「働き方改革アドバイザー」の坂本崇博さんが、「My WX(私の働き方改革)」の極意を説く異色のワークスタイル指南。今回から、いよいよ坂本さんのこれまでの取り組みを普遍化するメソッド編が始まります。
コロナ禍を経て、多くの人々が働き方を強制的に変えさせられている中だからこそ、本当に「自分のやりたい」仕事をするには、何が必要なのでしょうか?
坂本崇博『(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革』
第10回 明日からできる「私の働き方改革(My WX)」その1
もう働き方改革いらなくないですか?
最近こう聞かれることがあります。「坂本さん、コロナ禍によって強制的に働き方改革ができてしまった中で、働き方改革のコンサルティングってもういらないんじゃないの?」と。
2020年現在、世界はCOVID-19(新型コロナウイルス)による経済社会の大混乱の最中にあります。疫病という外敵によってもたらされた社会経済活動の強制停止は、個人の生活、そして企業の生産活動に未曾有の被害をもたらしました。
通勤、登校、集会、外食など、これまで息をするように当たり前に営まれていた様々な活動が禁止や自粛に追いやられ、生活習慣の抜本的な見直しを迫られています。
そうした中で、意識が高い人たちは「ピンチはチャンス」と口を揃えわめき立て、「withコロナ時代のニューノーマルとは?」と問いを掲げ、毎日オンラインセッションを開催しながら、これからの世界を予測し合って「政府はこうすべきだ」「社会はこうなっていくべきだ」「コロナによって日本の働き方改革が強制的に実行されてしまった」と盛り上がっています。
この状況は、日本中で働き方改革がブームになった2016年前後の状況を彷彿とさせます。
当時も今と同じく、メディアの論客や経営者、コンサルタントたちがこぞって「働き方改革とはこうあるべし」と持論を展開して、政府や企業への提言を“あさっての方向”に向かって発信していました。違ったのは、その発信の仕方がオンラインセッションではなく、広い会場を貸し切りしたシンポジウムであったことくらいです。
企業経営者らの動きも驚くほど酷似しています。現在ほとんどの企業で設置されている「コロナ対策委員会」と同じく、2016年ごろには「働き方改革推進委員会」や「働き方改革プロジェクト」を立ち上げ、委員会メンバーに対応を考えさせ、出てきた案にああでもないこうでもないと「審査」を下していました。
そして、企業で働く私たち一人ひとりの反応もそっくりです。すなわち「無関心」もしくは「無抵抗」です。
「きっと経営層が、政府が、何かするだろう」と達観したり、「うちの会社はなかなか対応が遅い、弱い」と愚痴を言い合いながら、なるべくこれまでの通りのやる事・やり方・やる力で、日々を送ろうとしています。また、現在のコロナ禍で「出社禁止」と言われれば粛々とそれに従う様は、「残業禁止」と言われてオフィスの照明を強制消灯されれば粛々と帰路につくサラリーマンたちと重なります。
リアルに集まっての会議ができなくなったのでオンライン会議に切り替える。判子を押すことができなくなったので電子押印を導入する。会社に出てこられないので在宅ワークを始める。コロナ禍での働き方の強制的な変化を受けて、彼らは「これで生産性が高まった」「ついに働き方改革ができた」と喜んでいます。
しかしこれは、残業削減と言われて業務を途中で切り上げて早く帰り、ペーパーレスと指示を受けて会議資料の配布を止めて見づらいプロジェクターで資料を閲覧し、最新のフリーアドレスオフィスで人気のない場所を選んで「集中しやすくなって生産性があがった」と喜んでいた当時とそう変わらない状況のように思えます。
つまり、コロナ禍によっても相変わらず「私の働き方改革(My WX)」は進まないままで、「誰かにお膳立てされた働き方改革(働かせられ方改革)」に乗っかっているだけではないかと思うのです。
もちろん、2016年前後の働き方改革ブームと違って、コロナ禍の現在は社会全体が強制的にアップデートされ、その成果を実感している人の絶対数が飛躍的に拡大したことは確かです。しかしこれは「My WXを進めた人が増えた」ということと同義ではなく、単に「働き方が変わった(変えさせられた)人が増えた」に過ぎません。
私は、コロナ禍を経た今も、いえ、皆が強制的に「新しい働き方」を受け入れ横並びになってしまった今だからこそ、My WXが必要だと思うのです。
だって、皆さん、コロナ禍の働き方の変化を通じて、アニメを思う存分観られるようになったのでしょうか? 多くの人が進む王道とは違う「外道」に入ることができたのでしょうか? そして何よりも新しい働き方をする自分に「萌え」を感じられているのでしょうか?
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