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第9回  カールじいさん(メーカーなど不明)

▼今回紹介するのはピクサーのアニメ映画『カールじいさんの空飛ぶ家』からカール爺さんのフィギュアです。僕はこのアニメがピクサーの中でもいちばん好きで、思わずフィギュアまで買ってしまいました。

▼あんまり知られていませんけど、僕はピクサー作品には結構詳しくて、何度かまとまった文章も書いています。最近忘れられがちですけど、僕は何の評論家かというと創作物に登場する性的イメージ(と社会との関係)についての分析を専門というか、それを得意とする評論家です。だからヒーローやロボットやアイドルについてよく考えている。そして『ゼロ年代の想像力』『リトル・ピープルの時代』『母性のディストピア』と主だった仕事(というか主著)は全部この問題がテーマになっている。そしてピクサー作品はこうしたテーマを考える上で、とても面白い素材です。

▼この映画、その名の通り老人男性が主人公なんですが、ファミリー向けアニメでこれは珍しい。そしてアニメにとって「老人」をどう描くか、というのはとても深い問題です。だって考えてみてください。高橋留美子がたとえばおじいちゃんやおばあちゃんを出すと、途端にマスコットキャラクターになってしまうでしょう? あれは要するに「人間」じゃなくなってしまうわけです。彼女の世界観、つまり成熟もなければ老いもないるーみっくわーるどの中で人間は「歳を取れない」ことを示している。

▼じゃあピクサーではどうか。ピクサーと言うのは僕に言わせればディズニー本家が目を背けがちだった「歳を取るキャラクター」というものに挑戦している人たちです。