孫崎享のつぶやき

書評。信濃毎日「小説外務省」『元外交官が描く政・官の危うさ』

2014/08/05 19:04 投稿

コメント:6

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信濃毎日「小説外務省―尖閣問題の正体」『元外交官が描く政・官の危うさ

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 駐イラン大使まで務めたエリート外交官が実名で書いた小説。尖閣問題で適切な対応がとれない政・官のダメさ加減を生々しく描き出す。

 小説とは言っても、外務省での著者の経験がふんだんに盛り込まれていて面白い。

 米国の意向を代弁するグループが主流を占める外務省。それに批判的な意見を述べた主人公は「10年はやい」と傍流に押しやられる。

 国の将来を見据えた外交はない。組織内の昇進だけが重大事。そんなお役所風景が浮かびあがる。

 そこに尖閣問題が起きた。

 尖閣は日本が「固有の領土」と思っているように、中国も固有の領土と考えている。

 だから田中角栄の時代、周恩来首相と「棚上げ」で合意した。双方が声高に領有を主張したら衝突せざるをえず、国

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コメント

次に、南沙諸島の領有権問題についてですが。

「中国-ベトナム」の間には、領海声明をファム・バン・ドン首相が
領海権を認めてしまっているので、議論余地はありません。

当時ベトナム政府が発行した地図上にも明確に中国領と書かれている。

<ベトナム内閣府測量・地図作成局が1972年に作成した世界地図集>
http://j.people.com.cn/n/2014/0609/c94474-8738572-4.html

しかし、中国の領海声明を、「フィリピン」と「マレーシア」は認めた
わけではありません。

だとすると、南沙諸島における中国の領有権主張の正当性は、
「9段線」の根拠にどれだけの正当性があるかにありますが、
余りにも弱いうえ、地理的にも説得力がありません。

日本は1938年に南沙諸島など新南群島の領有を閣議決定し、
台湾の一部として統治しました。

戦後、南沙諸島は、台湾(つまり中国)に返還される形となった。
台湾は、海軍が同水域や島嶼で研究活動を開始、1947年に
「11点破線」を領域主権と権益の境界線として世界に発表。
それを継承したものが「9段線」の根拠です。

南シナ海の境界は極めて曖昧で、各国がかなりいい加減な主張と
行動をしており(特にベトナム)、かならずしも中国だけが悪い、
とはいえないわけです。

<南沙諸島における各国の領有状況>

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/1f/%E5%8D%97%E6%B2%99%E7%BE%A4%E5%B2%9B2012%E5%B9%B4%E5%BD%A2%E5%8A%BF%E5%9B%BE.gif

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E6%B2%99%E8%AB%B8%E5%B3%B6#mediaviewer/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Spratly_with_flags.jpg

南シナ海問題の背景には、島の領有権の問題以外に、「米中の覇権争い」
と「石油メジャー同士の資源獲得競争」が絡んでいると思っていますが、
時間がないので、それはまた休日にでも書こうと思います。

No.4 124ヶ月前

>>1
>「棚上げ」で問題があるのであれば、どうしたらよいかと
>踏み込まなければ、単なる評論家に過ぎない。

仰るとおりで、私が8月3日の記事で、「旧棚上げ」を再現する
ことの問題点を指摘したのは、まさにそれなんです。

棚上げによる解決を行う場合、「歴史的記録」を保持させた上、
さらに「法的効力(国際条約化)」を持たせることが必要です。

もっといえば、私がここで訴えてる、中国の「親日家化戦略」と
セットで政策とすることで、より完全な効果を発揮します。

孫崎先生、どうか私の案を取り上げてもらえないでしょうか。

No.6 124ヶ月前

>>3
詳しいご説明ありがとうございます。貴兄の以前のコメントで南沙、西沙の説明いただき強い関心をもって種々検索していました。その副産物として、偶然に「政治家が政治を作るのでなくメデイアが作る」という風な視座を獲得しました。そして更に「日本の国際関係分野は独特のエンテイテイ構成になっていて、そのステイクホルダーは米国一国だ」という風な立場に立って日本の国際関係を眺めた方が理解しやすいと考えるようになりました。

No.7 124ヶ月前
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