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木野龍逸の「ニッポン・リークス」
                   2014/9/22(No.011)
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[目次]
1.事故直後の放射性物質の拡散状況が判明━━継続調査が必須も、政府は及び腰
2.気になる原発事故ニュース
3.編集後記
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1.東電福島第一原発事故トピック
事故直後の放射性物質の拡散状況が判明━━継続調査が必須なるも、政府は及び腰

<事故直後の、関東地方への拡散状況が明らかに>
 原子力規制庁は9月5日、大気汚染を常時監視する設備を利用し、事故直後の放射性物質の拡散状況を分析した報告書を公表した。報告書は、2011年3月11日の事故直後、福島第一原発から大量に放出された放射性物質が茨城県、千葉県、東京都などに拡散していく様子を詳細に再現しているほか、16日午前中に茨城県南東部沿岸と千葉県北東部沿岸、20日から21日にかけては関東中部から埼玉県北西部などを、放射性プルーム(雲)が通過した状況を詳述。16日午前中や20〜21日の状況は「これまでほとんど報告されていなかった」とし、事故状況の解明のためには、さらなる調査、分析が必要という認識を示していた。しかし今のところ、規制庁が追加調査をする予定はない。
 規制庁が公表した報告書は、13年度に日本分析センターに委託した「浮遊粒子物質測定用テープろ紙の放射性物質による大気中放射性物質濃度把握」と、同じく13年度に東京大学大気海洋研究所が実施した「大気中拡散モデルを用いたシミュレーションによる放射性物質の挙動解明事業」のほか、12年度に環境省が首都大学東京に委託して実施した「SPM捕集用ろ紙に付着した放射性核種分析」の報告書の3点。

大気汚染監視用ろ紙を用いた大気中の放射性物質濃度に関する調査(リンク先に、日本分析センターと東京大学大気海洋研究所の報告書/2013年度)
http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/list/506/list-1.html

SPM捕集用ろ紙に付着した放射性核種分析報告書(首都大学東京/2012年度)
http://www.env.go.jp/air/rmcm/misc/report-201303.html

 東大大気海洋研究所の報告書は、12年度と13年度に首都大学東京と日本分析センターがそれぞれ実施した核種分析をベースにシミュレーションを精緻化し、拡散状況を明らかにすることを目的としていた。核種分析は、24時間連続で大気汚染を観測している測定局が、大気中の浮遊粒子状物質(ディーゼル車等の排ガスに含まれる微粒子=SPM。肺疾患等の原因)の濃度分析のために使用しているろ紙を収集して実施した。
 SPMは、テープ式のろ紙に一定量の空気を吸い込んでダストを採取し、1時間ごとに濃度を計測している。分析が終わったろ紙は巻き取られる。ただし保存期間が定まっていないため、自治体によってはすぐに廃棄することもある。
 このため東大の研究員は、事故直後に関係各所に試料の保存を依頼していた。また環境省は2011年6月に全国の自治体に、試料保存を通知した。しかしこの時点で、群馬県と栃木県はすでに廃棄していたようだった。今回、分析した測定局は93地点だった。測定局は大気汚染が深刻な都市部を中心に、全国に約1900か所が設置されている。
 報告書の主な対象期間は、事故直後の3月15日から16日と、20日から23日。この頃、福島県内では空間線量率が上昇したことが明らかになっている。しかし県外の状況は必ずしも明確ではなかった。
 報告書は、これまで不明瞭だった関東地方や東北地方南部、新潟県などの詳細を明らかにした。例えば3月15日の午前中、関東地方東部から中部あたりに放射性物質が到達。午後には東京都、埼玉県、神奈川県西部の山麓地帯まで運ばれたという。
 また3月16日の午前中、北寄りの風が吹いていた茨城県東部沿岸地域と千葉県北東部沿岸地域で、数時間、セシウム137の濃度が上昇していた。鹿島灘に近い神栖横瀬では、16日午前9時にセシウム134と137の合計で92.5ベクレル(1立方メートルあたり)が検出された。報告書は、このことは「これまでほとんど報告されていなかった」という。