかし、二期が始まることでその支えはとても不安定なものとなってきました。

もし、この支えがなくなってしまったら私はどうすればいいのでしょうか。恋愛に対しての思考を全て彼に捧げてしまっているため、これから先自分がどうなってしまうか分かりません。私は彼にどう接していけば良いのでしょうか
何かアドバイスがいただけると嬉しく思います。何卒、よろしくお願いいたします。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
 皆さんこんにちは。暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
 今回は「恋人関係について」というテーマで相談を募集しました。条件として、「結婚あるいは結婚に相当する関係の問題は除く」としておきました。
 このテーマを選んだのは、最近、学生に対して、「恋人関係は重要である。恋人関係は人生を大きく左右する」とお話しする機会が多くあったからです。
 結婚は公的な関係ですから、周囲がいろいろ言ってくれることもあるんですね。まぁ、口出ししやすい。
 けれども、いわゆる「付き合ってる」関係だと、全くもって私的な関係ですから、周囲はいろいろ言いにくい。しかし、それにもかかわらず恋人関係は生活に大きな影響を与えます。人生を左右することも稀ではありません。
 最近、恋人間のDVがきちんと問題として取り上げられるようになりました。とてもよいことだと思います。恋人同士であろうと、暴力が許されないのは当たり前です。
 でも、問題はそうした物理的な暴力だけではありません。言葉の暴力はもちろんですが、むしろ、そうしたDV的な関係の背景にある「心の支配」こそが最大の問題です。
 相手に心が支配されていると、ただ一方的に尽くすだけになってしまいます。周りから見ると恋人から搾取されているのは見え見えなのに、自分ではそれに気づかない。それどころか、「自分が頑張らなければだめなのだ」と自分に言い聞かせたりする。しかも、心のどこかで、搾取されているが見え見えであることも分かっているのでしょう、そうした関係を他人に対して隠すこともあります。
 二村ヒトシさんがこんなことを書いています。
 
《「与えることが愛情だ」と思い込んで彼に尽くしまくった結果、ひどく傷ついている女性が、あなたの周りにもいませんか?/恋人を甘やかして、彼のムチャクチャな要求に応えつづけたり、侮辱されたのに彼が謝らなくても、許してしまったり。無理をして金品を貢いでいたり、肉体的・精神的な暴力を受け続けていたり。/それでも「いつか彼が変わってくれるのを信じている。彼を『まとも』に変えてあげられるのは私の愛だけ」と思ってしまう。/そういう女性は、自分が傷つけられることでしか「恋愛しているという実感」を得られなくなってしまっているのかもしれません。あなたも、自分がガマンすることが「彼を愛することだ」と勘違いしたり「彼を変えてあげられるのは、私だけ」と必死になった経験はないでしょうか。/でも、それは「相手を愛している」ことには、なりません》(『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』、p.31-32)。
 
 二村さんは「自分自身を受け入れていない人」がこうなる可能性が高いことを指摘しています。自分をきちんと肯定できていない人は、相手をきちんと肯定できないのでしょう。そして、きちんと自分を肯定できていない人を嗅ぎつける人間というのが世の中にはいて、近づいて来てその人間の心を支配するのです。
 二村さんの本は基本的に女性に向けて書かれているので、自分をきちんと肯定できていない女性のことが主に書かれているわけですが、こうしたことは男性にももちろん起こります。つまり、恋人関係において、男性が女性に心を支配される場合もあります。
 この「心の支配」の細かな分析はここではやりません。問題はそれに対処する方法です。僕はこれはそんなに難しくないと思います。周囲の人がきちんとそのことを指摘してあげればいいのです。
 「心の支配」とは何か?などと難しく考える必要はありません。見ていればすぐに分かるからです。それが見て取れたら、遠慮などしないで「お前さ、あいつとの付き合い方、ちょっとおかしいんじゃない?」とか言ってあげるのです。
 もしかしたら、そういうことを指摘されると怒り出す人がいるかもしれません。怒り出したら、その指摘が正しいということです。人は正しいことを指摘されると怒りだすのです。興奮が静まったら、そのことを言ってあげればいい。熱心にそれを否定し始める場合も同様ですね。
 ただ、分かってはいるのだが、なかなかその問題について切り出せないとか、別れられないという場合が一番面倒ですね。この場合は相当仲がよい友人でないと、根気よく話を続けることはできないかもしれません。それでも、周囲から一言でも指摘されることには意味があります。


 僕らは学校でいろいろなことを学びます。勉学はもちろんですが、それだけではない。クラスでの振る舞い方、対人関係なども学校で学んでいます。明らかに学校はそうした目的も考慮した上で設計されています。なぜならば、社会で生きていく上で、文章が読めたり、計算ができたりするのと同じように、対人関係が重要であるからです。学校制度はそのことを踏まえて作られているのです。
 ところが、学校は恋愛関係の学習をその目的から除外しています。学校には恋愛関係を教える機能はありません。そして、学校以外のところにも、恋愛関係について教えてくれる場はありません。不思議です。人間は生きていたらどうしたって恋愛を経験します。ところがそれについて教えてくれる場はないのです。
 僕は学校が恋愛を教えるべきだなどと言いたいのではありません(それは大変恐ろしいことです!)。学校が対人関係をも学ぶ場として機能していることの意味を考えれば、どこかで恋愛についても学べるようになっていて然るべきではないかと言いたいのです。
 二村さんの本などは大変その意味で有益です。恋愛について考える上で参考になる本を、もう一冊、紹介します。こちらは女性が書いたものです。綾屋紗月さんの『前略、離婚を決めました』(理論社、2009年)という本です。綾屋さんはご自身が幼い頃から抱えていた生きづらさから話を始めています。僕は、綾屋さんが、後に結婚し、そして離婚することになる彼氏との関係の中で感じていた楽しさとつらさの描写が心に刺さりました。
 また、これはとても勇気が要ることだったのではないかと思いますが、綾屋さんはセックスのことについてもお書きになっています。詳しくは説明しませんが、第五章「エッチと暴力」の「望まないセックスになだれこむ」という節はとても深く印象に残りました。 

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