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本日のメルマガは、舞踏家・最上和子さんの特別寄稿をお届けします。
数々の公演やワークショップを通じて「身体」の探求と模索を行う最上さん。今回は稽古場で「身体」の内側と向き合うことで得た、「自意識」が後退していく体験について綴っていただきました。
(初出:『モノノメ 創刊号』(PLANETS、2021)
バナー画像出典:「FULLDOME HIRUKO」)

身体というフロンティア|最上和子

 私のしている舞踏は自分の外側に動きの形をつくるのではなく、まず最初に自分の身体の内部と徹底的に向き合う。世界にはバレエ、日舞、フラメンコ、伝統芸能、民族舞踊などたくさんの舞踊があるが、そのどれとも違い、方向が逆になっている。それは踊りをする前に内部を見出すという大きな課題があるからだ。
 身体の「内部」とはどういうことか。私の行っている基本の稽古に「床稽古」というのがある。身体の力を抜いて一〇分間床に横たわり、一〇分かけて立ち上がり、次に一〇分歩く。一行程三〇分のこの稽古で身体と意識状態に驚くべき変化が起こる(起こらない場合もあるが)。
 まず身体の力を抜くのが難しい。抜いたつもりになっているだけという場合がほとんどだ。力を抜いて横たわるとは、無防備に自分を投げ出すということ。社会的な武装を解くということなのだ。力を抜くためにはそれなりの仕掛けが必要だが、ここでは割愛する。