最強戦ファイナルを戦った選手は対局中に何を考え、どう決断していたか? 気になる局面をピックアップし、直接選手に聞いてみた!
麻雀最強戦2013ファイナル決勝卓。あと一歩のところで最強位獲得を逃した魚谷侑未。昨年は女流プロ代表決定戦に出場するも予選敗退し、ファイナルの舞台には立てなかった。だが、今年開設された「近代麻雀プレミアリーグ」の前期にて魚谷は小林剛・鈴木達也・じゃいを相手に見事優勝しファイナルの切符を勝ち取った。今回、同卓する片山まさゆきをして「女流プロで一番強い」と言わしめる実力を持つ魚谷は、悲願の最強位獲得に向け、C卓で出場する。
並びは起家から魚谷・近藤誠一・江崎文郎・片山である。半荘1回トップ取りの最強戦システムで起家スタートは不利だといわれる。その起家を魚谷が引いた。人によっては、場所決めの牌を引いた(場所決めの牌がそのまま東1局の位置になる)瞬間、落胆あるいは喜びの表情を見せることすらある。
「起家スタートは嫌な感じはしませんでしたか?」
魚谷「嫌でした。起家は、離されてしまうと何も出来なくなる可能性があるので一発勝負では不利だと思っています。ただ、最強戦は起家で勝った記憶もあったので(起家引き率が凄く高いと思います)切り替えて考えてました」
東1局。親の魚谷はドラのがトイツの配牌を手にする。魚谷はメンツ手とチートイツの両天秤をかけながら手を進めていたが、8巡目にをポンしての後付けに向かう。
「チートイツの2シャンテンから、をポンしてバックの2シャンテンに取りました。その理由を聞かせてください」
魚谷「まだトイトイも見ていましたが、本線はバック。この手のこの巡目ではテンパイすらも危ういと思ったので、アガリを見たというよりはテンパイを取りにいった感じです。牽制も込みです。ラッキーであがれたらついてるなーくらいの印象です」
「結果、この局、1人テンパイとなりました。これはご自身としては満足の結果だったわけですね」
魚谷「ラッキーという感じです。元からアガリはさほど期待してなかったので」
2局続けて流局が続いた後、北家の魚谷が最初にテンパイを入れたのがこの形。
がドラ表示牌、は場に1枚飛び。ここで魚谷はヤミに構える。
「このヤミテンの理由を教えてください」
魚谷「全くアガリがあると思わなかったので、ヤミテンにしていました。ポロっと出ればラッキーくらいの気持ちです。」
「その後、近藤プロがを暗槓したところでリーチに踏み切ったわけですが、ツモ切りリーチだと愚形待ちを悟られそうな感じもありますが、そのあたりをどう思考されていましたか?」
魚谷「ツモ切りリーチは、愚形読みをされる可能性はありますが、カンの後のツモ切りリーチはその限りではないと考えています。そして、愚形読みされた場合の待ちに字牌は含まれにくいとも思います。裏ドラ次第で勝負手になる可能性のある手だと思いましたが、やはり全く自信はなかったので、のトイツ落としをすれば良かったなと思ってました。そうするとと引いてであがってました(追っかけリーチの江崎のでアガリがあった)。これはダメだった局です」
結果、魚谷は江崎の追っかけリーチのロン牌を掴み2600の放銃となった。だが、その後、東ラスでリーチ・ツモ・・ドラ1の満貫をツモり、トップ目で南場の親を迎えた。
南1局。魚谷の親番だが、ここは子方3人が厳しい攻めを見せた。近藤がオタ風のドラを片山さんからポン。江崎もマンズのホンイツ、片山さんもドラ切りからテンパイを入れ、ヤミに構えた。魚谷もチートイツのイーシャンテンで粘っていたが、ション牌のを引いてギブアップする。
「起家スタートなので、魚谷さんとしても、この局は連荘で突き放したいところだったと思います。こので止めたのは、もうテンパイ(連荘)も無理だと判断したからでしょうか?」
魚谷「近藤さんをホンイツ仕掛けと見るともかなり切りにくい牌でした。合わせ打ちですが、鳴かれる可能性はあるかなーと。ただ、近藤さんの先切りの手出しは少し気になっていて、もしかしたらチャンタ仕掛けや役牌アンコもあるのかなーと思いました。も役牌アンコの手の形だとかなり鳴かれ易そうな牌なので切れませんでした」
そして魚谷・近藤の親が流れた南3局。近藤が2フーロ+暗槓のトイトイ仕掛けでテンパイを入れていたところ。魚谷の手もイーシャンテンになっていた。
魚谷はここでを切り、近藤の満貫へ放銃となる。
「魚谷さんはドラ3のイーシャンテン。ここで切りを選んだ思考過程を教えてください」
魚谷「近藤さんの序盤の切り出しが→である事。トイトイ仕掛けの場合、中張牌ばかりが残ってしまうと仕掛け難いと思った事からはかなり当たり難い牌だと思いました。、の選択に後悔はありませんし、トップ目とは言え、2着目の江崎さんとは4200点差ですぐ捲られますし、ラス親の片山先生もいるので、まだ加点が必要だと思っていました。そして、ドラが重なった時点で勝負出来る手牌だと思いました。押すか押さないかの判断としては、押さない選択肢もあったのでしょうが、私は一発勝負のこのルールでは押し有利だと思いました」
「が通ったとして、その後テンパイが入ったらどうしてました?」
魚谷「引きはもちろん切りリーチでハネ満をツモりに行く予定でした」
「で満貫の放銃となったわけですが、これは想定していない待ちだっただけにショックは大きくなかったですか?」
魚谷「ショックはあまりなかったです。『うーん。押さないべきだったかなぁ』とはぼんやり思いましたが、仕方ないから切り替えてオーラス頑張ろう!と思いました」
オーラス、トップ目の近藤と魚谷との点差は5900点差。その魚谷に条件をキッチリ満たすチートイツドラ2のテンパイが入った。しかも4巡目。
ただ、イーシャンテンになったのは2巡目で、そのとき捨てたを3巡目にカブり捨てている。このを捕まえていれば、4巡目にドラのをツモってあっさりケリがついていたのである。
この後、魚谷は次々に狙いごろの牌に待ち変えをする。
麻雀最強戦2013ファイナル決勝卓。あと一歩のところで最強位獲得を逃した魚谷侑未。昨年は女流プロ代表決定戦に出場するも予選敗退し、ファイナルの舞台には立てなかった。だが、今年開設された「近代麻雀プレミアリーグ」の前期にて魚谷は小林剛・鈴木達也・じゃいを相手に見事優勝しファイナルの切符を勝ち取った。今回、同卓する片山まさゆきをして「女流プロで一番強い」と言わしめる実力を持つ魚谷は、悲願の最強位獲得に向け、C卓で出場する。
並びは起家から魚谷・近藤誠一・江崎文郎・片山である。半荘1回トップ取りの最強戦システムで起家スタートは不利だといわれる。その起家を魚谷が引いた。人によっては、場所決めの牌を引いた(場所決めの牌がそのまま東1局の位置になる)瞬間、落胆あるいは喜びの表情を見せることすらある。
「起家スタートは嫌な感じはしませんでしたか?」
魚谷「嫌でした。起家は、離されてしまうと何も出来なくなる可能性があるので一発勝負では不利だと思っています。ただ、最強戦は起家で勝った記憶もあったので(起家引き率が凄く高いと思います)切り替えて考えてました」
東1局。親の魚谷はドラのがトイツの配牌を手にする。魚谷はメンツ手とチートイツの両天秤をかけながら手を進めていたが、8巡目にをポンしての後付けに向かう。
「チートイツの2シャンテンから、をポンしてバックの2シャンテンに取りました。その理由を聞かせてください」
魚谷「まだトイトイも見ていましたが、本線はバック。この手のこの巡目ではテンパイすらも危ういと思ったので、アガリを見たというよりはテンパイを取りにいった感じです。牽制も込みです。ラッキーであがれたらついてるなーくらいの印象です」
「結果、この局、1人テンパイとなりました。これはご自身としては満足の結果だったわけですね」
魚谷「ラッキーという感じです。元からアガリはさほど期待してなかったので」
2局続けて流局が続いた後、北家の魚谷が最初にテンパイを入れたのがこの形。
がドラ表示牌、は場に1枚飛び。ここで魚谷はヤミに構える。
「このヤミテンの理由を教えてください」
魚谷「全くアガリがあると思わなかったので、ヤミテンにしていました。ポロっと出ればラッキーくらいの気持ちです。」
「その後、近藤プロがを暗槓したところでリーチに踏み切ったわけですが、ツモ切りリーチだと愚形待ちを悟られそうな感じもありますが、そのあたりをどう思考されていましたか?」
魚谷「ツモ切りリーチは、愚形読みをされる可能性はありますが、カンの後のツモ切りリーチはその限りではないと考えています。そして、愚形読みされた場合の待ちに字牌は含まれにくいとも思います。裏ドラ次第で勝負手になる可能性のある手だと思いましたが、やはり全く自信はなかったので、のトイツ落としをすれば良かったなと思ってました。そうするとと引いてであがってました(追っかけリーチの江崎のでアガリがあった)。これはダメだった局です」
結果、魚谷は江崎の追っかけリーチのロン牌を掴み2600の放銃となった。だが、その後、東ラスでリーチ・ツモ・・ドラ1の満貫をツモり、トップ目で南場の親を迎えた。
南1局。魚谷の親番だが、ここは子方3人が厳しい攻めを見せた。近藤がオタ風のドラを片山さんからポン。江崎もマンズのホンイツ、片山さんもドラ切りからテンパイを入れ、ヤミに構えた。魚谷もチートイツのイーシャンテンで粘っていたが、ション牌のを引いてギブアップする。
「起家スタートなので、魚谷さんとしても、この局は連荘で突き放したいところだったと思います。こので止めたのは、もうテンパイ(連荘)も無理だと判断したからでしょうか?」
魚谷「近藤さんをホンイツ仕掛けと見るともかなり切りにくい牌でした。合わせ打ちですが、鳴かれる可能性はあるかなーと。ただ、近藤さんの先切りの手出しは少し気になっていて、もしかしたらチャンタ仕掛けや役牌アンコもあるのかなーと思いました。も役牌アンコの手の形だとかなり鳴かれ易そうな牌なので切れませんでした」
魚谷「は自分の目からワンチャンスの牌で場に打たれた瞬間に、合わせたい!!!って思ったんですが、なんとか耐えました。ホンイツやチャンタだとキー牌になってそうな牌だったので。自分の読みの中で近藤さんに鳴かれる可能性の高い牌3枚が残ってしまったので、一度バックしました」
結果、仕掛けた2人の手は進まず、片山も仕掛けに対しオリたため全員ノーテンで流局した。
「この局、全員ノーテンで流れたときの心境を教えてください」
魚谷「全員ノーテンの時というより、近藤さんの手出しを見た瞬間に『あー、切らないで耐えて良かったー。鳴かれてたわー』と思いました」
結果、仕掛けた2人の手は進まず、片山も仕掛けに対しオリたため全員ノーテンで流局した。
「この局、全員ノーテンで流れたときの心境を教えてください」
魚谷「全員ノーテンの時というより、近藤さんの手出しを見た瞬間に『あー、切らないで耐えて良かったー。鳴かれてたわー』と思いました」
そして魚谷・近藤の親が流れた南3局。近藤が2フーロ+暗槓のトイトイ仕掛けでテンパイを入れていたところ。魚谷の手もイーシャンテンになっていた。
魚谷はここでを切り、近藤の満貫へ放銃となる。
「魚谷さんはドラ3のイーシャンテン。ここで切りを選んだ思考過程を教えてください」
魚谷「近藤さんの序盤の切り出しが→である事。トイトイ仕掛けの場合、中張牌ばかりが残ってしまうと仕掛け難いと思った事からはかなり当たり難い牌だと思いました。、の選択に後悔はありませんし、トップ目とは言え、2着目の江崎さんとは4200点差ですぐ捲られますし、ラス親の片山先生もいるので、まだ加点が必要だと思っていました。そして、ドラが重なった時点で勝負出来る手牌だと思いました。押すか押さないかの判断としては、押さない選択肢もあったのでしょうが、私は一発勝負のこのルールでは押し有利だと思いました」
「が通ったとして、その後テンパイが入ったらどうしてました?」
魚谷「引きはもちろん切りリーチでハネ満をツモりに行く予定でした」
「で満貫の放銃となったわけですが、これは想定していない待ちだっただけにショックは大きくなかったですか?」
魚谷「ショックはあまりなかったです。『うーん。押さないべきだったかなぁ』とはぼんやり思いましたが、仕方ないから切り替えてオーラス頑張ろう!と思いました」
オーラス、トップ目の近藤と魚谷との点差は5900点差。その魚谷に条件をキッチリ満たすチートイツドラ2のテンパイが入った。しかも4巡目。
ただ、イーシャンテンになったのは2巡目で、そのとき捨てたを3巡目にカブり捨てている。このを捕まえていれば、4巡目にドラのをツモってあっさりケリがついていたのである。
この後、魚谷は次々に狙いごろの牌に待ち変えをする。
→ 親・片山の打をみて、ペンチャン落とし狙い
→ 親・片山の現物待ち
→ 親・片山の現物、かつ全員の捨て牌がマンズの下が安い
魚谷「片山さんの現物待ちに寄っていたのは、片山さんのテンパイがかなり早そうだったからです」
この待ちはかなり強い待ちだった。だが、なかなかが出てこない。魚谷は片山のリーチ、そしてリーチ棒が出て仕掛けを入れてきた江崎に対しても強い牌を押す。だが、ここでついに魚谷は待ちを断念した。
は、片山の親リーチの本命スジの1つである。
「ここで待ち変えしたのは受けに回ったからでしょうか?」
魚谷「受けに回った感覚ではありませんでした。があまりにも出てこなかったので、暗刻落としの近藤さんに止められてしまったかなーと思っていました。は自分から見ると使い難い牌なので、もしかしたらこっちの方がアガれるかも?という気持ちもありました。でも、江崎さんもタンヤオ仕掛けなので、は使われてる可能性はあるけど、は少なくとも片山さんと江崎さんどちらも使ってなさそうだったのでのままにすべきでしたね。あまりにも何度も心が折れそうになる牌を切り飛ばして行く過程でちょっと心が弱ってしまったのかもしれません、、」
結果、この局魚谷は決めきれずテンパイで流局。次局、近藤の速攻が決まってトップを決めた。魚谷の最強位獲得の道はここで断たれることになる。
「戦いを終えての感想を教えてください」
魚谷「牌は私に優勝してもいいよ、と寄って来てくれていたのに、きちんと受け止めてあげられなくてごめんね。また麻雀の神様に愛して貰えるように、日々の麻雀を精一杯頑張ります」
魚谷「片山さんの現物待ちに寄っていたのは、片山さんのテンパイがかなり早そうだったからです」
この待ちはかなり強い待ちだった。だが、なかなかが出てこない。魚谷は片山のリーチ、そしてリーチ棒が出て仕掛けを入れてきた江崎に対しても強い牌を押す。だが、ここでついに魚谷は待ちを断念した。
は、片山の親リーチの本命スジの1つである。
「ここで待ち変えしたのは受けに回ったからでしょうか?」
魚谷「受けに回った感覚ではありませんでした。があまりにも出てこなかったので、暗刻落としの近藤さんに止められてしまったかなーと思っていました。は自分から見ると使い難い牌なので、もしかしたらこっちの方がアガれるかも?という気持ちもありました。でも、江崎さんもタンヤオ仕掛けなので、は使われてる可能性はあるけど、は少なくとも片山さんと江崎さんどちらも使ってなさそうだったのでのままにすべきでしたね。あまりにも何度も心が折れそうになる牌を切り飛ばして行く過程でちょっと心が弱ってしまったのかもしれません、、」
結果、この局魚谷は決めきれずテンパイで流局。次局、近藤の速攻が決まってトップを決めた。魚谷の最強位獲得の道はここで断たれることになる。
「戦いを終えての感想を教えてください」
魚谷「牌は私に優勝してもいいよ、と寄って来てくれていたのに、きちんと受け止めてあげられなくてごめんね。また麻雀の神様に愛して貰えるように、日々の麻雀を精一杯頑張ります」
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