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文=元川悦子

 台風の接近で、大荒れの空模様となった9日の武漢スポーツセンター。試合が刻一刻と進むにつれて、強風と横殴りの雨がひどくなってくる。そんな中、日本は序盤のリスタートからの失点を武藤雄樹(浦和)の一撃で跳ね返し、勝利につながる追加点を猛然と狙い続けていた。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は膠着状態を打開できないと見るや、後半15分過ぎに1枚目の交代枠として興梠慎三(浦和)を川又堅碁(名古屋)に代えて投入。それでもゴールをこじ開けられないチームのテコ入れ策として、柴崎岳(鹿島)、浅野拓磨(広島)といったカードを次々と切った。後半29分にトップ下の武藤と柴崎を入れ替えた時には「韓国戦でいい味を出した倉田(秋=G大阪)を出すべきでは」という声が報道陣からも上がったが、指揮官が選択したのはA代表経験と実績で上回る若手の方。倉田は黙ってベンチから戦況を見つめるしかなかった。

「ホンマ、今日が一番楽しそうだったんで、入って一緒にやりたかった。引いた中国だから支配できるんじゃなくて、1戦目のアグレッシブな北朝鮮とか、力がある韓国相手でもあのくらいのポゼッションして自分たちのペースでずっとやらないと今後、もっと強いチームには勝っていけない。相手どうこうで変わるんじゃなくて、あれをベースにやっていきたいですね。正直、疲労が抜けたというのもありますけど、みんなしっかり練習してコンビネーションとかフィジカルが上がってきたから、ああいう戦いができたのかな。だけど、結果を見たら1-1で終わってる。どれだけ回しても引き分けなんで、もっと点取れるようにしていかないといけないかなと思います」と本人は1-1で終わった最終戦の戦いぶりを複雑な思いで受け止めていた。