孫崎享のつぶやき

バイデン大統領の当初目的は、戦争でできるだけ打撃を露軍に与え、露軍崩壊、プーチン政権崩壊を目指した。だが米国内に変化。①露国防相崩壊なら核兵器使用の意向→米統合参謀本部議長交渉での解決主張。②インフレ、米国特に共和党支持者に支援躊躇が出る。

2022/12/08 06:48 投稿

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コメント

”このようなことより”、ドローン攻撃が衝撃的?ドローンで大ロシアが潰れる事なんかありません。

そんなことより。米国がドローンを飛ばしている間に米国の経済がドルの過剰印刷でにっちもさっちもいかなくなることです。ノミ プリンス女史は元ゴールマンサックスのチーフ・アナリストなんですが、ドルのハイパーインフレーションが間近に迫っていると警告してます。そもそもこれはFRBの確信的なしくじりですから、警告しても避けられません。99%の米国人は諦めムードの由なんです。

No.4 23ヶ月前

以下は、小泉悠を参考にしながら、わたしがまとめたものである(小泉の影響を受けているが、わたしの考えである)。同様な見方をするひとびとは多いと思う。

1、プーチンの当初見通しは、最初の一日か一週間でキエフを占領し、ゼレンスキーを逮捕して傀儡政権を樹立すれば終わるというものだっただろう。しかしこうした電撃的な作戦が効果を奏するのは相手が中小国、しかも戦争の初期段階に限られる。ウクライナはどうかといえば、初期段階をもちこたえ、その後NATOなどの本格支援がはいって戦争を継続している。明らかにプーチンはウクライナを甘く見ていたのだ。

2、今回の戦争はチェチェンやシリアでは勝ってきたプーチンがはじめておこなうクラウゼヴィッツ的戦争(この意味の戦争は、国家が政治目的を達成するためにおこなう激しい暴力闘争であり、戦争の形態としてはやや古典的)であり、プーチンにとっていままでと勝手が違う。

3、クラウゼヴィッツ的戦争では、
①戦争によって達成する国家の政治目的
②暴力闘争できる軍隊
③国民の支持
が重要だ。ウクライナ側はこれらが明確である。すなわち、
①祖国防衛
②かなり損耗しているともいわれるが、もともとは20万人の軍隊。および米国・NATOの指導・支援
③祖国防衛に対する国民の支持
そして、祖国防衛である以上、敗れれば国がなくなり国民が奴隷化されるウクライナには戦争をみずからやめるという選択肢がない(ただし米国・NATOの支援がなくなればやめざるを得ないとおもわれていた。この点後述)。

4,一方、ロシアはどうかといえば、
①本来の目的はウクライナ全体の併合あるいは属国化であるが、プーチンは自国民保護などと言い訳している。しかし、そもそも他国領なのだから、自国に忠誠のある「住民」(「少数民族」ではない)を保護したければ、自国に引きとればいいだけ。こんなのに騙されるヒトビトはロシアでも熱狂的プーチン支持老人くらい。かといって、プーチンはウクライナ併合とは言えない(明らかに侵略であることを認めることになるから)。つまりプーチンは戦争目的を明確に説明できない。
②ウクライナを甘く見ていたのと、「戦争」としたくなかったので(満州「事変」と同じ。しかし、こんな子供だましにだまされるヒトビトもいる)「特別軍事作戦」として、動員令を発しなかった。追い込まれたいま動員令を発しているが、国民の厭戦気分を逆に高めている。また、深刻な兵器不足に陥ってるといわれる。
③ ①②あいまって、国民の戦争支持はそれほど高くない。ロシアから流出した若者も多い。
かといって、ロシアも、戦争をやめるとなるとそれはすなわちプーチンの失脚・死にむすびつくので戦争をやめられない。

5、こうしてプーチンは、国民の熱狂的支持をえられず、しかも通常戦では勝てず、行き詰まっている。

6、しばらく前、フレデイさんは戦争は突然終わると書いておられ、わたしも(米露交渉が水面下でおこなわれているようなので)7割がた可能性はあるが、むしろロシアがやめたくないのではないかと書いた。この↓ニュースは、そういうロシアの立場がにじみ出たものとみている。ロシアはいまやめたくないのだ。
https://mainichi.jp/articles/20221203/k00/00m/030/057000c

7、しかし通常戦で勝てないプーチンが局面を打開するには核兵器の使用しかなく、だからこそ、ロシアがいつ核兵器を使うのかだれもが考えた。

8、ここにきて、ウクライナがロシア深部を攻撃した(ウクライナは認めていないが)。いままで破壊活動(ウクライナがしたかどうか不明)や浅部への軍事攻撃はあったが、今回のものはモスクワへの軍事攻撃もありうるもので、明らかに戦争の段階が一段あがったとおもわれる。どうもプーチンは腰を抜かしたくさい。

9、しかし、ウクライナはロシアの核兵器がこわくないのだろうか。また、米国・NATOはこういうウクライナをみて支援をやめるのではないだろうか。なお、米国は今回の攻撃への関与を否定している。

10、これは仮説だが、ロシアの核兵器がなんらかの理由で使えないか(たとえば整備不良で不発が多い)、またはウクライナはすでに核兵器を持っている可能性があると考えている。

No.9 23ヶ月前

米国世論については以下。

真珠湾攻撃前、米国世論の多数派は欧州への軍事介入にも日本との戦争にも否定的だった。真珠湾攻撃で世論は一転し、なんとかして米国を欧州の戦争にひきこみたいと考えていたチャーチルやルーズベルトは小躍りして喜んだ。

以上は孫崎さんもかつて記事で述べておられることだが、付け加えると次のようなことがある。

(以前ここで書いていることだが)当時の米国では、America First Committee という(なにやらトランプに似た)集団が活動しており、有名なリンドバーグはその広告塔で、世論に強い影響を与えていた。かれらは別にドイツと宥和しようというのではなく、欧州などにかかわらずに米国自体の防衛に専念しようという考えであった。

つまり、America First Committee とルーズベルトとは、どちらも米国の利益を第一に考えるという本質は同じであり、その手段が前者は孤立主義、後者は介入主義という違いがあった。

そして真珠湾で激昂した世論は介入主義に傾き、America First Committeeは解散したが、本質が同じで手段が違うだけなので、世論が状況にあわせて変化したのも当然だ。米国の孤立主義と介入主義とは根本的に相容れないものではないのだ。

そうであれば、ロシアは米国世論を細心の注意で扱う必要があるだろう。たとえば、ロシアとウクライナで核の打ち合いになったとき、NATO諸国や米国人になんらかの被害が出たなら、米国世論は一変する可能性があるだろう。

No.10 23ヶ月前
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