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今回のPLANETSアーカイブスは、本誌編集長・宇野常寛の「京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録」をお届けします。『新世紀エヴァンゲリオン』のヒットによって90年代後半に巻き起こった第三次アニメブーム。その中核となった『機動戦艦ナデシコ』『少女革命ウテナ』という2つの作品を論じます。(この原稿は、京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 2016年6月10日の講義を再構成したものです/2017 年1月6日に配信した記事の再配信です)

『機動戦艦ナデシコ』と『少女革命ウテナ』――第三次アニメブームの双璧

 『エヴァンゲリオン』の社会現象化はおよそ10年ぶりのアニメブームを日本社会にもたらしました。『エヴァ』のヒットによって、ティーンから大人のファンを対象にしたアニメが大量に作られるようになり、90年代末にはいわゆる「深夜アニメ」が定着します。

 この『エヴァ』の生み出したアニメブームを「第三次アニメブーム」と呼びます。『宇宙戦艦ヤマト』を起点とした第一次アニメブーム、『機動戦士ガンダム』に始まる第二次アニメブームは、70年代後半と80年代前半ですからほぼ連続しています。だから考え方によっては『エヴァンゲリオン』以降は2回目のアニメブームと考える人も多いです。

 これらは『エヴァ』と同じように制作委員会方式で資金が調達されていました。つまり複数の会社が制作資金を出し合って、印税をシェアする方式です。そしてこの制作資金は主にビデオソフトの販売で回収されていました。当時ビデオソフトは30分のテレビアニメが2〜4話収録で5000円〜1万円が相場だったので、対象は確実に社会人でした。これは『エヴァ』の少し前から採用されていたモデルですが『エヴァ』によって一気に拡大し、定着したものです。『エヴァ』は内容だけでなく、ビジネス的な成り立ちにおいても、大人のアニメファンを対象にした作品だったと言えるでしょうね。

 『ガンダム』と『エヴァンゲリオン』のあいだにはほぼ10年の空白がありますが、80年代後半から90年代前半はさきほども話したようにアニメオリジナルの作品があまり盛り上がっていない時期でした。そんななか登場した『エヴァンゲリオン』によって、アニメがまた盛り上がるようになっていったんです。これは子どもの頃に『ヤマト』や『ガンダム』見ていた世代が大人になって、彼らがビデオソフトを買うことによってマーケットが活気づくという新しい市場が生まれたことが背景にありました。第一次、第二次アニメブームを支えた団塊ジュニア世代、今の40代は人口ボリューム的にも非常に大きかったんですね。そうした市場の活況を背景に、『エヴァンゲリオン』のインパクトを受け継ぎながらも発展させようとしたアニメがこの時期にいくつか出てきます。
 そのうちの代表的な2つの作品を挙げましょう。どちらも『エヴァンゲリオン』ほどのブームを巻き起こすことはできませんでしたが、当時は非常に期待されていたアニメです。そのひとつがこれです。

(『機動戦艦ナデシコ』映像上映開始)

 これ、知ってる人いますか? あまり知らないですかね。僕が高校三年生のときに放映された『機動戦艦ナデシコ』という作品です。絵柄が90年代すぎて、今見るとちょっと恥ずかしいですね。
 『機動戦艦ナデシコ』ってタイトルからもわかるとおり『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』のパロディが根底にあります。よく言われていたのが、「『宇宙戦艦ヤマト』のような戦艦に『うる星やつら』の美少女がたくさん乗っていて、ラブコメを繰り広げながら『ガンダム』的なロボットに乗って活躍する」ということ。ある意味、『エヴァンゲリオン』とは違うかたちで戦後アニメの総決算をやろうとしていたわけです。

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▲機動戦艦ナデシコBlu-ray BOX 上田祐司 (出演), 桑島法子 (出演), 佐藤竜雄 (監督) 

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