講演に出かけると、時に著書の販売がある。その際、サインが求められることが多く、名前を書くと共に、自分に気に行った文字を書く。一時期、書く文字が見つからなかったが、今は時間がない時には「而今」、時間のある時には、「其言簡、其理直、其道峻、其行孤」を書く。
「其言簡、其理直、其道峻、其行孤」は細川元首相が壺中居で個展を開かれた時、掛け軸に書かれていたものである。私は、こうした生き方をしたいと思う。それで、時間がある時には、名前と共に、この語を書く。
「其言簡、其理直、其道峻、其行孤」は裴休著、『伝心法要・宛陵録』の冒頭に出てくる。裴休(はいきゅう、791 - 864年)は、唐中期、中書門下平章事(宰相)等を歴任した人物である。
唐代に黄檗禅師(おうばく)という禅僧がいる。臨済宗開祖の臨済義玄の師である。
『伝心法要・宛陵録』は黄檗禅師の説法と、弟子たちとの問答の記録である。書いたのが裴休である。
裴休