橘川幸夫放送局通信

政治状況評論。自民党総裁選と、新しい政党の構想つにいて。

2012/10/09 04:40 投稿

コメント:7

  • タグ:
  • 自民党
  • 民主党
  • 総選挙
政治状況評論。自民党総裁選と、新しい政党の構想つにいて。

1.自民党総裁選について

 自民党総裁選は安倍晋三氏の勝利に終わった。前回の衆議院選挙が、自民党への圧倒的な逆風の中で行われ、いかにも戦後、自民党に投票し続けたという田舎の爺さんも「今回だけは、自民党にお灸をすえなければならない」と、民主党に投票した。しかし、そうやって勝利した民主党は、戦後自民党政治の点検と反省を踏まえた政治を進めることなく、浮き足立った素人政治と内ゲバによって、現在は、松下政経塾党とも言われる、小粒なサラリーマン課長のような政治家によって国家が運営されていて、多くの国民はうんざりさせられているだろう。

 しかし、それでは民主党に失望したから、もう一度、自民党に戻そうという動きになるのかというと、そうでもないだろう。まして、自民党が戦後自民党の問題点を反省して、新たな再生をはかるということを示して復活するならともかく、旧来の自民党そのものの象徴である岸信介、佐藤栄作の血脈を引く安倍さんであっては、国民も戸惑うだけだろう。投票用紙を握りしめ、投票先も決められぬまま、事態の様相を見守っているという状況ではないか。前回の衆議院選で、どこかの1党に勝たせすぎるとロクなことはない、という認識は持ったから、次回の投票行動は、どこかの党が圧勝するようなことを避けたいという意識が働くだろう。

 今回の自民党総裁選で、一つ注目したのは、西村康稔氏の動向である。西村さんは、安倍側近として知られており、前回の総裁選では、谷垣禎一氏、河野太郎氏らとともに立候補して敗れた。その時は、安倍さんが支援をしていた。その西村さんが今回、安倍さんの総裁選の推薦人に入らず、立候補を思い直すように進言している。

 西村さんのブログには、こういうことが書かれている。

「安倍さんについては、元々私との縁が深いことは皆さんよくご承知のことと思いますが、実は、5年前に総理を退任した時の経緯も含め『今回は出る時ではない』とご本人にも強く申し上げてきたところです。最も尊敬する素晴らしい政治家で、日本にとって大事な存在です。今一度閣僚に就任され、元気なところをアピールされてからの方が良いのではと考えていました。」

 自民党が旧来の自民党政治を反省することなく、旧来の政治手法そのままの、力の政治を行えば、再び火だるまになることは目に見えている。


2.新しいコンセプトによる政党

 次回の衆議院選挙は、どう考えても、どこかの一政党が圧倒的な勝利をするということは考えらない。政権は連立にならざるを得ず、ねじれ国会は更にねじれをますことになるだろう。この際だから、むしろ多くの中小規模政党に分裂していった方がよいのではないか。戦後自民党はさまざまな価値観を持つ人が政権維持のために呉越同舟し、そのために「懐が広い」とも言われた。しかし、そのことが結果的に政策の無責任体制を生んでしまった。これからの政党は、かつての政治体制では出来なかったことにトライし、失敗したら責任をとって解党するぐらいの気持ちが必要なのではないか。組織の維持だけを目的化した政治は、国民にとって迷惑な話だ。

 先日、政策工房の原英史くんと雑談してて、彼は、国会における「野党」の必要性を語っていた。現在のような大連立状態だと、政権を批判する野党の意味が失われている。今後、中規模政党による連立政権やオリーブの木構想などが現実化すると、野党勢力も政権にからめとられてしまう。そこで必要なのは「政権を目指さない野党」というコンセプトによる政党である。つまり「万年野党」という党名であるw 

 議員になれば、調査権はあるし調査予算も出るので、政策の根幹にかかわる情報を入手出来、問題点も指摘出来る。本来であれば、ジャーナリズムが果たすべき役割であるが、御用マスコミには期待出来ないし、在野のジャーナリストには荷が重すぎる。つまり、問題意識のあるジャーナリストを中心に「万年野党」として立候補してもらい、批判勢力として国会で活躍してもらう。しかも、この党は、綱領の中に「政権には入らない」と明文化させるので、首相指名選挙では白票を投じる。党よりも議員個人のプレーを尊重する。むろん、批判だけではなく建設的な政策の提案も行う。提案はするが実現は政権に委ねる。言葉の正確な意味でのジャーナリズムでありシンクタンク機能を持った政党である。

 現在の国会では共産党が批判勢力という役割を担っているのだと思うが、彼らは政権奪取が目的だから、一般国民多数は投票しないだろうが、「政権を目指さない万年野党」であれば、「投票先がない」という多くの国民の投票行動の一時的な受皿になりうる。更に優秀な議員候補で、所属したい政党がない、というような人も、とりあえず万年野党で政治力・政策力を鍛えてもらうことも出来る。

 原くんとは、かなり本気で「万年野党」構想を語り合った。こうした、根本的に新しい発想を導入しない限り、国民の政治への不満は、底なし沼に沈んでいくだろう。


ブロマガ会員ならもっと楽しめる!

  • 会員限定の新着記事が読み放題!※1
  • 動画や生放送などの追加コンテンツが見放題!※2
    • ※1、入会月以降の記事が対象になります。
    • ※2、チャンネルによって、見放題になるコンテンツは異なります。
橘川幸夫放送局通信

橘川幸夫放送局通信

橘川幸夫

月額:¥110 (税込)

コメント

安倍氏の出処進退のあり方については、国民がどう思おうとも、ご本人の健康が9割がた決するようなのにも関わらず、殆ど公開情報として出て来なかった、本人がやると決めたからには本人から明かさないようにするのはそうですが、マスコミも特に病状について追っていないのか?という総裁選中の報道には、残念でした。
そういう意味では、安倍氏の側近にも病状と前回の経緯を正確に覚えている人が忠言出来るというのは、まだ希望がありそうです。最後は本人が決めるから、結局今の状況だと変わりそうにありませんが。

本題の万年与党と万年野党の問題ですが、同じ国会内に置くとやはり旧社会党同様、いい意味では国民皆年金を与党と共に表で達成したのは評価出来ますが、国対レベルではやはりなだめすかしながらというのは厳然としてあったのは事実です。
どのような政党があったとしても、影響力を考えるならばある程度制度内での競争・談合は避けられませんし、それは制度自身を守る方向が強まります。
それに日本の政治制度には、臨調や経済財政諮問会議など官邸主導で達成出来るものもあると考えると、官僚とのツノの付き合い、審議会のことなど、十全に活用すれば出来ない事もないように見えます。

ただ民主主義全体を考えると、現在の不利益配分をしなければいけないという、経済と社会状況、社会保障費と使用済み核燃料の2つがビッグテーマだとは思いますが、局面でどう一市民として政治と関わるか、そもそも考えられるだけの保障を受けているのはどれくらいな等など、表の投票率だけでは推し量れないのがあります。

万年野党というと共産党ですが、NGOタイプの政党も世界には無くはないですが、日本ではNGOの類すら個人で作るにはまだまだ欧米に比べて困難です。勿論エリートタイプの人が率いるのもいいですが、それでは結局絡め取られる事に慣れるだけで、政治意識の向上には役に立たないでしょう。
なので、自民党の解党的な立ち直り、自分的にはあくまで一経団連、一大企業の代表としてなど、それは農家でも中小企業者でも、はたまた都市生活者でもいいですが、何を結局代表しているのかを表明して貰わないと、「国益」だと余りにも大きすぎて判然と出来ないというのがあるのを踏まえて、条件付き賛成です。これは決して国防・外交を二の次にしろという意味にはあらず。ただ衆院選に限ると現状、民意を反映するには国防向きませんし、そこは官僚と何が現状維持で何が事情変更か見極めないと、とても民意では直近のニュースに流されます。

あと直接は関連しませんが、現在の仕組みだと地域ごとによる勝ち負けで大半は決しますが、それもどこまで可能なのかについても政党は考えられるのでしょうか。国政レベルに反映出来る民意の標本作りが大事なのですが・・・。
この記事だけだと、国政を率いるエリートたちの意識を変えるにはという視点だけに見えたので、気になりました。

No.7 147ヶ月前

あと安倍氏についての評価ですが、彼は果たして力の政治によって敗れたのでしょうか。勿論小泉政権から100%引き継いだ議員の数はありましたが、それが100%安倍氏により使われたという事実は自分には見受けられません。
勿論、要所要所で、国民投票法や防衛省への格上げなど、イデオロギー的に対立しそうな事に一見出来てはいましたが、それも小泉政権からの調整の結果でしかないわけです。既にロードマップには登ってましたしね、この2つについては。

それよりも彼は甘すぎたという印象が強いです。勿論小泉政権では特定の派閥に対して、厳しく当たっていたというのを考えると、その後遺症を治さなくてはいけないというように動くのも当然かもしれませんが、結果的に可動範囲を狭める事になり、最後は側近たちだけで選挙もやった結果の敗北。病状についても触れられぬまま退陣直前までいたという、最悪の結果でした。
自分は完全な力の政治というのは、どこかで壊れるとは思いますが、それを小泉政権は絶妙な時期で乗り切ったという意味で稀代の政治家だとは思います、あの時自民党は身体だけ急成長したまま、頭がそれ以前のモノにすげかわった結果だと思いました。そういう所では批判の対象となりうるでしょう。

ですが、結局何がいけないというかは、当時の政治状況もあるので、完全に総理大臣だけのせいにするのも酷だと思います。そういうのもあるのか、制度論の話をしているのだとは思いますが。
ただ1つの元与党が解党しただけでは、その他の組織団体により乗っ取られてしまうだけですし、難しいですね←安直な結論

No.8 147ヶ月前
橘川幸夫 橘川幸夫
(著者)

>>8
ご丁寧なコメントありがとうございます。
政治家は個人の資質や能力だけではなく、どれだけのスタッフやブレーンを集められるかが大切だと思うので、安倍さんには良いブレーンがいるのだと思います。安倍さんも一度、外務大臣をやって、それから総理という選択肢があったのではないかと思います。万年野党は、まだアイデアレベルなのですが、いずれにしても、政党も、旧来のスタイルを踏襲するだけでなく、ベンチャービジネスのような、異質な発想でアプローチする価値はあるのではないかと思います。ただ、単なる何でも反対党では、国民の支持を得られないと思うので、積極的な政策提案が、必要かと思います。国政・地方行政など、それぞれ課題があるとは思いますが、いろいろ考えていきたいので、今後ともよろしくお願いします。

No.9 147ヶ月前
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事

継続入会すると1ヶ月分が無料です。 条件を読む

橘川幸夫放送局

橘川幸夫放送局

月額
¥110  (税込)
このチャンネルの詳細