『コードギアス』と『エウレカセブン』の対比から見えてくるもの(『石岡良治の現代アニメ史講義』第5章 今世紀のロボットアニメ(5))【不定期配信】
今回は、今世紀のロボットアニメを考える上でもっとも重要なタイトルである『コードギアス』の達成について考えてみたいと思います。
ロボットアニメのビッグタイトルはどうしても『ガンダム』『マクロス』という老舗シリーズに集約されがちですが、それでもいくつかオリジナルタイトルの佳作が定期的に生まれています。中でも反響の大きかったタイトルを挙げると、『交響詩篇エウレカセブン』(2005-2006年)、『コードギアス 反逆のルルーシュ』(2006-2009年)、『天元突破グレンラガン』(2007年)あたりが思い浮かびます。あとは河森正治監督作のため『マクロス』と関連付けられがちですが、放映後にネタ人気が出てシリーズ化された『創聖のアクエリオン』2005も入るでしょう。このように、なにげにゼロ年代中葉はロボットアニメが活気付いていたわけですが、ネット動画の時代となったここ十年のアニメをめぐる状況との相性が様々な点で良くないのでしょう。ここ十年のアニメ状況を象徴する京アニもシャフトも、ロボットアニメにはあまりかかわっておらず、例外ともいえる京アニの『フルメタル・パニック! The Second Raid』(2005年)がなんとなく孤立した存在となっていることも象徴的です。
その中では『コードギアス』を考える上で最適の比較対象が『エウレカセブン』だと考えています。対比列伝はどうしても一方を下げることになりがちなので、以下、どちらかというと『エウレカセブン』の残念な部分にフォーカスを合わせる比較になりますが、予め『エウレカセブン』の良さについて述べておくと、一部間延びはあったものの一年間全50話という、長丁場の物語を描ききった上、ボーイミーツガールものとしての掴みの鮮烈な印象もあってか、続編や後続作をいくつも生み出した事実は見逃せません。続編を含めた後続作(一例を挙げると2015年の『コメットルシファー』)がことごとくうまくいっていないのも事実ですが、そこから遡ることで元祖である『エウレカセブン』の良さが時を経ることによって見えるようになったことは大きいでしょう。
さて、『エウレカセブン』と『コードギアス』にはわかりやすい比較基準があって、それはどちらも最初のオープニングのアーティストがFLOWで共通しているんですね。『エウレカセブン』の「DAYS」と『コードギアス』の「COLORS」は、曲調も近いところがあり、映像込みで比較すると興味深い対照性をみせていることがわかります。一般に初期OPの映像は作品コンセプトを概観するものが多く、シナリオの「構造」が表に出ているんですね。
「DAYS」が使われている『エウレカセブン』のOP1でわかるのは、河森正治デザインのメカがサーフィンするという『マクロス』から発展させた新規要素、そして人間関係の配置が『ファーストガンダム』を意識していること(三人組の孤児の存在に顕著です)です。さらに「アゲハ構想」という世界の謎関連のイメージがフラッシュカットで切り替わり、そこに神話学の祖フレイザーの『金枝篇』が一瞬見えたりする部分では、技法込みで『エヴァ』要素を持ち込んでいる、というように、過去のロボットアニメヒット作の要素を盛り込んだ上で、ボンズアニメのボーイミーツガールものでおなじみの「ウユニ塩湖っぽい場所で手をつなぐ男女」でまとめています。要所要所でエッジの利いたアクションもあり、模範的なロボットアニメの動きをみせているといってよいでしょう。
他方「COLORS」が流れる『コードギアス』のOP1はどうでしょうか? 日本地図に照準が向けられるイメージにタイトル画面が重なり、続けてルルーシュの瞳がアップ、そしてギアス発動のおなじみの映像が出てきます。これはニューロンがつながるイメージとしてハリウッド映画でも多用されるものですが、ここのダイナミズムはロボットの運動ではなく「脳内イメージ」の可視化そのもので、そこに日本占領をめぐる戦争のイメージが静止画で重ねられていきます。ロボットアニメに定評のあるサンライズ作品とはいえ、深夜枠なので作画リソースはそれほどでもなく、止め絵が中心なのですが、家族状況を背景に仮面の男として立ち上がるルルーシュの反逆を示す構成は、まさにシナリオの初期設定を効果的にみせています。続けて現れる、占領された日本でゲリラ活動を行うメンバーをカレンを中心にまとめる一方で、ブリタニア帝国軍の絢爛豪華なメンバーをみせるところは、統治被統治の関係を貧富の差と重ねるよくある対立構造といえるでしょう。
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