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木野龍逸の「ニッポン・リークス」
                   2018/12/3(No.58)
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【No.58】
厳しい作業員の実情と、トラブル多発とコストカットと……

<厳しい作業員の実情>

 2018年10月16日、福島第一原発で自動車の整備にあたっている中、2017年10月26日に構内で亡くなった猪狩忠昭さんの労災が認められた。遺族によれば、長時間労働による過労死が認められたという。原発事故後、長時間労働での過労死認定は初めてと見られる。

 福島第一原発では今も、1日あたり4000〜5000人の作業員が事故処理作業にあたっている。東電も政府も作業環境が改善したことをアピールしており、実際に敷地内の96%は、防護服が不要で、簡易的な医療用マスク程度の装備で作業ができるようになっている。

 とはいえ、猪狩さんの働いていた自動車整備場は、事故直後から福島第一構内で使用していたクルマも混在するなど汚染が激しかったため、全面マスクに二重手袋で作業をしていた。また、連日の作業が続く汚染水タンクの解体現場や、建屋周辺は今でも全面マスクでの作業が必須だ。加えて、東電は装備の基準を緩くしたが、現場では、作業員の移動が全面マスク推奨のエリアと半面マスクのエリア、医療用マスクのエリアをまたぐ場合もあるため、今でも全面マスクを義務付けていることがある。

 福島第一の作業現場はどうなっているのか。福島第一原発の作業員に話を聞いた。

 まず現場の汚染状況については、確かに改善はしているが、「掘れば汚染が出てくる」という。放射性物質が土中に入り込んでいるのである。

 福島第一の敷地内はほとんど、フェーシングといってモルタルのようなものを地表面に吹き付けて放射性物質の拡散を防いでいる。でも汚染がなくなったわけではない。土木作業をすれば、下から出てくるのは当然だ。土で遮へいされていたものも出てくるから、敷地に設置されているモニタリングポストの数字より高くなるし、場所によって線量は細かく変化する。

 もちろん、そうした数字は公表されない。東電が公表しているのは、定期的に測定している公式データだけだ。