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 じり、と魔力を帯びた猟犬たちが近づく。メルティは跪いたまま身震いした……。
 というのは見せかけ。
「げえっ?」
 敵が驚愕する間に、事は終わっていた。
 メルティは邪悪に頬肉を吊り上げ、レスリングのタックルのような低い姿勢で、爆発的な勢いを見せつけた。人間の何倍も俊敏な犬たちでさえ、避ける暇などありはしない。続けざまに魔力の込められた当て身を食らわせ、昏倒させる。
 一丁上がり。そう呟いて魔女は冷たい瞳で敵を睨む。
 激減していたはずの魔力が――元通りになっていた。
 特段に上昇しているわけではない。だが世界三大魔女と呼ばれる彼女が、何者も食い破らんばかりに凶悪な視線を剥き出しにすれば、相手を畏縮させるには充分だった。
「お、お前、どうして!」
「犬アレルギーってのは真っ赤な嘘ピョン☆ ってことだよ。やーい、ひっかかったひかかった」
「んな、んなバカな……! それじゃあまさか!」
「そうだよ。この私が透視魔法で覗かれていることに気づかないとでも思ったの? この手の魔法を見破るのは、相当の熟練者じゃないと無理なんだけどね」
「ち、ちくしょうめ! 俺たちをたぶらかしやがったのか! さっき魔力を下げたのもわざと……」
「動くな。動くと殺す」
 メルティの言葉は、どんな魔法よりも強烈な金縛りだった。
 魔女の青い瞳の奥に、底知れぬ闇が横たわっている。リベンジャーは今、憐れな獲物に成り果てた。指先ひとつ動かせず、その闇に飲まれていた。
「よし、そのままで聞いて。こんな芝居を打ったのは、ちょっとした目的があるからなんだ。目的というより遊びなんだけどね。言うことを聞いてくれたら、君たちを殺さないでおいてあげるよ。選択肢はひとつしかないと思うけど、返答は?」