【現代ゲーム全史】
「ロマサガ」「メガテン」「オウガバトル」
――オルタナティブを模索する準大作シリーズ群
「ロマサガ」「メガテン」「オウガバトル」
――オルタナティブを模索する準大作シリーズ群
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2014.7.24 vol.120
今日のほぼ惑は、大好評の中川大地さんによるゲーム史連載。今回は「ロマサガ」「メガテン」「オウガバトル」などの準大作RPG、および18禁からの「恋愛ゲーム」の発生について解説します。
■オルタナティブを模索する準大作シリーズの爛熟
『ドラクエ』系の流れを汲むチュンソフトが、「王道RPG」との差別化として物語を読ませる「シナリオ」とゲームとして遊ばせる「システム」の分化・特化に向かっていったのに対し、看板に『FF』を擁するスクウェア系の開発者たちからは、あくまでシナリオとシステムの高度な複合形態としてのRPGの総合性を徹底的に追求する中で、二大RPGとは異なる体験性を提供していこうとする数々のアプローチが見られた。
その最たる存在が、河津秋敏らのチームが1992年にスーファミ向けに送り出した『ロマンシング サ・ガ』シリーズであろう。ゲームボーイ用RPG『魔界塔士Sa・Ga』(1989年)に始まる『サ・ガ』シリーズの第4作目として登場した本作は、正解となるストーリー進行の手順を固定せず、プレイヤーがラスボス攻略までのルートを幅広い行動自由度の中から任意に歩んでいける「フリーシナリオ」制を最大の特徴としていた。
システム面でも、一般的なレベル制を排して、戦闘経験値の蓄積と各パラメーターの上昇をダイレクトに結びつけたり、使用する武器ごとの熟練度を設けたりするなど、より細かい能力強化システムを導入。展開の自由度とともに、RPGが英雄譚の構造を模するために大雑把に「レベル」という概念で不連続化していた約束事を見直し、よりシームレスな成長の在り方にすることで、プレイの体験性をより「現実」に近づけようという哲学で設計されていたのが、『ロマサガ』だったわけだ。
自由度や現実性を導入しようとするシステム自体は、主に欧米のパソコンRPGで草創期から工夫されていたものだったが、主人公=プレイヤーという素朴な図式が貫かれ、物語自体の描写演出は無いに等しかった草創期RPGとは違って、美麗なイラストとデフォルトネームが付いた主人公キャラクター陣から一人を選んで「他人の物語」に寄り添っていくという構図は、あくまで『FF』以来のものだ。その意味で、チュンソフトの「サウンドノベル」シリーズと同じく、プレイヤーにはインタラクティブな操作を通じて多彩に分岐していく物語を享受者する視座も与えられており、行動の主体者と鑑賞者のあわいを衝く様々な中間形態が、この時期の物語ゲームでは積極的に追求されていたと言える。
このように『ドラクエ』『FF』の二大「国民的」シリーズとの差別化を目指す対抗シリーズでは、プレイの自由度や複雑性を高める実験的な新機軸が模索され、相対的にコアなマニア層向けの作風にならざるをえなかった。そのため、ゲームシステム上の高度化にともない、必然的にシナリオや題材意匠の面でも、勧善懲悪式の単純な英雄物語を脱するようなハイターゲット向けの作品性に向かってゆく。
そうした独自の方向性の追求の果てに、「第三勢力」とも呼べる規模で特に大きな系譜を築いたのが、アトラスが92年にリリースした『真・女神転生』シリーズであろう。『ロマサガ』が先行する「サガ」シリーズのリニューアル作だったように、『真・女神転生』もファミコン時代の『デジタル・デビル物語 女神転生』(ナムコ 1987年)を皮切りに継続していた『女神転生』シリーズを衣替えするタイトルとして登場した。
もともと『メガテン』シリーズは、描画スペックの限界からRPGといえば「剣と魔法」のファンタジーと相場が決まっていた当時から、現代の東京などを舞台にしたサイバー伝奇ロマン風の世界観を採用し、永井豪の漫画『デビルマン』のように悪魔が人間の世界に介入していくというモチーフで異彩を放つ存在だった。とりわけシステム的には、敵モンスターを味方パーティに引き入れられる「仲魔」の要素や、仲魔同士を掛けあわせて強力化する「悪魔合体」といった仕組みをシリーズのアイデンティティとして確立し、『ドラクエV』のモンスター捕獲・育成システムをはじめ他のRPGにも広範な影響を与えていた。
これらの基本システムを継承発展させつつ、スーファミの表現力によってイラストレーターの金子一馬によるスタイリッシュなキャラクターデザインへの漸近度や、同時代の吉祥寺というリアリスティックな舞台の再現度が向上したことで、『真』に至って『メガテン』シリーズのポテンシャルが従来以上の規模で受け入れられることになる。
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