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古川健介『TOKYO INTERNET』/第3回 テキストサイト文化が生み出した「真面目にふざける」ビジネスモデル【毎月第2水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.729 ☆

2016/11/09 07:00 投稿

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古川健介『TOKYO INTERNET』
第3回 テキストサイト文化が生み出した
「真面目にふざける」ビジネスモデル
【毎月第2水曜配信】 
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.11.9 vol.729

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今朝のメルマガは古川健介さんの「TOKYO INTERNET」の第3回をお届けします。
テキストサイトの時代から連綿と続く、「真面目にふざける」という伝統が、ブログ、ソーシャルメディアの時代を経て、いかに現代のウェブコンテンツに継承されているか。日本のインターネットの文化的本質について論じます。


▼プロフィール
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古川健介(ふるかわ・けんすけ)
1981年6月2日生まれ。2000年に学生コミュニティであるミルクカフェを立ち上げ、月間1000万pvの大手サイトに成長させる。2004年、レンタル掲示板を運営する株式会社メディアクリップの代表取締役社長に就任。翌年、株式会社ライブドアにしたらばJBBSを事業譲渡後、同社にてCGM事業の立ち上げを担当。2006年、株式会社リクルートに入社、事業開発室にて新規事業立ち上げを担当。2009年6月リクルートを退職し、Howtoサイト「nanapi」を運営する株式会社nanapi代表取締役に就任。

『TOKYO INTERNET』これまでの連載はこちらのリンクから。


テキストサイト文化が生み出した「真面目にふざける」ビジネスモデル

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(イラスト:たかくらかずき)

東京中目黒にある「株式会社バーグハンバーグバーグ(BHB)」という会社をご存知でしょうか。

企業理念は「がんばるぞ」であり、事業内容は会社ホームページによると「メディア運営(ふざけてるやつ)・プロモーションサイト制作(ふざけてるやつ)・記事広告制作(ふざけてるやつ)・映像制作(ふざけてるやつ)・執筆業務(ふざけてるやつ)」となっています。

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もう少し何をやっている会社かをわかりやすく説明すると、ユーザーが笑ってくれるようなネタのページを作ることで企業の宣伝をすることをメインとしている会社です。お笑い系の仕事がほとんどであり、「日本一ふざけた会社」と呼ばれることもあります。

大きく分類するのであれば「企業の広告ページの制作をメインとしたウェブ制作会社」に属します。ウェブ制作以外にも、オモコロというお笑い系の自社メディアを運営していたりします。

では、「ふざけたこと」をして企業や商品を宣伝するというのはどういうことでしょうか?

例を挙げると、たとえばネット銀行の宣伝を行う際に、普通の銀行との比較をしたいとします。ここで単にそれぞれの比較をしてもおもしろくありません。一方で、おもしろさだけを追求したら宣伝になりません。

そこで、バーグハンバーグバーグでは「公平に比較しています」と言いつつ、銀行側で説明する人がひどい風邪をひいている、という設定でおもしろさと魅力の宣伝を両立しています。

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公平に比較をしているんだけど、風邪をひいててうまくしゃべれないからしょうがないよね、という言い訳です。

また、インド人のアドバイスを完全に無視したカレーを作り、実際に販売するなどをしており、実際にその商品を完売させたりしています。これは、カレー屋が通販をはじめる際に、商品企画から関わっているケースです。

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これが、たとえばちょっとだけネット銀行のよさを強調し、他の銀行をちょっとだけ不利に表現したら、ネット上で炎上間違いなしですし、インド人のアドバイスをそれなりに尊重しているのに、大事なところでアドバイスから逸れたことをやっては、怒る人もでてくるでしょう。

銀行の比較を公平といいつつ、極端に不公平なのがよくて、インド人のアドバイスを完全に無視するからこそいいわけです。つまり、笑いの部分を過剰にやることで、「あ、笑っていいんだ」となり、ソーシャルサイト上で話題になり、評価されるわけです。


ビジネス化出来ているバーグハンバーグバーグ

このバーグハンバーグバーグのポイントなのが、きちんとしたビジネスで成り立っているところです。通常のウェブ制作をしている傍らでやっているわけではなく、ふざけたことばかりやっているのに、仕事として成り立っているのです。

むしろ、通常のウェブ制作会社では、1枚のランディングページを作るだけでは、安い場合、数万円〜十数万円の受注であることも珍しくありません。実際にクラウドソーシングサイトなどを見ると、1枚15000円の案件に、5人ほどが手を挙げているケースもあります。発注者と受注者のマッチングが、クラウドソーシングなどによりしやすくなった今、付加価値の出せていないウェブ制作会社は、価格競争に巻き込まれてしまっているといってもよいでしょう。

そういった状況にもかかわらず、バーグハンバーグバーグは、自分たちがよいと思うやり方と内容で受注できており、HondaやYahoo!JAPAN、ケンタッキーフライドチキンなどの名だたる企業からの依頼を受けているわけです。他の制作会社には出来ないやり方なので、名指しで案件を取ることも増えてきているそうです。
そんなバーグハンバーグバーグのビジネスモデルは世界的に見ても類を見ない形です。マーケティングを工夫することでネット上で話題を集めたりするという手法はあっても、「お笑い的なコンテンツを作ることで注目を浴び続ける」という一点突破のみでビジネスとして成り立っている会社は、筆者の知る限りでは存在しません。
(注) ただし、シモダ社長は「北極にルーツ有り」と意味不明のことを言っており、真相は不明です。

そこで、今回の記事では、バーグハンバーグバーグが生まれた背景から、なぜビジネスとして成り立っているのか、というのを探っていきたいと思います。


テキストサイトの流れから出来たBHB社

まず、このバーグハンバーグバーグ社による独特のコンテンツの雰囲気はどこから来ているか、というところです。

結論からいうと、バーグハンバーグバーグ社が作るような、ネットらしいお笑いコンテンツというのは、古い時代のテキストサイトの文化の流れを汲んでいます。
「テキストサイト」とは、文字が主流だったインターネット黎明期に流行した個人ページの総称であり、お笑いコンテンツから、サブカル批評、日記形式のものまで様々なサイトがありました。

90年代後半から00年代のテキストサイトで最も有名なものの一つとしては「侍魂」が挙げられます。侍魂は、「先行者」という中国のロボットをおもしろおかしく取り上げた記事で大ヒットを記録しました。中国で最先端のロボットだと紹介されていた先行者の見た目があまりにチープであり、それをいじり倒すというコンテンツです。

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