ミドンヘイムの混乱もひとまず収まり、一行はしばしの平穏を満喫していた。
久々に旅の仲間で集まって、食卓を囲む時間を得る。
はじまりの頃に比べると、皆、それなりの地位を得て、身なりも変わった。
冒険の旅は確かに、皆を成長させたのだった。
と、ウルディサンはグレッチェンに魔力のよどみを感じ、彼女に声をかけた。
彼女は仲間から少し離れ、ウルディサンにだけ、自分の眼の変化を明らかにした。
ウルディサンは魔術の使い手として、グレッチェンの邪眼をそれと識別した。
そしてグレッチェンに、少しずつその眼のことを説明した。
アンヤに呪いをかけてしまったことを、グレッチェンは知ることになった。
二人きりでの内緒話によって、仲間たちへ、あらぬ誤解を植えつけたことは余談である。
ひとときの緩やかな時間は、使者の到来によって打ち破られた。
森より襲来した死者とラットマンの群れが、ミドンヘイムへ迫っている。
その知らせはミドンランドを稲妻のように駆け巡った。
選帝侯カタリーナは戦の用意を整え、州軍を率いて、脅威と対峙する覚悟を決めた。
カタリーナは、バルデマーら一行にも助力を求めた。
先の事件によって、救国の英雄と尊敬されている皆であれば、軍を率いるにふさわしいと信じての要請である。
グレッチェンは軍曹として、騎士団に合流する。
ヨハンはシグマーの戦闘司祭として、鞭打ち苦行者たちの軍を率いることになった。
グルンディの噂を聞いて馳せ参じたドワーフの一隊が、グルンディとともに戦場へ立つ。
ウルディサンは遠距離から敵を狙うハンドガンナーたちを導く。
ハーフリングの伝統的なシチュー専用射出機、ホットポットとともに、ウドーは砲撃手を務めることとなる。
そしてバルデマーは音楽隊として、州軍の本隊の中に立つのだった。
士気も高く戦場へと赴くグルンディ、一方で困惑顔のウルディサンや、タダ働きはご免だという態度のウドー。
グレッチェンはカタリーナへ、有力な魔術師に会いたいという個人的な報酬の約束を取りつけた。
戦いへの想いはそれぞれであるが、しかし皆、武器を手に、兵たちを率いて戦場へ向かうのだった。
街道を埋め尽くすほどの大軍。それらが人々を殺し、死者を増やして仲間に加えながら、進軍してくる。
カタリーナが皇帝陛下の元へ参じ、兵器を借りてくるまでの間、これらの大軍を押しとどめること。
それが、皆に課された使命である。
バルデマーの音楽が響き、皆へ指示を与える。丘の上へ陣を敷き、地の利を得よう、と。
一同はその選択に従って、敵を眼下に一望できる場所へ、兵を並べたのだった。
敵はアンデッドにスケイブンども、そして戦いを嗅ぎつけてきた、猪に跨ったオークども。
それらの中心には、死霊をまとう巨大な骨の怪物がいる。
まとわりつく亡霊に浮足立ってしまう騎士団たち。
だが、ドワーフたちはスケイブンどもを追い散らしてゆく。
ウルディサンとヨハンは、それぞれに魔術を唱えては味方を支援し、敵に打撃を与える。
ハンドガンナーたちの銃撃、そして大砲が敵軍に降り注ぐ。
ウドーの射出したとっておきの熱々シチューは、オークやスケルトンどもを沈めた。
騎士たちも勢いを取り戻し、馬を駆って戦場へ斬り込んでいく。
そしてついにヨハンの祈りが通じ、彼の魔術にシグマーの加護が与えられ、敵軍の中で小彗星がさく裂した。
しかし、死者や亡霊の攻撃が、騎士や州軍の命を奪う。
スケイブンどもの思わぬ猛反撃に、ドワーフ軍が不意をつかれて崩れかかる。
それでも皆は踏みとどまり、戦い続けた。
犠牲は出たが、戦場の風は、わずかだがこちらへ勝利を呼びこんでいるように思われた。
カタリーナの馬が戦場へ駆けこんできた。
「皆、よく耐えてくれました」
彼女が連れてきたのは、強固な装甲に固められた戦車、蒸気機関で動くスチームタンクであったのだ。
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