(ほぼ)毎週月曜日は、大手文具メーカー・コクヨに勤めながら「働き方改革アドバイザー」として活躍する坂本崇博さんの好評連載「(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革」を大幅に加筆再構成してリニューアル配信しています。
いまだ実現していない働き方改革を思い描くためには、現実世界の様々な事象を高い解像度で記憶する必要があります。今回は、坂本さんがオタクならではの方法で情報を記憶に定着させるコツについて解説します。
(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革〈リニューアル配信〉
第18回 アイデア幻想術 ①アウトプットベースでインプット
あらすじ
いま目の前にある働き方には存在しない、新しいやる事・やり方・やる力の選択肢を思い描き、細部まで具体的にイメージを固めていく「幻想力」を高めるためにはどうすべきでしょうか。
私の結論は「現実には起こっていないことを、細かいことまで妄想する習慣をつける」です。
今回は、その習慣づくりの一つのテクニックとして、「人の脳の性質」に着目した、アウトプットベースでインプットするという手法をご紹介します。
幻想の素は蓄積された記憶
幻想とは、現実ではない世界をまるで現実世界のように具体的に細部まで思い描くことです。ということは、幻想の世界を精緻なものにするには、現実世界の様々な事象を記憶していることが不可欠です。
幻想の世界をジオラマとすると、記憶とはそのジオラマを構成する様々なパーツです。
たとえば電車が走る風景のジオラマであれば、車両や線路はもちろん、樹木や河川、信号機や民家、看板や電柱、動物たちといった部材があればあるほど、リアルなものになっていきます。
幻想力があるということは、脳内に多様な部材(記憶)がたくさんあり、それらを引っ張り出してきて、今とは異なる世界を作り上げられることです。
どんなに突拍子もない世界であっても、「知らないもの」からは生まれません。その人が過去に収集・蓄積した別々の記憶が少し変わった組み合わせ方で関連づけられることで新しい世界が生まれるのです。
たとえば、資料の仕上げや作成代行を行うコンシェルジュという仕組みも、ゼロから生まれたわけではありません。アニメ制作において、一人がすべての作画をしているわけではないように、コンテンツというものは複数の人で手分けをして作ることができるという記憶があったからこそ、資料についても同様に途中から別の人(コンシェルジュ)が受け持つことはできるという考えに至ったわけです。
記憶は忘れ去られていくもの
幻想というパズルを完成させるには記憶のピースが潤沢にあることが大事ですが、「人は忘れていく生き物である」と言われます。
どんなに必死に詰め込んだ数式も、世界の歴史も、受験が終わればどんどんと脳から消えていきます。日々出会った人との会話も、わざわざ高いお金を払って受けに行ったセミナーの内容も、ふと気がつけば忘却の彼方に追いやられています。
どんなに「アンテナ脳」を鍛え、自然といろいろな情報に意識・注意(Attention)を払えるようになったとしても、それらを記憶領域に「知」として留めておけなければ意味がありません。
逆にきちんと知として認識・記憶し続けることで、それらを多様な知を組み合わせて私の働き方改革につながる新しい選択肢(やる事・やり方・やる力)を生み出すことにつなげられるようになります。
しかしながら、私自身あまり記憶力が良い方ではなく、周りからも三歩歩くたびに何か一つ忘れていく困った人扱いをされています。アニメの声優さんの過去出演作品とか、『銀河英雄伝説』の登場人物名とか、ポケモンなど二次元の世界のことがらはやけに覚えていてスラスラと挙げることができるのですが、他のこと、とくに現実世界のこととなるとからっきしダメです。
人名もほとんど覚えられないので、人と会話するときに間違えるのが怖くて名前を呼べず、よそよそしい会話になってしまいます。チームメンバーに声をかけるときすら、名前がすっと出てこないので呼びかけることができずに通り過ぎられてしまったりして凹んでいます。
とはいえ、意識高い人のように常にメモ帳を持ち歩いて欠かさず記録を残すということも億劫ですし、そもそも手帳を持ったこともありません。時々手帳を買ってしっかりメモする人間になろうと思い立つこともあるのですが、文具店に行く途中に目的をすっかり忘れてしまい、アニメグッズのくじ引きを大人買いしてはホクホク顔で大荷物を抱えて帰り道についてしまっています。ついでに言うと、ペンもすぐどこかに置き忘れてなくしてしまいます。
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