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猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉
第9回「混沌を混沌のまま進化させたい!」
【毎月第1火曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.6.7 vol.612
今朝のメルマガは、チームラボ代表・猪子寿之さんによる連載『猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉』の第9回です。今回は、5月27日に公開された新作「Graffiti Nature」について。この連載で話してきたことの集大成とも言える作品の内容とは、どんなものなのでしょうか。議論は近代の表現とは違う、人間のコントロールを離れて動きまわる作品の世界観が生む楽しさについて踏み込んだものとなりました。
▼プロフィール
猪子寿之(いのこ・としゆき)
1977年、徳島市出身。2001年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。チームラボは、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、絵師、数学者、建築家、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、編集者など、デジタル社会の様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。アート・サイエンス・テクノロジー・クリエイティビティの境界を曖昧にしながら活動している。
47万人が訪れた「チームラボ踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」などアート展を国内外で開催。他、大河ドラマ「花燃ゆ」のオープニング映像、「ミラノ万博2015」の日本館、ロンドン「Saatchi Gallery」、パリ「Maison & Objet 20th Anniversary」など。2016年はカリフォルニア「PACE」で大規模な展覧会を予定。
◎構成:稲葉ほたて
本メルマガで連載中の『猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉』配信記事一覧はこちらのリンクから。
■3月からシンガポールではじめた常設展
猪子 今年の3月12日から、チームラボは、シンガポールの「アートサイエンス・ミュージアム」という場所で「FUTURE WORLD: WHERE ART MEETS SCIENCE」(以下、FUTURE WORLD)という常設展をはじめたんだよね。そこで5月27日に「Graffiti Nature」という新作を公開したので、今日はその話をするね。
基本的には
「お絵かき水族館」と同じで、お客さんにワニやカエル、蝶や花を描いてもらって、それをプロジェクションするものなの。
ただ、これまでの作品には、その作品が飾られる明確な「場所」があったんだけど、今回はその明確な範囲がないんだよね。特定の場所に絵が出るのではなくて、通路とか床とか「FUTURE WORLD」の全体の他の作品に使われていない場所に自分の描いた絵が出て行く。
宇野 面白いね。展示スペースの大きさはどのくらいなの?
猪子 「FUTURE WORLD」全体は、1500平米くらいだから、かなり広いんだよ。でも、現実的にはまだ「FUTURE WORLD」の真ん中辺り中心に広がっているんだけど、いずれ範囲を全体まで広げていきたいし、ミュージアムの外までも広げていきたい。
猪子 そうだね。動物たちは基本的に、人にぶつかると逃げていくんだよ。でも例えば、じっとしていると、周囲に花が咲き始めたりして、逆に、踏むと散っていくの。花が咲くと、そこに蝶が集まってきて増殖し始めたりもするのね。つまり自分が描いた絵の蝶が増えていく。で、またその蝶を、カエルが食べて増殖する。食べられると自分の絵の蝶はいなくなってしまう。さらに同じように、そのカエルをトカゲが食べたりする。
宇野 その世界の中に食物連鎖があるんだね。この世界に存在するものは全部お客さんが描いたものなの?
猪子 クジラ以外の動物は、花も含めて全部そう。そうやって、自分の描いた絵が食物連鎖の中で捕食されることもあれば、繁殖することもあるわけ。たぶん僕は個体より、状態とか現象が好きなんじゃないかな。
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