鷹鳥屋明さんの連載『中東で一番有名な日本人』。今月、サウジアラビアで汚職対策委員会が、11人の王子や現職閣僚らを拘束しました。日本ではその一人、著名投資家のアルワリード王子の豪華な生活に報道の焦点が当たっていますが、鷹鳥屋さんはもっと重要なことがあると語ります。なぜ王子たちが拘束されているのか、没収された資産はどうなるのか、鷹鳥屋さんがサウジアラビアの今を伝えます。
前回はサウジアラビアのエンターテイメント産業のこれからについてお話しました。さらにその前は働くサウジアラビアの若者について話していましたが、常に問題になっていたのは「石油価格の低迷が進む今、国家歳入が落ち込んでいて国家財政的に厳しい」という部分でした。
ですが、皆様も最近のニュースでご存知のように、ある意味で「埋蔵金」と呼べるところから財源を確保するのではないか、というニュースが世界を駆け巡りました。11月5日にサウジアラビアのサルマン国王の息子のムハンマド・ビン・サルマン皇太子(以下、ムハンマド皇太子)がアルワリード・ビン・タラール王子(以下、アルワリード王子)を含む11人の王子や、政府の閣僚、高官らを一斉に拘束しました。日本の各メディアでは、この中で特に有名なアルワリード王子について、その資産家・投資家としての豪華な生活について特集をしていました。しかし、他にもっと重要なことを伝えなければいけないと思い、今回は急遽前々から準備していた『中東ボディビル選手権最前線』 から内容を変更してこのニュースについて書くことにしました。
サウジアラビア王族早見表(作:鷹鳥屋)©Al-Arabiya, ©Al-Sharq, ©John B. Philby
アルワリード王子とは?メディアの語らぬ奥の奥まで
今回の件で、日本のメディアでは知名度が高く資産家としても有名なアルワリード王子についてよく取り上げられています。しかし、なぜアルワリード王子の資産だけが公開されているのかという点、彼がなぜサウジアラビア政府の人間ではなく私企業のトップというビジネスマンになったか、ということについては伝えられていません。その説明をするためには、まず彼の父親であるタラール王子について話さなければなりません。タラール王子は初代国王のアブドルアジーズ国王の21番目の息子でありながら、その妻はレバノン系の女性でした。そしてナセル大統領統治下のエジプトに滞在し共産主義に染まり、通称「赤い王子」という名前も持つ方です。この方は一部の王族たちと共に「自由王子運動」というサウジアラビアの体制批判運動を起こしたことから、後に王位継承権を返上し官職にも付かず、現在は政治の表舞台には出ていません。
▲タラール・ビン・アブドルアジーズ王子、アルワリード王子と面影が似ています
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