先ず、ドナルド・キーンの論評の中に出てくる歌を見てみたい。

・額出王:あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る

・柿下仲麻呂:家ならば 妹が手まかむ草枕 旅に臥やせる この旅人あわれ

・柿下仲麻呂:草枕 旅の宿りに 誰が夫か 国忘れたる 家待たまくに

・仲麻呂:君がため 手力疲れ織りたる衣ぞ 春さらば いかなる色に 摺りてば良けむ

・作者明記なし:水の上に 数書くごとき わが命 妹に逢はむとうけひつるかも

・依羅娘子:今日今日と 我が待つ君は 石川の 貝にまじりて ありといわずやも

・大伴旅人:ここにありて 筑紫やいづち 白雲の たなびく山の 方にあるらし

・山上憶良:世の中を 憂しとやさしと 思えども飛び立ちかねつ 鳥にしあらねば

・大伴家持:春の野に 草食む駒の 口止まず 我を偲ふらむ 家の児

・山上憶良:世の中を 憂しとやさ