先日、海洋堂のアクションフィギュアシリーズ〈特撮リボルテック〉の「モスラ」を購入した。ため息の出るような、素晴らしい一品だった。まるで劇中の着ぐるみをそのまま縮小したかのような細やかな造形、大量生産品とは思えない完璧な彩色、そして半壊した東京タワーなど劇中の名シーンを再現する付録の小道具の数々……。ファンの心理を知り尽くした、まさに至れり尽くせりの商品だった。これを数千円で購入できるなんて、いい世の中になったものだ。妻は毎月何体もこの手のフィギュアを購入する私に、すっかり呆れかえっている。だが、私はこのフィギュア収集が原因で離婚になっても後悔はしないだろう。7月末に発売になった私の新著の表紙は、海洋堂がかつて発売していた「仮面ライダー」のガレージキットの写真が飾っている。おそらく、これが模型を撮影したものだとほとんどの人が気付かないだろう。私にとってフィギュアは、特に海洋堂のそれは、少年の日に出会った絶対的な憧れの対象でありそして、「美」そのものなのだから。
私が海洋堂の存在を知ったのは中学生のころだ。当時「機動戦士ガンダム」シリーズのプラモデル作りに夢中になっていた私は、その情報収集のために買い求めた模型情報誌〈ホビージャパン〉の誌上で、海洋堂と「ガレージキット」の存在を知った。ガレージキット――それは、当時のプラモデルの製造技術では再現できない造形を実現すべくオタクたちが産み出した情熱の結晶だった。大量生産を前提にした金型製作では、どうしてもアニメや特撮に登場するキャラクターをイメージ通りに再現することはできなかった。ディティールでもプロポーションでも、妥協が必要になる。そこで登場したのが「ガレージキット」だった。
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