今朝のメルマガは、加藤るみさんの「映画館(シアター)の女神 3rd Stage」、第6回をお届けします。
今回は、アメリカの伝説的ロックミュージシャン、ブルース・スプリングスティーンへのリスペクトが込められた青春音楽映画『カセットテープ・ダイアリーズ』をご紹介します。
青春映画でのファーストキスシーンには一家言あるというるみさんですが、本作のキスシーンには物申したいことがあるそうで……?
加藤るみの映画館(シアター)の女神 3rd Stage
第6回『カセットテープ・ダイアリーズ』
おはようございます、加藤るみです。
あっという間に2020年も上半期が終わり、下半期に突入しましたね。
振り返ってみると、この上半期は私の人生の中で忘れられない6ヶ月間でした。
年始から大阪に引っ越し、新しい環境での生活。
16年間一緒に過ごした愛犬との別れ。
突然のコロナ禍。
バタバタと目まぐるしく過ぎていった上半期でした。
ここで、2020年上半期で印象に残った作品を少しだけピックアップしていこうと思います。
まずは、『パラサイト 半地下の家族』です。
振り返れば一番に思いつくほど、衝撃的に面白い作品でした。
物語のテンポにグングン飲み込まれ、予測不可能な展開に感服しました。
前半のコメディ感と後半のシリアス感のバランスも絶妙で、社会派映画なのに堅苦しくないラフさがこの作品の魅力だと思います。
最近見直したら、ドラマ『梨泰院クラス』でセロイを演じていたパク・ソジュンが、半地下一家の息子を家庭教師に誘う友人役として出演していたことを発見しました。(『梨泰院クラス』の影響で、ついパク・ソジュンのことをセロイと呼んでしまう私です(笑)。)
『梨泰院クラス』を観なかったら、この気づきはなかったんだろうな、と。
映画もそうですが、韓国ドラマ『梨泰院クラス』や『愛の不時着』に、ロスに陥るほどハマりにハマり、私の上半期は韓国エンタメ作品にたっぷり時間を割いたような気がします。
ラブコメでは、以前紹介した『ロングショット 僕と彼女のありえない恋』がとにかく最高でした。
美女と野獣的な格差恋愛から、お似合いの2人に昇華させていく手腕が見事。
古典的なラブコメの良さも残しつつ、最新版にアップデートされている令和のラブコメだと思いました。
早くも私の「2020年のベスト10」に暫定ランクインしているほど、大好きな作品です。
第二次世界大戦下でヒトラーに忠誠を誓う少年の成長を描いた『ジョジョ・ラビット』もよかったです。
MCU作品の中で、一際暗かった『マイティ・ソー』シリーズを、軽快に演出し、がらりとその雰囲気を変え、その娯楽度を底上げした『マイティ・ソー バトル・ロイヤル』のタイカ・ワイティティが監督しているだけあり、きっちりと戦争の悲惨さを描きながらも、軽快に観れるのは匠の技。
『ジョジョ・ラビット』を観て号泣した私は、タイカ・ワイティティに一生ついていくと忠誠を誓ったのでした。
『スター・ウォーズ』の新作も監督することが決まっているので、楽しみです。
『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』も忘れてはいけないですね。
この映画は、「刻まれた」といった感覚でした。
結婚=女の幸せ、そんな決めつけに縛られた物語の結末だけではなく、色んな結末があっていいはず。
『レディ・バード』で鮮烈な監督デビューを果たしたグレタ・ガーウィグですが、2作目も素晴らしく、もう巨匠と呼びたいくらいです。
彼女の映画を、物語をこれからもずっと観続けたいと思いました。
ズラッと振り返りましたが、コロナ禍の影響で公開延期になった作品も多々ありました。
本来であれば、今頃はMCUの新作『ブラック・ウィドウ』の感想を熱く語っていたり、待ちに待った『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』で最後と言われるクレイグボンド(編注:ダニエル・クレイグ演じる6代目ジェームズ・ボンド)を惜しんでたりしてたんだろうなぁ……と思います。
さて、今回紹介する作品は、『カセットテープ・ダイアリーズ』です。
原作・脚本を務めるサルフラズ・マンズールの自伝的回顧録を、『ベッカムに恋して』のグリンダ・チャーダ監督が映画化。
アメリカの伝説的ロックミュージシャン、ブルース・スプリングスティーンへのリスペクトを込めた青春音楽映画です。
舞台は、1987年のロンドン郊外にある小さな町ルートン。
パキスタン系の移民で、小さい頃から日記や詩に自分の言葉を綴ることが好きな16歳の少年ジャベドが主人公です。
閉鎖的な街で受ける人種差別や、絶対君主のようにふるまう父親の抑圧に耐えながら、「いつか街を出たい」と夢見ている彼は、ある日、友人から貸してもらったブルース・スプリングスティーンのカセットテープを聴き、衝撃を受けます。
そしてスプリングティーンの音楽と共に、彼の人生は大きく変わっていく……という物語です。
友情、恋、家族との対立といった要素が盛り込まれた王道青春ストーリーでありながら、
1980年代のサッチャー政権下での不況、移民排斥運動や排外主義が背景にあり、人種差別が生々しく描かれている映画でもあります。
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