今朝のメルマガは、加藤るみさんの「映画館(シアター)の女神 3rd Stage」、第11回をお届けします。
今回は加藤るみさんが選ぶ、2020年の映画ベスト10を発表します。
『パラサイト』の韓国映画として初のアカデミー賞受賞にはじまり、新型コロナウイルスの感染拡大により映画館で鑑賞することそのものにも変化が起きた2020年。そんな激動の1年間で公開された作品の中から、るみさんが選んだ10本とは?
加藤るみの映画館(シアター)の女神 3rd Stage
第11回 激動どころじゃない2020年! 今年の映画ベスト10
おはようございます、加藤るみです。
今年も残すところわずかになりました。
私にとっての2020年は、拠点を東京から大阪に移すことから始まり、振り返ってみると激動という言葉だけでは収まりきらないほど色々なことがあった1年でした。
新天地で気合いを入れて活動しようと思いきや、地球は未知のウイルスに侵略されたり、なかなか自分の思うように物事が進まなかったり……。
……と、今年が物足りない1年だったことをすべてコロナのせいにしようかと思いましたが、本音を言うと「自分の頑張りが足りなかっただけでは?」と、情けない気持ちになる自分もいることをここに書き留めておきます。
それでも、自信を持ってやり遂げたと言えることもあって、それは、今年は去年より映画を沢山観れたぞ! ということです。
思う存分インプットできた1年になったので、来年はアウトプット、ゴジラで言うと第3形態から第4形態のように変化し、地に足をしっかりつけ、熱腺を放出できるような1年にできたらいいなと思います。
さて、今回は2020年の映画総括ということで、毎年恒例の映画ベスト10を発表したいと思います。
私のベスト10は、今年劇場公開がされた作品の中から選んでいきます。
今年は、面白い作品が多かったので、悩みに悩みました。
昨年は、迷わず『アベンジャーズ/エンドゲーム』を1位にしたのですが、正直、今年はTOP3までは全部1位にしたかったくらいで、めちゃくちゃ苦しんで順位をつけました。
では、早速10位から発表していきたいと思います!
10.『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』
今年公開された、ウディ・アレンの新作です。
養女に対する幼児虐待疑惑で炎上し、ここ数年ハリウッドから追放状態にあるウディ・アレン。
その影響でアメリカではお蔵入りとなった本作でしたが、日本では今年の7月に公開が実現しました。
この件については、まだ心のモヤモヤが拭いきれていませんが、だからと言って事件の真相がわからないまま、あーだこーだと部外者である私が何も言う権利はないと思っています。
もちろん、性的な虐待、暴行、暴力は容認しません。
ですが、この情報が錯乱しているなかリンチかのように集中的に石を投げ続けることはとても虚しいですし、映画や映画作家を社会的に抹殺することについても疑義を持っています。
ウディ・アレンを好きになってから、新作は毎回映画館で観てきた私ですが、今回は劇場で観る気が起きず、最近になって気持ちが落ち着いて、ようやく鑑賞することができました。
単刀直入に言うと、これを映画館で観なかったのは、ウディ・アレン作品のファンである私からすると惜しいことをしたなぁと思います。
ウディ・アレンの代名詞でもある、NY。
『それでも恋するバルセロナ』('09)、『ミッド・ナイト・イン・パリ』('11)、『ローマでアモーレ』('13)など、ヨーロッパ編も大好きですが、生粋のNY派であるウディ・アレンが描く『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』は、特別としかいいようがないNYへの愛がたっぷり詰まったラブレターでした。
やはり、NYを撮らせたら天下一品、右に出るものはいないと思います。
カーライルやピエールといった、最高のクラシックホテルを舞台に、大学生カップルのティモシー・シャラメとエル・ファニングがNYという街に翻弄されていくのですが、もうこのキャストの絵面だけでも相当に眼福です。
親のスネをかじりながら、ギャンブルで儲けたお金で彼女と高級ホテルに泊まるティモシー・シャラメは本当にどうしようもなく情けない奴なのに、その気だるい色気にやられてしまうんですよね。
ティミーったら罪な男(ティモシー・シャラメ愛が止まらなすぎて最近は愛称で呼んでいる私)。
そして、この映画のタイトルにも入っている雨というモチーフですが、
ウディ・アレンは「雨はロマンスや愛を象徴している」と、語っていて雨のNYを超ロマンチックに演出しているんです。
たまたま映画のエキストラをすることになったティモシー・シャラメがセレーナ・ゴメスと雨のなかキスするシーンは、『ミッド・ナイト・イン・パリ』のラストシーンに並ぶほど良かったです。
ウディ・アレンは魔法をかけるかのように一番良いシーンで雨を降らせるのですが、雨が降るからこそ一番良いシーンになるのかもしれません。
けれど、物語としては前作の『女と男の観覧車』('18)やその前の『カフェ・ソサエティ』('17)と比べるとキレを感じられず、変に小さくまとまってしまった終わり方だったなぁと思います。
私的にウディ・アレンは、"憧れ"の舞台で"憧れない"物語を描いてきた監督だと思っているんですが、もう少し人生の渋さや苦さが可笑しく思えるスパイスが欲しかった……ということで、少し辛めに、10位としました。
9.『ナイブズ・アウト/名探偵と刀の館の秘密』
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』('17)で我々スター・ウォーズファンを奈落の底に突き落としたライアン・ジョンソン監督のミステリー映画。
ヒドイこと言うかもしれないですけど、多分これを期待して観る映画ファンはあんまりいなかったんじゃないかと思うんです。
だって、スター・ウォーズをハチャメチャにしてくれた、信頼も何もない、あのライアン・ジョンソン監督ですもん。
でも、これが面白かっ…………たんですよ。
「どひゃーーーー‼‼ あんた、やるじゃない!」みたいな(笑)。
「007」シリーズの完全無敵なジェームズ・ボンドとは一味違い、ちょっと頼りなくて胡散臭い探偵ダニエル・クレイグがある金持ち一家の殺人事件の真相に迫っていくんですが、物語はものすごくベタな展開になるかと思いきや、出てきたのは現代的で新しさを感じるハイセンスミステリー。完敗でした。
途中で一旦わかった気になっていたら、ラスト30分くらいで更に面白くなるんです。
そして、何よりオチが最高にシャレていて、このラストシーンだけで白飯5杯……いや盛りすぎました。3杯はイケます。
監督ライアン・ジョンソンに「スター・ウォーズの件はボロクソ言ってごめんね」と謝りたくなるほど、老若男女楽しめるエンターテイメントとして仕上がっていて、ここ数年のミステリーで群を抜いて痛快でした。
彼の次作が楽しみです。
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