木野龍逸の「ニッポン・リークス」

過剰な朝日バッシングは、福島第一原発の報道を萎縮させないか

2014/09/12 17:27 投稿

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木野龍逸の「ニッポン・リークス」
                   2014/9/12(No.010)
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[目次]
1.東電福島第一原発事故トピック
吉田調書で朝日バッシング━━本質をはずした批判が原発報道を殺す
2.気になる原発事故ニュース
3.編集後記
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1.東電福島第一原発事故トピック

吉田調書で朝日バッシング━━本質をはずした批判が原発報道を殺す

<撤退問題、現場職員に取材できず>
 9月11日午後4時、菅官房長官が会見で、いわゆる「吉田調書」を公開することを明らかにした。その後、内閣官房のホームページで公開された聴取記録は、吉田昌男元福島第一原発所長(故人)のほか、菅直人元首相、枝野幸男元内閣官房長官、海江田万里元経産大臣、近藤駿介前原子力委員会委員長、鈴木寛元文部科学大臣、細野豪志元原子力発電所事故収束・再発防止担当大臣ら19人分だった。

政府事故調査委員会ヒアリング記録
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/hearing_koukai/hearing_list.html

 しかし東京電力関係者や、現役官僚、当時の原子力安全委員会の関係者はひとりも含まれていない。元原子力安全・保安院関係者も、災害対策監ひとりが公開されているのみだ。安全委の班目春樹委員長や、保安院の寺坂信昭院長の調書もない。
 東電は同日の記者会見で、調書の公開について、「個人の意思が尊重される」と説明。会社として公開を指示する考えはないとした。
 同日午後7時31分、朝日新聞東京本社では、木村伊量社長、杉浦信之・取締役編集担当、喜園尚史・執行役員知的財産・広報担当の3人が会見に臨んだ。この日は昼過ぎから、朝日新聞が5月20日に報じた「所長命令に違反 原発撤退」報道を訂正する会見を開くという話が広がっていた。ただ、朝日新聞広報に電話をすると、「お伝えすることはない」という回答に終始し、会見の有無も確認できない状況が続いた。
 それから関係者をあたって、午後7時30分開始という情報だけは得た。ところが7時過ぎに現地に行くと、事前登録がないと入れないという。いつの間にそのようなお知らせが出たのだろうと思い、しばらく受け付けで押し問答をしたが、ラチがあかない。仕方がないので、指示のまま、玄関脇の部屋に用意されたモニターの画面で会見を見た。
 開始に先立ち、会場には要点をまとめた資料が配付された。

配付資料
https://www.evernote.com/shard/s37/sh/35ac95a2-2099-4b68-baf7-dc167d5037d2/8c4a6014db4b93690fbdb3867e1b7e30

 資料では、「命令違反・撤退」、「吉田氏の一部発言の不掲載」、「報道を巡る経緯」の3点について説明。まず「命令違反・撤退」については、吉田調書での証言、東電の内部資料、東電本店での会見の説明内容などから「吉田所長の命令に違反し、福島第二原発に撤退した」としたが、所員への直接取材を徹底しなかったため、「指示がうまく伝わらないまま第二原発への退避が行われたという誤った印象を与えた」ことと、「約10キロ離れた第二原発に大半の所員が移動してしまってはすぐに戻れない状態であることなどから、「撤退」という表現を使った」と説明した。
 「吉田氏の発言の一部不掲載」では、「よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思った」という部分や、伝言ゲームで所員の多くに指示が伝わらなかったことを認識していた調書のくだりを記事から欠落させた判断が誤りだったとした。
 「報道をめぐる経緯」では、報道後に誤報などの批判が寄せられたが、取材班からは「待機命令は間違いない」などの報告を受け信頼したこと、取材班から検証記事の紙面の要望があったが紙面化されなかったことを明かし、他紙の報道が始まってから記事のチェックを始めたと説明。結果、語句の修正ではなく、「取り消す」という判断をしたという。
 会見冒頭、木村社長は記事の内容を紹介した後、「社内での精査の結果、吉田調書を読み解く過程で評価を誤り、命令違反で撤退という表現を使った結果、多くの東電社員らがその場から逃げ出したかのような印象を与える、間違った記事だと判断した」と述べ、「命令違反で撤退の表現を取り消すとともに、読者および東電のみなさまに深くお詫びを申し上げます」と頭を下げた。
 木村社長はまた、杉浦編集担当役員の役職を解き、関係者の処罰をすると発表。自身については、編集部門を中心に抜本的に改革をし、再生への道筋をつけたうえで進退の決断をすると述べた。
 また記事を作成した過程に関して、朝日新聞の第三者委員会である「報道と人権委員会(PRC)」に審理を申し立てたとし、結果を紙面で公表することを明らかにした。
 ここから木村社長は、8月5日、6日に本紙に掲載した「吉田証言」に基づく慰安婦報道の検証記事に言及。訂正や謝罪が遅れたことを謝罪し、PRCとは別に、ジャーナリストや歴史学者などで構成する委員会を立ち上げで検証することを発表した。それから始まった質疑は、約1時間45分に及んだ。
 私自身は前述したようにモニター見学になったので質問はできなかったが、気になる点のいくつかは、質問をした記者がいた。気になったのは、「記事を取り消す」という言葉の意味、検証記事とは何か、なぜ発表が吉田調書の公表と同日になったのかの3点だった。
 まず「取り消す」とした発言について「記事そのものを取り消すのか」という質問に対して、杉浦氏は「命令違反で撤退というのは、記事の骨格に関わる部分で見出しにもなっている、それが間違いで取り消すので、記事そのものを取り消すのが当然」と述べた。
 配付資料にあった「検証記事」については、杉浦氏は当初、「詳細は明かすことができない」としたが、別の記者から重ねて聞かれ、「どちらかというと、そういう(正当性を評価する)側面があると思う」と説明した。
 3つめの発表時期について杉浦氏は、吉田調書の発表前に会見の機会を設けることを考えていたが、「発表日が設定されてしまい、その前は現実的に難しいということ」だったと述べた。自社の失点になる大きな発表をするときには、大きなニュースと同時にするというのは広報戦術の常道ではある。
 そのほか、配付資料に記載された「所員への直接取材を徹底しなかった」点について、「命令を聞いたという職員への取材はしたのか」と聞かれた杉浦氏は、「取材はしたが話は聞けなかった」と、回答。さらに「ひとりも取材していないのに記事にしたのか」と追求されると「はい」と答えた。この言葉は、記事にする上での詰めが甘かったという印象を強く与えるものになった。 

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