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『水曜夜は冒険者!』ミスタラ英雄戦記On the Table~:ステージ3B:激流ベスビア川:マンスコーピオン

2013/09/10 16:51 投稿

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第3回目のそのまえに

 水曜夜は冒険者――東京は代々木、ホビージャパンの会議室から。配信が始まると、そこに写っているのはひとりだけ。今日もまた少ない人数でやりくりしながら川下りか、と一瞬ぎょっとするものの、次々と卓に着くPL宮坂、そして堀江。そして「今日のPLは4人ですよ」と解説塚田のアナウンスが流れます。メギス、それともグレルダン――と思っていると「今日はローズマリーが参戦です」。

 新キャラ登場、ピクシー(小妖精)バード(吟遊詩人)のローズマリーです。
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 ここまで、元ネタのシャドー・オーバー・ミスタラ再現枠2人、D&Dではメジャーだけれどもシャドー・オーバー・ミスタラには登場しそびれた枠2人、そしてこれまでいそうでいなかった枠1人、という布陣でしたが、今回は"D&D4版独自のデータで好き放題やる枠"。小鳥サイズの小妖精であるピクシーの、そしてちょっと北欧ファンタジー風の"戦う吟遊詩人"スカルドの登場。これはシャドー・オーバー・ミスタラにも4版以外のD&Dにもいなかった"独自枠"!
 ……のはずでしたが、ゲーム画面右上に登場して"Go!"って言ってるのが実はピクシーでは、という話になったりも。実は19年前からずっといたキャラ(?)の再現枠だったんじゃぁ……

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 吟遊詩人である以上、英雄に同行し、歌い継がれるべき武勲が打ち立てられる現場に立ち会うのこそつとめ。というわけで主人公っぽい英雄を求めて旅を続けていたところ、「たった1人でゴブリン戦車を片づけた幼い美少年剣士」の噂を聞きつけてやってきたとか。ちなみにエルカンタールとは以前の冒険で一緒に戦った顔見知り同士。
 ピクシーもスカルドもサプリメント『妖精境の勇者』で追加された種族とクラス。小妖精のピクシーは一際小さい体に魔法と冒険心を一杯に詰め込んだ種族で、ローズマリーはかつて秋風に舞う木の葉をくるくる回す仕事についていたが、その仕事に飽き飽きして冒険に旅立ったという設定。スカルドは英雄譚の主人公をただ歌うのではなく、その傍らに立って、伝説を目の当たりにし、語り継いでいこうという"英雄の介添人"といった感じの吟遊詩人。プレイヤーはDM柳田のリプレイにはほぼ毎回参加してくれている瀬尾アサコ。今回は仕事の修羅場を縫って参加してくれました、感謝!

 というわけで、今日は4人のPCが撃破・防衛・指揮・制御の4役をひとつずつ担当する"バランスのいいパーティー"でスタート。DMが準備を整えている間に、画面ではカプコン版ゲームで今日遊ぶ予定の『激流ベスビア川』のステージを遊びます。言うなれば、ゲーム画面による"今回予告"。
筏で川を下り、モンスターを避け、宝物を回収し、巨大な黒竜に追われ……というわけでこの先に何がいるかはみんな知ってるわけですが、でも知っているのと実際に対処するのはえらく違うのです。



激流ベスビア川

 衛兵隊長からの依頼を請け、一行はトリンタン村からさらに北のグラントリシティを目指すことになる。

グレルダン:「道は2つあると言ったな。では二手に別れよう。万が一どちらかが全滅しても、グラントリシティには無事この危急の報せが届くように。私は陸路を行く。さすがにひとりでは心許ないが」
メギス:「では私が同行しよう。エルカンタールは川を。遠当てのすべを持つ者が二手に別れれば、陸路も川もうまく怪物どもの巣を抜けてゆけるだろうから」

 というわけで(今回欠席の)グレルダンとメギスは陸路を行き、残りはベスビア川を下ることになった。最初は船が出るはずだったが、ゴブリンどもに荒らされたトリンタン村で用意できるのは筏がやっとのこと。何、水に浮きさえすれば十分だ。

 陸路を行く者を送り出し、さて筏の準備も整えて出発、というところで追いかけて来る声がある。振り向いても誰もいないと思ったが、エルカンタールが「おや」とつぶやく。周囲を飛び回っている、ちらちら光る小さな小鳥のように見えるのは……

エルカンタール:「なんだ、ローズマリーじゃないか!」
ローズマリー:「あれ、エルカン? ねえ、ゴブリン戦車を一人で倒した美少年剣士はどこ? あたし、その子と一緒に行ってその子のサガを作ろうと思って!!」
エルカンタール:「……」

 美少年剣士という噂の大剣使いは成人したハーフリングで、そして"たった一人"というのもデマで、むくつけき仲間が一緒であったことにそれはそれは残念そうにしつつも――でもゴブリン戦車を倒した連中と一緒に行けばそれなりの武勲の現場に立ち会えるだろうというので、小妖精の吟遊詩人も一行に加わる。そうして滑り出した川の中。マップの上にDMは伏せたトランプを並べる。

 ここでDM柳田が準備したのは、裏返したカードによって生成するランダムマップと組み合わせた技能チャレンジ。ルールはこうだ。
 筏の前に横並びに並べられたカードは、それぞれ岩に割かれた川の流れとそこに存在するモンスター(たまに宝物)を表す。〈知覚〉判定に成功すれば、川の流れの先を偵察したものとして、カードをひっくり返して自分たちの前に別れる流れのそれぞれに何がいるかを確認できる。どの流れに進入するかを選べるが、それには〈運動〉判定が必要。また、遭遇したものにどう対処し得たかは集団判定にて成否を確認。ちなみにコボルドに遭遇して撃退に失敗すると視聴者からヤジられる。

 DMが提示した偵察の難易度は、隣のカードを1枚なら難易度20。2枚目になると難しくなって24、3枚目では28。28ともなると、12レベルの技能判定でも"困難"な値なのだけれど、エルカンタールの〈知覚〉は1d20+20、構えを使えば1d20+22で判定する。さすがに走り下る筏の上から激流の先を見通す作業に出目10(危険がない場合には1d20で出目が10だったと見なし、ダイスをロールすることなく判定できるというルール)は適用できないと宣言されるも、ダイスの目にはそう派手に裏切られることもなく行く手に待ち受けるものを難なく見通してしまう。
 彼らの道行きがどうなったかというと……。
キャンキャンうるさいコボルドを叩き斬り、悪臭を放つ爬虫人類トログロダイトも(鼻をつまんで)叩き斬り、水浴び中のドラゴンが見えたので、これは手回しよく大回りして避けて通る。
そうこうしているとドラゴンのいた支流の先にどうやら財宝が見つけたのだけれど、大回りしすぎたせいでそこに筏を進めるのには失敗。なので代わりに遭遇したコボルドに八つ当たりしようとしたところ、見つけた財宝をみすみす逃して悔しがっていたエルカンタールとアーズ(筏を操るのはアーズの役目だったのだ)は、何ということかコボルド如きに遅れをとって視聴者にさんざんにヤジられ(それも含めてペナルティ。「m9(^Д^)まさかコボルドに負けるなんて!」「(ノ∀`)アチャー」「コボルドに負ける伝説級とか……引くわー」等々)……そんなこんなで筏を進めていくうちに、目の前になだれ落ちる水のカーテンが見えてくる。さあ、もうひといき、というところで。

 背後にそれはそれは剣呑な……気配、どころの話ではない。ばかでかい黒竜が筏のすぐそばに迫っている。いくら伝説の勇者たちとはいえ、足場としては最低の水の上、支えとなるのも頼りない筏ひとつ。それにここで帯びている使命はグラントリへの伝令で竜退治ではない。竜の目には木っ端も人の乗る筏も似たようなものに映ってくれることを祈りつつ、岩陰になんとか身を隠そうとするも――ローズマリーが言い張るには「歴戦の勇者の気配を消せるものではなかった」とか。竜はめざとく筏を見つけ、すさまじい風切り音とともに舞い降りてくると、ごお、酸の奔流を吐いた。全員がこっぴどく火傷を負っただけで済んだのは不幸中の幸いだったに違いない。バラバラになるかと思った筏は次の瞬間、目の前の水のカーテンの中に突っ込み、するとそこは静まりかえった洞窟の中。

 ベスビア川は流れの途中で丘の下に潜り込み、地下を流れている。筏はちょうどそこに来かかったのだ。そうして一行の――特に自然に近しい狩人であるエルカンタールの心の中に、涼やかな声が響く。丘の下の洞窟は、精霊の休らう地なのである。

「勇者たちよ、よくぞわたくしの呼び声に応え、ここまで来てくれました。わたくしはこの地を守る精霊ラファエル、あなたがたこそこの地より悪しきものを追い払って下さるのだと信じています。さあ、聞きたいことをお尋ねなさい、答えましょう」

 聞きたいことをお尋ねなさいと言われて、普段のTRPGであればPLたちは知恵を絞ってヒントを引き出せそうな質問を考えることになるのだが、今回も前回と同様に選択肢が提示され、視聴者アンケートを取ることに。選択肢は4つ。

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 4番の何もきかないってのだけは勘弁してーとPLたちが言う中、みんなが選んでくれた質問は「伝説の剣について」。この場にいるPC、アーズの知りたいことに応じてくれた形に。では、とDMは語り出す。

――この地には3振りの有名な魔剣が存在すると言われる。
一振りすれば炎を巻き起こし、相手を燃え上がらせる剣:フレイムタン
 一振りすればふぶき、相手を一瞬にして凍らせる剣:フロストブランド
 一振りすれば雷が走り、相手を電撃でしとめる剣:ブレード・オヴ・ストームズ
 この最強3本剣がどこかにあるという。
本当なのか、やはり伝説なのか。
さらに暗黒竜を倒したと言われる伝説の剣、クラッサスの剣がこの地の奥深くに眠っている。

アーズ:「あれ、ヤマノウの剣じゃないんですか?」

 そう、アーズはこの伝説を最初から知っていた。しかし、彼の知る伝説の剣の名前は"ヤマノウの剣"。精霊ラファエルが今ここで語った名前はそれと異なっている。

ラファエル:「かつてはその剣はそのように呼ばれていました。しかし今は持ち主が代わり、今の持ち主の名で呼ばれているのです」

 クラッサスの剣、それが恐らくは、僕の見いだすべき――そして僕の名を刻むべき剣。そうアーズがひとりごちるうちに、筏は丘の下を抜け、再び陽光のもとを行く。そうして間もなく岸に着く。切り立った崖下から始まる道を少しばかり行けば、もうグラントリシティだ。


マンスコーピオンの待ち伏せ

 陸に上がった瞬間、エルカンタールは顔をしかめた。

エルカンタール:「待ち伏せされている。あの岩陰に……臭いからするとおそらく3体、その向こうに小さく2体見えるでしょう。トログロダイトだ。それから岩山の上に……何だろう、あの大サソリの上に人間の体が継ぎ合わさったような……」

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 川下りの間中漂っていた、腐った油と金気臭さ、それに獣臭の混じった、鼻から目へと刺し通すような刺激臭が、上陸したとたん急に強くなった。それだけではない。緑がかった岩、赤みかかった岩とそれぞれ見えるのは、岩の上に這う、人の体の何倍もあるような大サソリ。それだけでも厄介だというのに、その背には大鎌を持った人の上半身が生えているではないか。

エルカンタール:「マンスコーピオンです。サソリの毒と戦士の鎌と、そして石化だの雷だの、厄介な魔法を使って寄越す。血管を流れるのは炎で、返り血を浴びるのも危険――」

 言いながら弓を引き絞り、まさか気づかれているとは夢にも思っていなかったろうトログロダイトを無造作に射殺す。おお、じゃあ残りは俺が片づけるぜとブラントが威勢良く突っ込むが

ブラント:「くせぇッ! くせぇんだよこいつら!!」

 たたらを踏んだブラントの剣は勢いよく空を斬り、そのとなりに飛び込んだアーズの大剣も見当違いの方向を薙いだ。

ブラント:「だからこいつらくせぇって言ったろうがッ」

 興奮状態にあるトログロダイトは、勇者の太刀筋を狂わせるほどの悪臭を放ち、それがすなわち最大の防御にして攻撃となるのである。臭い臭いと緊迫した戦場とも思えぬ怒号が上がる中で、エルカンタールの胴を、岩山の上から放たれた鈍い灰色の光条が薙ぐ。マンスコーピオンの放った魔法、生ける体を冷たき石へと変える呪い、フレッシュ・トゥ・ストーンである。
にわかに自由を失い文字通り石のように重くなった足を、しかしそれでも引きずってエルカンタールはよろよろと走る。
 どうにか射線を確保し、岩陰めがけて矢を放つ。
 喉元を射切られ、トログロダイトが1匹、あっけなく倒れる。と同時に原始の力に通じる狩人の放った矢はこの地に眠る精霊の力を呼び起こす。トリンタン村へ向かう街道でゴブリンどもを焼き殺したのと同じ緑の焔(ヴァーダント・フレイムズ)が燃え上がり、はぜる火の匂いがトログロダイトどもの悪臭をかき消す。

ブラント:「助かったぜ。じゃあ、俺も霊の力を借りるとするかね」

 "聖騎士"ブラントがぼそりと呟いた。全身に力を込めて大鎚を大地に叩き付け、何事か祈る――いや、それは本当に祈りの言葉か? ブラントの全身から黒く冷たい気が立ち上り、トログロダイトどもに襲いかかる。精神を切り裂くもの(スピリット・ハロウ)――霊は霊でも、どう見ても悪霊だ。

ブラント:「ケンカにゃあ手段は選ぶなってなァ、コード様の御教えなのよ」

 そう嘯くハーフオークの背後で哀れなトログロダイトの1匹は精神を悪霊の影に喰い破られて即死、もう1匹は命はあるもののふらついて一歩も動けず、エルカンタールの起こした炎の中で立ち尽くしている。もうじきこのまま焼け死ぬだろう。

 さすがにまずいと思ったのか、赤みがかったマンスコーピオンもまた魔法を放つ。雷撃がブラントを打ち、さらに岩雪崩のようにサソリ人が鎌を振りかざし飛びかかってくる。
 そのとき、鈴を振るような声がとんでもないことを叫んだ。

ローズマリー:「じゃあ、そいつはそっちでお願い、あたしは緑のを食い止める!」

 光る小鳥のような小妖精が言うこととも思えない。が、ローズマリーは本気だった。僥倖の歌(ソング・オヴ・セレンディピティ)で因果率をねじ曲げておいた上で放つ目眩ましの閃光(レッサー・フラッシュ・オヴ・ディストラクション)は、巨大なサソリ人の目を射潰し、さらにキチン質の外骨格の小さな継ぎ目を鋭く突いて、柔らかい体組織を斬り裂いた。

アーズ:「よし、じゃああとは僕に任せろ!」

 魔剣探索者アーズがその剣―― "達人の刃(マスターズ・ブレード)"――の力を解放した。己を刃と一体化させるウェポン・ユニティの構え、そして苛烈なる"怒りの猛攻(バトル・ラス)"の構え。通常ならば、一時に剣士が取りうる構えは1つのみ。しかし己を通じて発揮された技をこの魔剣は覚えているとでも言うのか、アーズと剣は二つの構えを融通無碍に行き来しているのである。
 赤いサソリ人の甲に叩き込まれた刃は外骨格の一番もろい場所を精確に捉え、大きく抉った。必殺の一撃に半ば切り離された節足動物の下半身が奇妙な方向にねじれる。そこへ瞬きする間も与えずさらに一撃、そして振り抜かれた剣の軌跡は自然な円を描き、のたうつ身体を再度斬り裂いている。――具体的にはアクション・ポイントを使用して追加の近接基礎攻撃を与えたのち、伝説級のスレイヤー(ミシック・スレイヤー)の特徴、 "ミシック・スレイヤーのアクション"が発動したのだ。これにより、さらにもう一度近接基礎攻撃ができるのである。1ラウンドに3回、打撃の波濤が赤のサソリ人を襲う。
 このままでは赤のサソリ人が死ぬ。それではたまらないので、たった1匹残ったトログロダイトがアーズに突撃した。迎え撃つアーズの《突撃迎撃》は不発、しかし

ローズマリー:「運命なんか、決まってないから!」

 未来からの警告(プレシェント・ウォーニング)――ほんのわずか時間をさかのぼって運命に干渉し、警告を発する吟遊詩人の技。アーズの剣は再度トログロダイトの体に叩き込まれている。

 こしゃくな。片づけるべきはこのチビッコか。緑のサソリ人の大ハサミがローズマリーのちっぽけな身体を挟み込む。が、それも一瞬。エルカンタールの放った闇の炎はサソリ人の身体を取り巻き、岩の隙間に伏せたその輪郭を明らかにする。そこに重ねて射こまれた矢の一撃を受けたサソリ人が岩山から転がり落ちるはずみに、もう小妖精は自由の身。さらに今度は赤いサソリ人めがけて放たれた矢が柔らかい腹を大きく抉る。と。

 既にその動きは意志によってコントロールされたものではない。生存本能に衝き動かされるままに傷ついたサソリ人は大きく跳ねた。敵の真ん前に飛び降り、全身から炎の血を吹き出す。サソリ人は確かに致命傷を与えたエルカンタールに一矢を報いていた――が、反射だけで放たれた攻撃の悲しさ、その血はちょうど狩人の矢によって射落とされていた仲間のサソリ人をも焼いている。そこへブラントがずいと顔を突出し、

ブラント:「さて、じゃあそろそろ大人しくしてもらおうか。この世にはなぁ、正義って奴があるんだ。で、きさまら悪党は報いを受けるようになっててなぁ……」

 ブラントが言う台詞とも思えないが、そのありがたいお説教(確かな正義/サートン・ジャスティス)が機能する限り、すなわちブラントにマークされている限り、サソリ人どもの目は眩み、手は震える――どうも何か悪い魔法にしか見えないが。

 ローズマリーの紡ぐ歌の魔法がサソリ人どもの弱点を暴き、アーズの剣が、そしてエルカンタールの矢がサソリ人の体力を削ぐ。さらにブラントが雄叫びを上げる。トゲつきの大鎚が唸る。相変わらず聖騎士らしからぬ血に飢えたかのような一撃が炸裂し、赤いサソリ人はあっけなく絶命した。

 残る敵は1体。吹き出した返り血さえももはやさしたる威力はなく、そしてローズマリーが加えた一撃でサソリ人の足から力が抜けたが……

アーズ:「なんだ、まだ死にきってなかったのか」

 立ち去りかけたアーズがふと振り向き、ずかずかとサソリ人に歩み寄った。死んだ振りをして切り抜けようとでも思ったのだろうか、だが、叩き込んだ剣の下からくぐもった悲鳴が上がり、そして今度こそそれきりだった。


公子とその友人

 あとは然したる厄介ごともなく、グラントリシティに着いた。門番は一行を見ると恭しく一礼し、どうぞ公子にお目通りをと言った。その前に、というので風呂と新しい服も用意された。

ローズマリー:「やっぱり伝説の吟遊詩人が一緒だと違うわよねえ♪」

 しかし。
 一行がまかりでると、グラントリ公子マラキー・ドゥ・マライは(なんと)ブラントのほうを向いて「ご苦労であった」と言った(ローズマリー:「へ?」)。

ブラント:「や、まったく苦労しましたね。ひっでェもんだ……でした」

 そしてブラントはというと、珍しく面頬をきちんと上げ、きちんとひざまずき、そしていつもの口調を微妙に改めて――改めようと努力して、返答していた。ここまで来るまでの経緯、砦の隊長からの伝言もすべてブラントの口から報告された。これは何事、と愕然とする他の3人に公子は苦笑しながら「彼は私の部下にして信頼する友人だ」と言った。

ブラント:「ついでに血のつながりもあるんですよ。遠ーーーーーいけどね」

 あまりにも意外な発言だったが、一行がそれについて問いただす前に「そういえばグレルダンは」と公子が言ったので沙汰止みになってしまった。

ブラント:「奴は陸路を行きました。彼のことだからもう既に街には着いているはずですが……」
公子:「それでまだここに到着しないというのは、あの男のことだ、ろくな訳も言わず正面から押し通ろうとして門番ともめているのであろうな……まぁ、なんとかしよう」

 そこまで言うと、公子は急に表情を引き締めた。

公子:「さて、遠路ご苦労だったが……ここまでの道を踏破した貴君らと見込んで頼みがある。アエングモアのラフィールトン市まで行ってはもらえないだろうか」

 ラフィールトン市はシャドーエルフの国アエングモアの中でも比較的開けており、他種族との交流もある街である。そこに行って、シャドーエルフと周囲の人間や他種族との関係を探り、もし何か陰謀が動いているようならそれを暴いてきてほしい――それが公子の依頼だった。

公子:「とはいえ、もう既に街道は怪物どもの勢力下にあるやもしれぬ。である以上、大事をとって私は君らのために飛空艇を用意させた。仕事はラフィールトンについてからだ。どうかしばし安全な空の旅を楽しんでくれたまえ――さしもの敵も空路を襲うことはできまい!」

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DM:「というわけで、街道、川と来て、次は空路です。え、飛んでいるものは落ちる? なに疑ってるんですか、公子さまの力強い保証付きですよ? ……さぁ、来週は優雅な空の旅をどうぞ!!」

 DMの言葉を余所に、どうやったら落ちても死なずに済むかというPLたちの会話を残しながら今週の配信は終了。

 さて、来週は……あんぜん、ゆうがな、そらのたびをおたのしみに!!

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