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木野龍逸の「ニッポン・リークス」
                   2019/3/2(No.61)
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【No.61】曖昧な「廃炉」という言葉が現状を覆い隠す
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■曖昧な「廃炉」という言葉が現状を覆い隠す

3年半前の2015年9月に、こんなことを書いたことがある。

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 2011年8月、東電は汚染水処理装置が稼働することによって、2011年末までにすべての汚染水を処理できると説明し、工程表に書き込んだ。その後、地下水の流入が明らかになったとき、東電はその説明はせず、突然、建屋の地下水位をOP3000で調整すると言い出した。

 約1か月後、記者会見で私を含む複数の記者から突っ込まれるなどして、ようやく地下水流入を認めた。けれども工程表はそのままになり、汚染水の増加抑制ができていないにもかかわらず、除染処理ができているからという理由で目標達成だと言い繕い、ステップ2を完了。避難区域の再編を進めていった。

 本来の目標を達成できていないにもかかわらず、いつの間にか目標の定義がすり替わってしまうのは、4年前とよく似ている。東電と国がなにを言おうが、汚染水の状況は今でも厳しいままだ。そのことは常に覚えておく必要がある。
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 定義を決めないということは、その場その場で都合のいいことを言って相手を煙に巻くことができる、ある意味で詐欺的な言葉の使い方だと思っている。原発事故でいえば、その代表格が、「廃炉」という言葉ではないだろうか。

 東電と政府は中長期ロードマップの中で、30~40年で福島第一原発を廃炉にすると言い続けている。一方で、いったい「廃炉」というのがどんな状態を指すのかは、一度も明確にしたことがない。

 事故から8年目を迎える直前の東電会見で、改めて、東電が考える「廃炉」とは何なのかを聞いてみた。福島第一原発廃炉推進カンパニーの小野代表と次のようなやりとりがあった(2月28日の東電会見)。

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──廃炉の定義について、以前(2018年5月)に廃炉の定義について聞いた際、今後に議論をしていくという回答があった。その後、なにか進んだか。

▽小野代表
非情に厳しい質問。いま、社内的には、廃炉の定義は議論をやっているところだが、あまりにも、最後はどういう形になるかの議論を始めると、今の時点だと10人に言わせると10人で意見が違う。
(意見の)収束ができない状態があって、むしろ、我々はとにかく廃炉を進めないといけないとすると、10人いたら何人かがある程度、合意できるところを考えながら計画を作るのはひとつの考え方じゃないかと思う。
定義をどうするかは、私は非常に大きな課題だと思っている。それは、国もそうだしNDF(原子力損害賠償廃炉等支援機構)もそうかもしれなが、いろいろ議論をしていかないといけないと思っている。