素晴らしい本とは、作家自体の世界を提示できるかにある。
小川洋子著『猫を抱いて象と泳ぐ』、題名からして作者が独自の世界を提示していることは間違いない。
『博士の愛した数式』(2003年 新潮社)は映画化され、それはそれで、大変に素晴らしい出来栄えであったが、この『猫を抱いて象と泳ぐ』は特写技術でも使わない限り、映画化は出来ない。それほど、特異な世界を提示している。
こんな作品はとても現在の私には書けないという思いが実感である。
もし、この作品がオリジナルを英語で書かれ、世界中の人が読み、その結果500万部を突破する世界的ベストセラーになっていたとしても全く驚かない。それだけ魅了させる本である。
勿論、著者独自の世界を描くのであるから、読者も一定水準の知的水準を要求される。 (「BOOK」データベースは「大きくなること、それは悲劇である」。この箴言を胸に十一歳の身体のまま成長を止めた少年
書評:『猫を抱いて象と泳ぐ』(文春文庫本2011年)
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コメント
コメントを書く(ID:18999290)
孫崎先生の書評はとても参考になります。政治・社会評論が正規の授業だとすれば、課外授業のような感じかもしれません。ありがとうございます。
(ID:18992259)
前回薦められて読んだ「ビブリア古書堂」も楽しかったのでこの本も読んでみます。
(ID:4815469)
高いレベルの、とても思惟に富んだ物語でした。
自分の事より、世界を包み込む調和を重んじる
理想郷に対する共感がありました